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OT

OT(Operational Technology)は、産業環境やインフラで使用されるシステムやデバイスを制御し、監視するための技術を指します。工場の生産ライン、発電所、交通管理、石油・ガスの精製など、物理的なプロセスを管理・制御するために使用されます。

OTは、従来のIT(Information Technology)とは異なり、物理的な設備や機械をリアルタイムで操作することに焦点を当てています。これには、センサー、コントローラー、アクチュエーターなどのデバイスが含まれます。

OTの主な用途

1. 産業オートメーション

  • 製造業における生産ラインの自動化やプロセス管理。
  • 例:ロボットアームの制御、品質検査システムの監視。

2. エネルギー管理

  • 発電所、送電網、石油・ガスプラントなどのインフラ管理。
  • 例:発電タービンの制御、電力需要のリアルタイム調整。

3. 交通管理

  • 鉄道や航空、道路交通システムの運行管理。
  • 例:信号機の制御、列車のスケジュール管理。

4. 公共インフラの運用

  • 上水道や下水処理施設の管理。
  • 例:ポンプやバルブの遠隔操作、水質監視。

5. 建物管理

  • 商業施設やオフィスビルのエネルギー効率やセキュリティの最適化。
  • 例:HVAC(空調システム)の管理、エレベーターの運行制御。

OTの構成要素

1. ハードウェア

  • PLC(Programmable Logic Controller)
    機械やプロセスを制御するためのプログラム可能な装置。
  • センサー
    温度、圧力、振動などを測定するデバイス。
  • アクチュエーター
    機械的動作を実行する装置(例:モーター、バルブ)。

2. ソフトウェア

  • SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)
    大規模な監視・制御システムで、データ収集や遠隔制御を行います。
  • HMI(Human Machine Interface)
    作業員が機械やシステムを操作・監視するためのインターフェース。

3. 通信プロトコル

  • Modbus、OPC UA、PROFINETなど、産業用通信に特化したプロトコル。

4. ネットワークインフラ

  • 工場内や施設内でデバイスを接続するローカルネットワーク(有線や無線)。

OTとITの違い

項目 OT(Operational Technology) IT(Information Technology)
目的 物理プロセスの制御と監視 データ管理と情報処理
対象 センサー、アクチュエーター、PLC サーバー、PC、クラウド
優先事項 安定性とリアルタイム性 セキュリティとデータ整合性
リスク 機械の停止や物理的な損害 データ漏洩やサイバー攻撃

OTにおける課題

1. サイバーセキュリティ

  • OTシステムがITネットワークに接続されることで、サイバー攻撃のリスクが高まります。
  • 例:ランサムウェアやDDoS攻撃によるシステム停止。

2. レガシーシステム

  • OTシステムは長期間使用されることが多く、セキュリティアップデートが適用されていない場合があります。

3. 相互運用性

  • 異なるメーカーのデバイスやプロトコル間での通信の互換性の確保が難しい。

4. リアルタイム性の要求

  • 物理プロセスの制御には、低遅延での通信と高い信頼性が求められます。

OTセキュリティの重要性

OTシステムのセキュリティは、サイバー攻撃による物理的被害を防ぐために重要です。攻撃例として以下が挙げられます:

  • Stuxnet(2010年):イランの核施設に使用されたOT攻撃。
  • Triton(2017年):石油化学プラントの安全システムを標的とした攻撃。

OTセキュリティの対策

1. ネットワーク分離

  • OTネットワークとITネットワークを分離し、不要な接続を防ぎます。

2. アクセス制御

  • デバイスやシステムへのアクセスを最小限に制限します。

3. 監視と検知

  • OTネットワークの通信を監視し、異常な活動をリアルタイムで検知します。

4. パッチ管理

  • 定期的にソフトウェアやファームウェアを更新して脆弱性を修正します。

5. トレーニング

  • OTシステムを操作する作業員に対し、セキュリティ意識を高める教育を行います。

OTの進化と今後の展望

1. ITとOTの統合(IIoT: Industrial Internet of Things)

  • IT技術とOTの統合が進み、リアルタイムデータ解析や自動化が強化されます。

2. AIの活用

  • 機械学習による異常検知や予知保全が導入され、効率的な運用が可能になります。

3. 5Gと低遅延通信

  • 5G技術により、OTシステムのリアルタイム性と柔軟性が向上します。

まとめ

OT(Operational Technology)は、物理的なプロセスの制御と監視を目的とした技術で、製造業やエネルギー、交通などの重要な産業で利用されています。近年、ITとの統合が進む一方で、サイバーセキュリティやレガシーシステムの課題も顕在化しています。これらの課題に対応するためには、ネットワーク分離や監視体制の強化、トレーニングなどの包括的なセキュリティ対策が不可欠です。OTとITの連携がさらに進む中、安全性と効率性を両立した運用が求められています。


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