セキュリティソフトを選ぶ時は、性能や価格など総合的に検討する必要があります。本記事では、防御力という性能面に着目して人気の5種類を比較検討します。
防御力が高いセキュリティソフト5選
セキュリティソフトの防御力を決定する「既存の脅威への対策性能」と「新しい脅威へ対応する技術力」の2つの指標で優れているのが次の5種類です。
これらの5種類で防御力を比較します。
既存の脅威への対策性能
まずは、“既存の脅威“すなわちパターンファイルが作成済みとなっている脅威への対策性能を見てみましょう。
著名なセキュリティソフト評価機関「AV-Comparatives」が2019年3月に、「AV-TEST」が2019年4月にそれぞれ防御力に関する最新のテスト結果を公開しています。
AV-Comparatives (マルウェアからの防御力テスト2019年3月) |
AV-TEST (Windows10における防御力テスト2019年4月) |
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ESET | 99.86% | — |
ノートン | 99.99% | 6/6 |
カスペルスキー | 99.88% | 6/6 |
ウィルスバスター | 100% | 6/6 |
アバスト | 99.99% | 5.5/6 |
参照Malware Protection Test March 2019/AV-Comparatives
参照Windows 10: April 2019(Protection) /AV-TEST
新しい脅威へ対応する技術力
各ベンダーはパターンファイルを公開するとすぐにマルウェアの情報を「脅威データベース」や「マルウェア情報」などの名称で公開しています。そして、マルウェアの名前はその検体を解析した解析者に命名が委ねられているため、各社で同じ検体に違う名前が付けられていることがほとんどです。
よって、公開されるマルウェア情報では先に解析を完了した他社のマルウェア名称が併記されていることもあります。トレンドマイクロの「脅威データベース」から任意の40件の脅威を抜き出し、どのベンダーが先に命名(解析を完了)したかを探ってみました。
21.3% | カスペルスキーが最初に解析完了 |
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10.0% | シマンテック(ノートン)が最初に解析完了 |
8.8% | トレンドマイクロ(ウイルスバスター)が最初に解析完了 |
最も防御力が高いセキュリティソフトは?
ご紹介した「既存の脅威への対策性能」と「新しい脅威への対応」の2つの検証結果から最も防御力が高いセキュリティソフトをまとめます。
防御力を測るもう一つの指標「誤検出」
既存の脅威への対策性能を見る上で、もう一つ加味すべき指標があります。不正ではないファイルや挙動を誤って検出してしまった数を示す「誤検出(False Alarm)」です。
防御力が高い方が良いからといって正規のファイルまで検出してしまっては、セキュリティソフトとしては片手落ちです。「AV-TEST」による2019年3月の最新テストでは、次のような結果となりました。
AV-TEST (誤検出テスト2019年3月) ※数字が少ないほど良い |
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---|---|
ESET | 1 |
ノートン | 19 |
カスペルスキー | 3 |
ウィルスバスター | 81 |
アバスト | 15 |
参照False Alarm Test March 2019/AV-TEST
ESETは一番誤検出が少なく、次いでカスペルスキーとアバストという結果となっています。
防御力が高いのは「カスペルスキー」
上記のテスト結果より、「既存の脅威への対策性能」はウイルスバスター、次いでノートン、カスペルスキーという結果となりました。
脅威への対策において誤検出が少ないのがESET。次いでカスペルスキーとアバストとなります。新しい脅威をいち早く解析して対応する技術力は、カスペルスキーに軍配があると見てよさそうです。
これらの指標の総合判断により防御力の高さでセキュリティソフトを選ぶなら「カスペルスキー」が良いでしょう。
セキュリティソフトを選ぶポイント4つ
セキュリティソフトを選ぶ時、チェックすべきポイントが4つあります。
1. 既存の脅威への対策性能
チェックすべきポイント1つ目は「既存の脅威への対策性能」です。“既存の”というのは過去に世界の何処かで感染事例があるかセキュリティベンダーで確認済みの脅威という意味です。
セキュリティソフトの各ベンダーではマルウェアのファイルや不正と思われるファイルを検体と呼びますが、検体を解析してそのマルウェアや脅威に対処するパターンファイルを作成します。パターンファイルが作成済みの脅威に対し、すばやく対処し確実に駆除できるかが既存の脅威への対策性能です。
2. 使いやすさと動作の軽さ
ユーザーが使いやすいソフトだと感じるとき、様々な要因が重なって使いやすさを判断しています。セキュリティソフトが起動していてもPCや端末が“もたつかない”ソフトは使いやすいと感じますし、操作を迷わないUI設計や困ったときのサポートがしっかりしているかなども重要です。
動作の軽さについても、セキュリティソフトが稼働していても、ファイルをコピーするときの速度は落ちないか、他のアプリケーションのインストール時に軽快かなども動作の軽さを判断する際に考慮する必要があります。
3. 新しい脅威への対応の速さ
2.5秒に1個新しいマルウェアが誕生しているとされています。ただし、その大半が“亜種”と呼ばれる既存の脅威に少しだけ改良を加えたものです。これらの亜種に対しては検体の自動解析システムにより、ほぼ解析者の手を必要とすることなく解析およびパターンファイルの作成・公開が完了します。
問題は、それまでまったく存在しなかった新しい手口を利用した脅威や不正かどうかの判断が難しい検体の解析です。このようなまったく新しい脅威を「どのベンダーよりも速く確認・解析を終え、情報公開できるのか」は、各セキュリティベンダーの技術力が露呈してしまう部分です。
よって、新しい脅威への対応の速さもセキュリティベンダーの技術力を測るための重要なポイントです。
4. 価格とコストパフォーマンス
ソフトウェアパッケージ単体の価格だけを見て、コストパフォーマンスを判断してはいけません。もはやPC1台だけにセキュリティ対策を施せば良い時代は過ぎ去っています。社員が個人の携帯端末を職場に持ち込み業務に使用するBYOD (Bring your own device)も当たり前になっています。
また、セキュリティソフトは一時期だけ使用すれば良いものではなく、PCや端末を使い続ける限り常にアクティブにしておく必要があります。何台の端末にインストールするのか、何年単位で契約するのかを計画してから価格比較しましょう。
まとめ
セキュリティソフトを選ぶポイント4つのうち、防御力という性能面に着目するなら「カスペルスキー」という結果となりました。
ただ、セキュリティソフトを選ぶ時は防御力以外の使いやすさや軽さ、価格などを総合判断することが肝心です。「どのソフトが自身の環境や用途に合うのか」という観点で選択するようにしましょう。