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Maldoc

Maldoc(Malicious Document)は、マルウェアが埋め込まれた悪意のあるドキュメントファイルを指します。主にMicrosoft Word、Excel、PowerPoint、PDFなどの文書形式で配布され、ファイルを開いた際にユーザーのデバイスにマルウェアをインストールしたり、攻撃者がリモートで操作できるバックドアを作成するために使用されます。

Maldocは、社会工学攻撃を活用してユーザーにファイルを開かせることが多く、特にフィッシングメールや偽装された公式メッセージで配布されます。この手法は攻撃者にとって非常に効果的であり、特に企業や個人が標的になるケースが増加しています。

Maldocの特徴

1. マルウェア埋め込み

  • 文書内にマルウェアが埋め込まれており、マクロやスクリプトを利用して悪意のある動作を実行します。

2. 社会工学を利用

  • 攻撃者は偽の請求書や公式文書に見せかけて、ユーザーが信頼してファイルを開くよう誘導します。

3. 複数のファイル形式での拡散

  • Maldocは以下のような形式で配布されます。
    • Word(.doc, .docx)
    • Excel(.xls, .xlsx, .xlsm)
    • PowerPoint(.ppt, .pptx)
    • PDF
    • RTF(Rich Text Format)

4. 配布方法の多様性

  • フィッシングメール、USBデバイス、ダウンロードリンクなど、さまざまな手法で拡散されます。

5. 高度な回避技術

  • サンドボックスやアンチウイルスソフトによる検出を回避するための手法が組み込まれていることが多い。

Maldocの感染メカニズム

1. ファイルの開封

  • 被害者がMaldocを開くと、文書内のマクロやスクリプトが実行されます。

2. マルウェアのダウンロードと実行

  • マクロがインターネットを通じて攻撃者のサーバーからマルウェアをダウンロードし、デバイス上で実行します。

3. バックドアの作成

  • 一部のMaldocは、攻撃者がリモートでデバイスを制御できるバックドアを作成します。

4. 情報の窃取

  • クレジットカード情報、認証情報、機密データを収集し、攻撃者のサーバーに送信します。

5. ランサムウェアの展開

  • Maldocを利用してランサムウェアが展開される場合もあります。

Maldoc攻撃の主な事例

1. Emotet

  • WordやExcelドキュメントにマクロを仕込んで配布されるトロイの木馬。感染後、追加のマルウェアをダウンロードして実行します。

2. Dridex

  • Excelファイルに埋め込まれたマクロを利用して感染を広げる銀行詐欺型マルウェア。

3. Qbot

  • 偽の請求書や金融関連のドキュメントに見せかけたMaldocを使い、感染を拡大。

4. CVEを悪用したPDF攻撃

  • Adobe Acrobatの脆弱性(CVE-2018-4990など)を利用し、PDFファイルを通じてマルウェアを展開。

Maldocへの対策

1. マクロの無効化

  • Officeドキュメントでマクロが自動実行されないよう設定します。
    • [設定方法]
      1. Microsoft Officeを開く。
      2. 「オプション」→「セキュリティセンター」→「セキュリティセンターの設定」。
      3. 「マクロ設定」で「すべてのマクロを無効にする」を選択。

2. 信頼できる送信者のみを開封

  • 不明な送信者からのメールに添付されたファイルやリンクを開かないよう徹底。

3. セキュリティソフトの導入

  • 高品質なアンチウイルスソフトウェアを導入し、Maldocを検出・ブロック。

4. フィッシング対策

  • フィッシング攻撃に対する警戒心を高め、メールの正当性を慎重に確認。

5. ソフトウェアの更新

  • オペレーティングシステムやアプリケーションを常に最新の状態に保ち、既知の脆弱性を修正。

6. サンドボックス環境の利用

  • 不審なファイルは仮想環境やサンドボックスで開き、安全性を確認。

7. 従業員教育

  • 社内の従業員に対し、Maldocの危険性や防止策についての教育を行う。

Maldoc感染時の対応

1. ネットワークの切断

  • 感染したデバイスをネットワークから隔離し、感染拡大を防ぐ。

2. セキュリティツールの使用

  • アンチウイルスソフトやマルウェア駆除ツールを実行し、感染を除去。

3. システムの復元

  • 感染したデバイスをバックアップから復元。

4. ログの調査

  • ログを確認し、感染経路や被害範囲を特定。

5. 法執行機関への連絡

  • 被害が重大な場合、サイバーセキュリティ関連の法執行機関に報告。

まとめ

Maldocは、巧妙な社会工学を利用して文書形式で拡散されるマルウェアであり、企業や個人にとって重大な脅威です。特に、フィッシングメールやマクロを利用した攻撃は広範に行われており、セキュリティ意識の向上が鍵となります。

Maldocから身を守るためには、マクロの無効化、不審なファイルの確認、セキュリティソフトの導入といった基本的な対策を徹底することが重要です。また、感染した場合には迅速な対応が被害拡大を防ぐための最善の手段となります。


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