日本のサイバーセキュリティにおける最大の課題といえば「人材不足」でしょう。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」では解決方法として「人材の配置転換及び育成」、「専門家の新卒・中途採用」、「兼業や副業人材の活用」などを挙げています。
2016年には「情報処理の促進に関する法律」が改正され、「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」という新たな国家資格が誕生しました。登録セキスペは高度なセキュリティ知識でシステム開発の支援やサイバー攻撃の調査・分析を展開するもの。資格を保持するためには、IPAに登録申請を行いオンライン講習や実践講習を受講し続ける必要があります。
登録セキスペは2023年5月時点で20,786人。日本政府はサイバーセキュリティ確保のためのKPI(重要業績評価指標)を「2025年までに情報処理安全確保支援士登録数3万人超」と定めました。
ところが、2021年以降の応募者数は20,000人を下回っています。2022年4月の登録者数は1,016人でした。残り3年で10,000人弱の登録セキスペを確保しないと目標が達成できないという状況です。
登録3年で費用10万円超
なぜ、登録セキスペの人数が増えないのでしょうか。理由の一つは資格保持にかかる費用です。現在、登録セキスペは独占業務がありません。しかし、資格を更新する度に受講料や更新費が発生します。登録から3年でかかる費用は10万円超。このような負担が要因と考えられます。
存在を知らない中小企業
登録セキスペの認知にも課題があります。IPAが実施した「2021年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」によると、IT投資や情報セキュリティ投資をしていない企業は約3割。「そもそも登録セキスペという制度を知らない」、「誰に相談すれば良いか分からない」といった現状がありました。
登録セキスペと中小企業をマッチング
そのような課題に一石を投じたクラウドソーシングサービスがこのほどリリースされた「セキュリティエージェント」です。
公式サイトセキュリティエージェント
これはセキュリティ意識の啓発や人材育成のサポートなどを展開している株式会社セキュアオンラインが開設したプラットフォーム。専門家(登録セキスペ)は「仕事を探す」、企業は「専門家を探す」ことができます。案件獲得や資格保持に悩む登録セキスペは副業として受注先を見つけることが可能に。また、同プラットフォームでは登録セキスペに対して受注した案件などに応じたポイント還元システムがあり、収入面のサポートをします。
一方、「誰に相談すれば良いか分からない」という中小企業は国家資格を有した信頼できるセキュリティの専門家と繋がることができます。既にシステム会社などと契約している企業は、セカンドオピニオンとしてセキュリティエージェントを活用して専門家に相談することも可能です。
セキュアオンラインは「リリース時点で200人を超える専門家が登録している。利用するすべての人がメリットを感じられる仕組み。登録セキスペは新たな収入を得る間口が広がり、中小企業は高い技術をを持った人材に出会える可能性が高くなる。IPAなどにとっては登録セキスペの認知拡大の一助となる。さらに、セキュリティ関連企業は登録セキスペや弊社を介して製品やサービスの販売促進ができる」と訴えます。
セキュリティエージェントは専門家、企業ともに登録無料。「セキュリティ対策の質問をする」という掲示板も用意されており、気軽に利用できるのがポイントと言えるでしょう。「中小企業におけるセキュリティ対策の悩みを受け入れられる体制を確立し、国としての課題と考えられるセキュリティ専門家育成や活用が可能となるプラットフォームを目指す」と同社。まさに「登録セキスペの課題解決」、「日本のセキュリティ人材不足解決」をサポートするクラウドソーシングサービスが誕生しました。