2016年アメリカ大統領選におけるロシア介入問題について考える

この記事は約 5 分で読めます。


現在米国では、トップ交代によりもたらされるであろう変化についての報道が盛んですが、第五の戦場とも言われるサイバー空間での衝突が激化している中、最も注目すべき事柄は米大統領選における“ロシアの介入”です。

今回はサイバーセキュリティの観点から、2016年の米国大統領選を振り返ってみたいと思います。

アメリカはロシアの動きを掴んでいる

2016年11月22日、アメリカ国防総省の諜報機関であるNSA(アメリカ国家安全保障局)局長のMichael Rogers司令官は、選挙キャンペーンについてウィキリークスが流したロシアのハッキング情報について問われた際、下記の通り述べています。

これは国家が特定の目的を達成すべき行った意図的なものである。
これは安易に実行されたのではなく、又たまたまやってみたというたぐいのものではない。
サイバー攻撃のターゲットを単に勝手気ままに選んだ性格のものではない。

Michael Rogers司令官/NSA(アメリカ国家安全保障局)

Michael Rogers司令官/NSA

NSA局長自らによるこの驚くべき声明は、他米国政府高官の意見と同様でした。

ロシアは、望む最終結果を得る為に米国大統領選挙に直接関わったとの見解を示しています。おそらくは米国そのものを弱体化させる、あるいはDonald Trump氏を選出させる、あるいはその両方が目的であったとの見解を示しました。

Rogers氏は明確に Vladimir Putin氏が米国の民主主義に干渉したと非難しているのです。

秘密裏に進む公的捜査

これは例えて言うならば、新聞の一面の見出しに太文字で飾られるような特筆すべき事であり、又、調査に値する事項です。インテリジェンス及び法執行機関は、しっかりと政治的なターゲットにかかるハッキングが誰であるか、つまりサイバー攻撃元(アトリビューション)がロシアである事を捜査していると示しています。

しかしながら、ここで必要な調査もあります。それは本格的な議会による捜査です。市民に向けての公聴会や調査結果のリリースです。

捜査情報の公開が求められる

FBIやCIA、他のインテリジェンス機関が何を暴いたのか、大衆には共有される保障はありません。インテリジェンス捜査は機密情報に関わる為、秘密裏に行われることがほとんどです。

また、法執行機関による捜査は犯罪行為に焦点が当てられいて、起訴するまでは秘密を保つことになっています。
※事例を起訴する妥当な情報のみがリリースされるものの、通常連邦政府はより多くの情報を集めているものです。

つまりインテリジェンス機関や法執行機関による捜査活動は、民心を啓発したり、保証するためのものではありません。あくまで議会こそが民衆の為の役割を担っているのです。

歴史を振り返りますと、トラウマ的な事件やスキャンダルで国家あるいは政府が起こしたような、例えば真珠湾攻撃、ウォーターゲイト事件、イランコントラ事件、そして9.11世界同時多発テロの際に、捜査を行い公聴会を開いたのは議会でした。

ロシア側の主張

ロシアのValdimir Putin大統領は、ロシア政府が米大統領選においてTrump氏を支持しているという考えは「くだらない、ばかげている」と発言しましたが、これはロシアメディアの捉え方とは異なります。

目的は米国の信頼を落とすこと?

モスクワのメディアニュースでは、これまで民主党の候補であったClinton氏を“古めかしい、病的でロシア嫌い、仮に彼女が当選した場合にロシアと世界を危険に陥れる”等と書いてきました。一方、共和党候補者であったTrump氏の欠点に対し目をつぶっているとまではいきませんが、彼を“米国がエリート社会に飽き飽きした象徴”であると表現してきたのです。

ロシアの情報戦を研究している、英国Statecraft研究所のBen Nimmo氏は、この状況に対し下記の様に述べています。

ロシアの英語放送は、米国の民主主義は本当の民主主義ではない、トランプ氏はロシアのサインを読める人だと認めている。

また、モスクワのタブロイドやロシアの議員においては、有力紙であるPravvda紙にClinton氏について“石で出来た冷たい心”など、数々の辛辣な表現で叩きました。

つまり、ロシアメディアの主目的は、選挙自体と米国の政治システムの“信頼性”を傷つけることにあるように見えます。

ロシアの真意は“反トランプ”

img_13771_2

ロシアの内政ニュース(Sputnik等)や、英語での情報発信を行うロシアのプロパガンダニュースサイトでは、“Trump氏の選挙は非合法なものになる”との主張に焦点を当てていました。

ロシアのプロパガンダチーフは、2016年10月、自身のTVショーにおいてニュース速報として“Trump氏の選挙はデタラメ”という内容のツイッターを流しています。

ロシアは米国の政治システムと民主主義を馬鹿にしようとしているのです。プーチン大統領は米国のコンセプトを非合法化しようとしています。もはやロシアは米国への憧れが消え失せたように感じます。

筆者所感

今回の大統領選挙戦では、真実ではないSNSのニュース(英語ではfalse newsと言います)に翻弄されたことについても焦点が当てられ始めています。いつの時代もそうですが、改めて真実を見抜く力が求められています。今後、一般大衆がSNSを含むメディアとどの様に付き合っていくのか、考えさせられる局面にあるのです。

現在トランプ次期大統領は、政治についてのオリエンテーションを日々受けている事でしょう。就任後ロシアとどうつきあっていくのか。ロシア側も戦略を練っている最中ですので、引き続きじっくり分析を行っていきます。

<参照サイト>

新田 容子
日本安全保障・危機管理学会主任研究員。サイバーセキュリティ、インテリジェンス、及びロシア動向を担当。英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)の外部メンバー。専門は主にサイバーセキュリティと情報戦略(インテリジェンス)。パリのエコールミリテール(陸軍士官学校)のジャーナル、米国、ドイツにも記事を多数投稿。

こちらのページもご覧ください。

メルマガ会員登録(無料PDFプレゼント)

メルマガ会員登録をしていただくと下記PDFもプレゼント!
0からサイバーセキュリティの現状がわかる
情報漏洩セキュリティ対策ハンドブック

企業における情報漏洩対策として重要な、セキュリティ対策のための知識として基本的な「まずは知っておくべき内容!」をピックアップし、約40ページのPDFに整理いたしました!

その具体的な内容は、


img_pdf1.はじめに
2.近年の個人情報漏洩の状況
3. 内部要因による情報漏洩
3-1.被害実例
3−2.内部犯行による被害統計情報
3-3.内部犯行による情報漏洩が増え続ける3つの原因
3-4.内部犯行を減らすための対策
4. 外部要因による情報漏洩
4−1.近年の個人情報漏洩の状況
4−2.実際の近年のサイバー攻撃による企業の被害実例
4−3.サイバー攻撃の統計情報
4-4.サイバー攻撃がふえ続ける5つの原因
4-5.急増する日本の企業のWEBサイト改ざんへの対策
4-6.サイバー攻撃の種類を把握しよう
4-7.日本におけるサイバー攻撃に対する国の対応と今後
4-8.外部要因による情報漏洩のセキュリティ対策
無料でここまでわかります!
ぜひ下記より無料ダウンロードしてみてはいかがでしょうか?

メルマガ登録はコチラから