「セキュリティトークンって何のこと?」「IT用語として聞いたことがあるけど、投資の話にも出てくる……」——「セキュリティトークン」は文脈によって全く異なる2つの意味を持つため、混乱されている方も多いです。
本記事では、IT認証における「認証トークン」と、金融・投資における「デジタル証券(ST)」の2つの意味を整理した上で、それぞれの仕組み・メリット・デメリット・リスクまでわかりやすく解説します。
セキュリティトークンには2つの意味がある
「セキュリティトークン」という言葉は、利用される文脈によって全く異なる2つの意味を持ちます。まずここを整理することが理解への第一歩です。

| 文脈 | 意味 | 主な利用者 |
|---|---|---|
| IT・セキュリティ分野 | アクセス権限を証明するための「認証デバイス」や「認証コード生成ツール」 | IT管理者・企業のセキュリティ担当者 |
| 金融・投資分野 | ブロックチェーン技術を用いてデジタル化された「有価証券(デジタル証券)」 | 投資家・金融機関・資金調達を行う企業 |
【IT認証】セキュリティトークンとは
IT・セキュリティの文脈でのセキュリティトークンとは、本人確認(認証)を強化するためのデバイスやソフトウェアのことです。パスワードだけに依存しない多要素認証(MFA)の重要なコンポーネントとして利用されます。

認証トークンの種類
| 種類 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 物理トークン | 専用の物理デバイスがワンタイムパスワード(OTP)を生成・表示する | 独立性が高く、非常に堅牢 | 紛失・電池切れのリスク、コストがかかる |
| ソフトウェアトークン | スマートフォンアプリ(Google Authenticatorなど)がOTPを生成する | スマホで利用可能・安価 | スマホ紛失・マルウェア感染リスク |
| SMSトークン | ログイン時にSMSでワンタイムパスワードが届く | 別途アプリ不要・わかりやすい | SIMスワッピング攻撃に弱い |
OTP(ワンタイムパスワード)の2つの方式
認証トークンで生成されるOTPには主に2つの方式があります。
- TOTP(Time-based OTP):現在の時刻をもとに一定時間ごとにコードを生成する方式。Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorがこれを採用しています。30秒ごとに変わる6桁のコードが一般的です
- HOTP(HMAC-based OTP):使用回数(カウンター)をもとにコードを生成する方式。使用するたびに新しいコードが生成されます
パスワードレスの時代へ:FIDO認証・パスキー
現在は、パスワードを記憶する方式から「FIDO(Fast Identity Online)」や「パスキー」を用いたパスワードレス認証へ移行が進んでいます。
- FIDO認証:公開鍵暗号技術を用い、サーバー側にパスワードを保存しない設計。フィッシング攻撃による認証情報の漏洩を根本から防ぎます
- パスキー:FIDOをベースに、生体認証(指紋・顔認証)と端末ロックを組み合わせた次世代の認証方式。Apple・Google・Microsoftが対応しています
パスワードだけの認証は、フィッシング詐欺・リスト型攻撃・パスワードの使い回しなどにより突破されるリスクがあります。認証トークンを使った多要素認証(MFA)を導入することで、パスワードが漏洩しても不正ログインを防ぐことができます。
【金融・投資】デジタル証券(セキュリティトークン)とは
金融・投資の文脈でのセキュリティトークン(ST:Security Token)とは、ブロックチェーン技術を用いてデジタル化された有価証券のことです。
デジタル証券の基本的な仕組み
デジタル証券は「有価証券(Security)」を「デジタルデータ(Token)」として取り扱うため「セキュリティトークン」と呼ばれます。
ブロックチェーン上の「スマートコントラクト(自動執行プログラム)」を活用することで、以下が実現できます。
- 第三者の仲介なしに権利の移転を自動実行
- 配当・利子の支払いをプログラムで自動処理
- 取引履歴が改ざん困難な状態で透明性高く記録される
日本における法的位置づけ
日本では2020年5月施行の改正金融商品取引法(金商法)により、デジタル証券は「電子記録移転有価証券表示権利等」として法的に位置づけられました。株式や社債と同様に開示規制・行為規制が適用される正規の金融商品です。
デジタル証券は金融商品取引法に規制された正規の有価証券です。投機目的の暗号資産とは法的根拠も規制当局も異なります。
STOとは
STO(Security Token Offering)とは、デジタル証券を発行して資金調達を行うことです。株式のIPO(新規公開株)に相当するもので、発行体企業がデジタル証券を新規発行して投資家から資金を集める仕組みです。
デジタル証券・暗号資産・NFTの違い
| 比較項目 | デジタル証券(ST) | 暗号資産(仮想通貨) | NFT |
|---|---|---|---|
| 法的根拠 | 金融商品取引法 | 資金決済法 | 法的定義が困難 |
