英国のEU離脱におけるサイバーセキュリティの現状と影響について

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読者の中に2016年6月24日に判明した英国欧州脱退(以下Brexit)の結果を受け、やむなく戦略の練り直しを図っておられる方も大勢いらっしゃる事でしょう。

筆者は英国を始め、欧州ともサイバーセキュリティにおける連携、情報共有に取り組んでおり、つい先日も欧州側からBREXITにより今後考えられる影響、現状等ヒアリングをしました。

今号ではそのヒアリング内容等も踏まえて分析をしています。

EU離脱による影響

国民投票の当日、英国のBREXITの結果を前にし、読者の皆さんはどう受けとめられたでしょうか?
直接関わりがないにしても、グローバルな世界では間接的にでも今後じわりじわりと影響を受けるでしょう。
ショック、歓喜、怒りと恐れ等感情が個人、企業、国家レベルで高まって来ています。
為替や株価に反映され、世界の経済動向にも不透明感が占めています。

欧州の反応

1973年の欧州共同体加盟から43年後に英国はEUからきっぱりと脱退を決心した最初の国となりました。
英国政府にとっては怒りの爆発であり、企業や一般市民は不透明感が増す日々に向き合っています。

悪影響が出る事は必須であり、英国が今後EUや世界各国と様々な事項において新たな条件を交渉出来るかどうか、多くの課題が英国自身の肩にかかっています。

EU首脳会談の最中、両側が今後直面するマイナスインパクトの大きさを考えるだけでも、感情を剥き出しにして英国の離脱表明を迫る欧州の高まる感情も理解出来ます。

為替も大きく動き、株価も乱高下しています。
一旦落ち着きを見せていますが、長期的には安定しているとは言えません。

中国の狙い

又、このような中、中国はAIIB構想並びに拡大を押し進めており、世界の金融ハブとして位置づけようとしているのは明らかです。
現に中央アジアの幾つかの国では人民元が決済時に使われる事が常識となっています。

  • 英国のEU離脱でシティは今後どうなるのでしょうか?
  • 英国の国を支える産業は他にあるのでしょうか?
  • 英国は今後どういった活路を見出すのでしょうか?

こういう不透明で不確実な状況はセキュリティにも関わっているのです。

サイバーセキュリティの観点から、英国の離脱とEUについての分析

EUのデータ保護規則について

2016年4月に採択されたEUのデータ保護規則*1)と、ネットワークと情報の安全の指令の流れが今後どうなるのでしょうか?

現在は、EUの全ての法令が英国でも適用されています。
少なくともこれから2年後に正式にEUからの離脱手続きを終える事になりますが、将来似た法案を施行するだけではなく、過去にさかのぼってEUの法案を無効にする、あるいは保持するのか確定させる必要が出てきます。

英国のセキュリティ関連機関について

英国は、上記法案のみならず、英国のEU域内での法執行や欧州警察組織(ユーロポール)、欧州ネットワーク情報セキュリティ庁*2)といった情報セキュリティ機関内での役割についての見直しを求められるでしょう。
EUサイバーセキュリティ戦略*3)を作り、2013年にユーロポール内に欧州サイバー犯罪センター*4)を創設する等、EUは最近努力を高めています。

この他にも、EUと英国の間に新たなサイバーセキュリティ情報や資産分割(情報共有)の構築が求められます。

英国のEU離脱により考えられる未来

人材不足の深刻化

今後も、英国はサイバーセキュリティやサイバー犯罪についてEUと足並みを揃えて行くと思われますが、スキルを持つ人材をプールする面では大きな打撃を受けるでしょう。
ハイテク企業や、取り分けサイバーセキュリティのプロの人材不足は我が国とおなじように深刻な課題です。

シングル・マーケット(単一市場)からの、そして人々の自由な動きからの離脱は、英国の労働人口を大幅に縮小させる事になります。
EUとの単一市場にかかる交渉の結果で、EUの広域な労働市場を取り込められるか否か決まります。
しかし、現状の不透明感がその内サイバー企業を他のEU諸国に移転させる可能性もあります。

セキュリティ関連企業の停滞

英国政府はこの数年間、サイバーセキュリティのスタートアップ環境に著しい投資を行っている一方、この助成金は離脱前までEUにも英国にも均等に割り当てられていましたが、継続して行われるかどうかも定かではありません。
英国のEU離脱という賭けの代償は大きいのです。

政策面では引き続き協力関係を保つ

サイバーセキュリティ政策や法の観点からは、EUが進めるビジョンと協調して行くでしょう。
なぜならサイバーセキュリティは余りに重要で、サイバー犯罪は蔓延しており、孤立化したアプローチを取る事は出来ないからです。
Brexitが英国のサイバーセキュリティ産業にマイナス影響を与える可能性は高いのですが、短期間に過ぎないでしょう。
EUとの交渉成功となるのを待っている状況です。

<参照>
1.http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM25H6Q_Y6A100C1000000/
2.https://www.ipa.go.jp/security/publications/enisa/documents/Cloud%20Computing%20Security%20Risk%20Assessment.pdf
3.http://eumag.jp/feature/b1213/
4.http://www.euinjapan.jp/resources/news-from-the-eu/news2013/20130109/112206/

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日本安全保障・危機管理学会主任研究員。サイバーセキュリティ、インテリジェンス、及びロシア動向を担当。英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)の外部メンバー。専門は主にサイバーセキュリティと情報戦略(インテリジェンス)。パリのエコールミリテール(陸軍士官学校)のジャーナル、米国、ドイツにも記事を多数投稿。 > プロフィール詳細はこちら

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