Emotet(エモテット)|サイバーセキュリティ.com

Emotet(エモテット)

Emotet(エモテット)は、主に銀行口座情報やパスワードなどの個人情報を窃取することを目的とした高度なマルウェアであり、特に企業や金融機関、公共機関に大きな被害をもたらしています。Emotetは最初、バンキング型トロイの木馬として登場しましたが、現在ではスパムメールやフィッシングメールを通じて感染を広げ、さらに他のマルウェア(ランサムウェアや情報窃取ツール)をダウンロードさせるゲートウェイ(踏み台)として機能するようになりました。

Emotetは特に感染拡大が速く、自己増殖機能を持つため、企業内ネットワークに感染すると短期間で広範囲に拡大し、甚大な被害を引き起こすことが多いです。メールの添付ファイルやリンクを通じて感染するケースが多く、送信者が偽装されるなどして、一般のユーザーが疑いを持たずにファイルを開いてしまう場合があります。

Emotetの特徴

  1. スパムメールを利用した感染拡大
    Emotetは、感染者のアドレス帳やメール内容を窃取し、それを基にしてスパムメールを送り付けます。特に、既存のメールスレッドに返信する形でメールを送り、添付ファイルやリンクを含めることで、受信者に不審感を与えずにファイルを開かせ、感染を広げます。
  2. 多段階攻撃(多段攻撃)
    Emotetは、感染後にさらに別のマルウェアをダウンロードする機能を持ち、ランサムウェアやバンキング型トロイの木馬などの二次感染を引き起こします。特に、TrickBotやRyukなどのマルウェアをダウンロードし、被害者の重要なファイルを暗号化したり、機密情報を窃取したりします。
  3. 自己複製機能とネットワーク感染
    Emotetは感染端末内で自己複製し、ネットワーク上の他の端末へ感染を拡大する機能を持っています。企業内で感染が発覚した場合、全体に拡大するリスクが高く、対策が遅れると広範囲に被害が広がります。
  4. 高度な難読化とエクスプロイト技術
    Emotetは、検出を回避するために、コードを難読化したり、複雑なエクスプロイト技術を使用したりして、アンチウイルスソフトやセキュリティ対策から身を隠します。そのため、検出や駆除が難しいという特徴があります。

Emotetの感染経路

  1. メールの添付ファイル
    Emotetは主にメールの添付ファイル(Word文書やExcelファイルなど)を通じて感染します。これらのファイルにはマクロ(プログラム)が含まれており、開くとマクロが実行され、Emotetが自動的にダウンロードされます。
  2. フィッシングリンク
    Emotetはメールに不正なリンクを挿入し、受信者がそのリンクをクリックすると、マルウェアがダウンロードされます。リンクは信頼できるドメインに見せかけられることが多く、リンクをクリックするように誘導する文面が工夫されています。
  3. USBメモリなどのリムーバブルメディア
    ネットワーク外での感染拡大として、USBメモリや外部ハードディスクを介して感染が拡がるケースもあります。これにより、ネットワークに接続されていないPCにもEmotetが侵入する可能性があります。

Emotetの被害

Emotetに感染すると、以下のような被害が発生する可能性があります。

  1. 機密情報の漏洩
    Emotetは感染した端末からパスワード、メールの内容、アドレス帳情報などの個人情報を窃取し、外部サーバーに送信します。この情報が悪用されると、他のシステムへの不正アクセスや詐欺行為が行われる可能性があります。
  2. ランサムウェア感染によるデータ損失
    Emotetに感染した端末は、TrickBotやRyukなどのランサムウェアに二次感染しやすく、重要なデータが暗号化され、身代金を要求されるケースがあります。これにより、企業や組織の業務が停止し、深刻な経済的損失が発生することがあります。
  3. スパムメール拡散による信用失墜
    Emotetは感染端末を利用してスパムメールを大量に送信し、受信者に迷惑や被害を与えます。このため、感染者の信用が損なわれるだけでなく、メールサーバーがブラックリストに登録され、業務メールが他の企業に届かないといった問題が発生します。
  4. ネットワーク全体の感染
    Emotetはネットワーク上で他の端末に感染を拡大するため、企業や組織全体が感染のリスクにさらされます。これにより、全端末の停止や隔離といった大規模な対策が必要となり、業務への影響が甚大となります。

Emotetに対する対策

  1. メールのセキュリティ対策
    メール添付ファイルやリンクをクリックする前に、その信頼性を確認するよう教育を徹底します。また、メールサーバーにスパムフィルターを導入し、不正メールや疑わしいメールをブロックする対策が有効です。
  2. マクロ無効化の設定
    WordやExcelファイルのマクロ機能をデフォルトで無効にし、信頼できないファイルを開かないように設定します。特に、インターネットからダウンロードしたファイルのマクロは極力実行しないようにします。
  3. アンチウイルスソフトとエンドポイントセキュリティの導入
    最新のアンチウイルスソフトやエンドポイントセキュリティをインストールし、リアルタイムでEmotetや他のマルウェアを検出・駆除します。また、定期的にシステム全体をスキャンし、感染の有無を確認することが重要です。
  4. OSおよびソフトウェアの更新
    OSやアプリケーションの最新のセキュリティパッチを適用することで、脆弱性を悪用されないようにします。特にWindows Updateは定期的に実行し、Emotetが利用する脆弱性を事前に防ぐことが重要です。
  5. エモチェック(EmoCheck)による感染確認
    Emotet感染を早期に発見するために、EmoCheckなどの無料ツールを使用して端末を検査します。感染が確認された場合は、即座にネットワークから隔離し、専門の対策を講じます。
  6. ネットワーク分割(セグメンテーション)
    Emotet感染が発生した場合に備えて、ネットワークを複数のセグメントに分割することで、感染拡大を防ぎます。感染端末の隔離が迅速に行えるようにすることで、被害を最小限に抑えることができます。

まとめ

Emotetは、スパムメールを通じて感染を拡大し、企業や組織に大きな被害をもたらすマルウェアです。特に、ランサムウェアや他のマルウェアをダウンロードするゲートウェイとしても機能するため、早期の検出と対応が非常に重要です。Emotetの感染防止には、メールの取り扱い注意、マクロ無効化、エンドポイントセキュリティの導入、EmoCheckによるスキャンなど、複数の対策を組み合わせることが効果的です。

Emotetは世界中で多くの被害をもたらしており、その進化も続いているため、日々のセキュリティ対策と教育が欠かせません。感染の兆候が見られた場合は、迅速に対応することで、組織全体への影響を最小限に抑えることができます。


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