| 裏付け資産 | 企業・不動産・債券など実体資産 | なし(主に需給) | アート・デジタルコンテンツなど |
| 主な目的 | 証券投資・資金調達 | 決済・価値保存・投機 | デジタル所有権の証明 |
| 監督官庁 | 金融庁 | 金融庁(資金決済) | 明確でない |
| 投資家保護 | 有価証券と同等の規制あり | 限定的 | 限定的 |
デジタル証券の主な種類と活用事例
不動産セキュリティトークン(不動産ST)
不動産ファンドの投資持分をブロックチェーン上でデジタル化したものです。従来は大口投資家しか参加できなかった大型不動産(ホテル・オフィスビル・商業施設など)へ、数万円単位の小口から投資できるようになります。
賃料収入を配当として還元するスキームが定着しており、機関投資家から個人投資家まで幅広い注目を集めています。
社債セキュリティトークン(社債ST)
社債をブロックチェーン上で発行・移転できるようにした有価証券です。従来の証券保管振替機構(ほふり)を経た名義書換・受け渡しが不要となり、手続きが大幅に効率化されます。
楽天証券のように、利子を楽天ペイ残高で受け取るといった「非金銭リターン」を組み合わせた独自の商品設計も可能です。
インフラ・航空機トークン
インフラ資産や航空機など、これまで個人投資家にはアクセスが難しかった資産への投資機会を提供する商品も登場しています。
デジタル証券のメリットと注意点
メリット
- 少額から多様な資産に投資できる:これまで大口投資家向けだった不動産・インフラなどに、数万円単位の小口投資が可能
- 取引の透明性が高い:ブロックチェーン上の記録は改ざんが極めて困難で、取引履歴が公開されている
- 決済の効率化:証券取引所の株式なら決済に3日かかる場合があるが、STは技術的には即時決済が可能
- 非金銭リターンの設計が可能:配当・利子に加え、クーポン・ポイント・優待特典など発行企業が独自のリターンを設計できる
主なリスクと注意点
- 価格変動リスク:既存の有価証券と同様に、紐づけられている資産の価格変動により損失が生じる可能性がある
- 流動性リスク:デジタル証券の流通市場(セカンダリー市場)はまだ発展途上。大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営する「START」があるが、取り扱い外の商品も多く、希望のタイミング・価格での売却が困難な場合がある
- 秘密鍵管理リスク:デジタル証券の安全性は秘密鍵の管理に依存する。秘密鍵を紛失すると資産の喪失に直結するため、信頼できるカストディアン(資産管理業者)の選定が重要
- 技術的リスク:ブロックチェーン技術・プラットフォームに関連する不確実性があり、STの流出があった場合、権利の全部または一部が消失するリスクがある
デジタル証券への投資を検討する場合は、金融商品取引業者として登録された証券会社やSTO専用プラットフォームを通じて購入してください。投資には元本割れのリスクが伴います。必要に応じて専門家への相談を検討してください。
認証トークン導入の選び方(IT管理者向け)
IT管理者・経営者が認証トークンを選ぶ際は、以下のポイントで判断してください。
- セキュリティ要件の策定:リスクアセスメントを行い、どの程度の認証強度が必要かを決める
- 既存システムとの互換性確認:導入するトークンが既存のシステムと連携できるかを確認する
- コストと導入難易度のバランス:物理トークンは高コストだが堅牢。ソフトウェアトークンは低コストで導入しやすい
- ユーザー利便性(UX)の確保:セキュリティを高めても、使いにくすぎると運用が定着しない
- 法規制・ガイドラインへの適合:業種・規模に応じて適用される法規制・ガイドラインに準拠しているかを確認する
セキュリティトークンに関連する被害・注意事例2選
事例1:パスワードリスト攻撃を受け、二段階認証が導入された事例
KLab IDでは、外部から流出したパスワード情報を悪用したとみられるパスワードリスト攻撃により、2,846件のアカウントで不正ログインが確認されました。同社は対策として、全KLab IDアカウントに確認コードによる二段階認証を搭載しています。
この事例は、パスワードだけの認証では不正ログインを防ぎきれないことを示しています。認証アプリ、確認コード、FIDO認証、パスキーなどのセキュリティトークンを組み合わせることで、パスワードが漏洩した場合でもアカウント保護を強化できます。
事例2:スマートコントラクトの脆弱性により巨額資産が流出した事例
Poly Networkでは、スマートコントラクトの脆弱性を突かれ、約675億円相当の仮想通貨が流出しました。デジタル証券は暗号資産とは異なり、金融商品取引法に基づく有価証券ですが、ブロックチェーンやスマートコントラクトを活用する場合、技術的な不備が資産流出や権利管理上の問題につながる可能性があります。
デジタル証券に投資する際は、発行体や証券会社の信頼性だけでなく、利用されるブロックチェーン基盤、スマートコントラクトの監査状況、秘密鍵管理、カストディ体制も確認することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 認証トークンはスマホのアプリで代替できますか?
