Googleは2016年2月9日から、Gmailに暗号化通信(TLS)をサポートしないメールサービスから受信したメールに警告表示を行う新たなサービスを開始しました。これは子どもや若者にインターネットの安全な利用を推進する「Safer Internet Day」の実施に合わせて公開されたGoogleの新しいセキュリティ機能に含まれるものです。
今回、新たに公開された機能は以下の2つです。
公開された2つの新機能
1 Security Checkup
「Security Checkup」はGoogleアカウントのセキュリティ管理機能であり、これを利用することで2段階認証(2FA)の利用や、アカウントの権限設定の管理が行えます。
2 非暗号化メールの警告メッセージ表示
回取り上げる暗号化通信をサポートしないメールの警告機能です。この警告サービスでは、メールの受信一覧で対象のメールが開いた南京錠のマークをつけて表示されます。そして利用者がメールを開くと、「送信者のメールが暗号化をサポートしていない」旨のメッセージダイアログが表示されます。
なぜこのような新機能が加わったのか?
こういったメッセージ画面をGoogleが出すようになった理由は、いうまでもなくセキュリティの向上です。
暗号化されていないメールはインターネット上を悪意ある第三者が簡単に読める形でデータが流れます。
ともすれば簡単に情報が漏えいしてしまうのです。そして、現在のインターネット上の攻撃のうち高い割合を示しているのが、メールを使った標準型攻撃と呼ばれるものです。
セキュリティ大手のトレンドマイクロ社の2015年の調査では、実に悪意のある不正な攻撃の80%がそれであるとの結果が分かっています。そのため、メールのセキュリティ向上が今や急務となっているのです。
標準型攻撃とは、メールにウィルスを添付したり、不正なサイトへのリンクを相手に送りつけたりするものです。メールでの攻撃と言えば、かつては不特定多数にメールを送り付けるという手法が一般的でしたが、現在はもっぱら特定の組織や個人をターゲットとしてピンポイントで送る手口になっています。こういったメールによる標準型攻撃は、被害を受けると情報の漏えいやデータの破壊など深刻な被害をもたらしかねません。
さらに情報の漏えいなどが発生すると企業にとって信頼の失墜にもなり、大きな経済的損失につながります。
そうした事態を受けてGoogleはGmailに今回のようなサービスを付与することを決定したのです。
では、GoogleはGmailにこういったサービスを設定することでどういうことを目指しているのでしょうか。
Googleが目指すサービスによる効果
- Gmailのセキュリティレベルを向上させること
- 暗号化通信(TLS/SSL)がより多くのメールプロバイダで採用されること
- メール通信全体のセキュリティの向上
今回のGoogleの取り組みが1)の「Gmailのセキュリティレベル向上」の一端を担っているのは言うまでもありません。同様のタイミングで公開されたSecurity Checkupについて見てもそれは明白です。
しかし、彼らの目指すところはそこだけでなくさらにその先2や2にあると考えられます。大手IT企業であるGoogleのサービスが暗号化されないメールを拒絶する方向性を見せたことは、当然ながら他のインターネットプロバイダに対して強いアピールに繋がります。
Googleのこういった動きを見て、他のプロバイダにも追随して暗号化メールサービスを標準的なものとし、他は受け付けないとする動きが広がるでしょう。
おわりに
実は現在の暗号化メールを採用しているプロバイダの割合はそれほど高くはありません。2015年のGoogle Transparency ReportによるとTLS暗号化が行われたメールは受信で57%、送信で81%となっています。
Googleとしては、この割合を限りなく100%に近づけたいという意図があります。それによって、彼らはインターネットにおけるメール通信全体のセキュリティの向上と、それに伴うメールを利用した悪意あるサイバー攻撃の撲滅を目指しているのです。