はい、可能です。Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどの認証アプリを使うことで、物理デバイスと同等以上のセキュリティを確保しつつ、利便性を高めることができます。ただし、スマートフォン自体が紛失・盗難・マルウェア感染した場合のリスクは残るため、重要なシステムでは物理トークンやFIDO認証の併用を検討してください。
Q. デジタル証券(ST)はどこで購入できますか?
金融商品取引業者として登録された証券会社やSTO専用プラットフォームを通じて購入できます。楽天証券・野村証券・SBI証券などの大手証券会社でも取り扱いが始まっています。購入前に必ず目論見書・リスク説明書を確認してください。
Q. デジタル証券は暗号資産(仮想通貨)と同じですか?
異なります。デジタル証券は金融商品取引法に規定された正規の有価証券で、不動産や社債などの実体資産に裏付けられています。一方、暗号資産は資金決済法に基づくもので、実体資産との裏付けがなく価格は主に需給で決まります。規制当局・投資家保護のルールも異なります。
Q. セキュリティトークンを使っていれば絶対に安全ですか?
絶対とは言えません。認証トークンの場合、端末自体が乗っ取られたり(マルウェア感染)、SIMスワッピングによってSMSトークンが傍受されたりするリスクがあります。デジタル証券の場合、秘密鍵の紛失や技術的リスクが存在します。いずれも「単独では完璧なセキュリティは存在しない」という認識のもと、多層的な対策を組み合わせることが重要です。
Q. パスキーとFIDO認証は何が違いますか?
パスキーはFIDO認証規格をベースにした具体的な実装の一つです。FIDO2規格に準拠し、スマートフォンやPCの生体認証(指紋・顔認証)と端末ロックを組み合わせてパスワードなしでログインできます。AppleはPasskeys、GoogleはGoogle Passwordsとして実装しており、主要なウェブサービスへの対応が急速に広がっています。
まとめ
セキュリティトークンには「IT認証のための認証デバイス・コード生成ツール」と「ブロックチェーンを活用したデジタル証券(ST)」という2つの全く異なる意味があります。どちらの文脈で使われているかを文脈で判断することが重要です。
IT認証のセキュリティトークンは、パスワードだけに依存しない多要素認証(MFA)の核として、不正ログインから企業・個人を守る重要な技術です。現在はFIDO認証・パスキーによるパスワードレス化が急速に進んでいます。
デジタル証券(ST)は、金融商品取引法に基づく正規の有価証券として、不動産・社債など従来は個人投資家がアクセスしにくかった資産への少額投資を可能にする革新的な金融商品です。ただし、流動性リスク・価格変動リスク・秘密鍵管理リスクなど独特のリスクもあるため、仕組みと商品性を正しく理解した上で検討することが不可欠です。


























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IT認証では「アクセスの正当性」を、デジタル証券では「権利保有の正当性」を、それぞれの技術で守っています。「セキュリティ(安全性)」という概念を「トークン(証明)」として扱うという点が共通しています。