病院・医療施設で必要なサイバーセキュリティ対策とは? ランサムウェア攻撃から情報を守る重要性|サイバーセキュリティ.com

病院・医療施設で必要なサイバーセキュリティ対策とは? ランサムウェア攻撃から情報を守る重要性



近年、医療機関を狙ったサイバー攻撃が急増しています。特にランサムウェアによる被害は深刻で、電子カルテのシステムが停止し、診療が困難になる事例が相次いでいます。病院にとって、患者の命に関わる医療情報や個人情報を守ることは、事業継続性を確保する上で不可欠です。

この記事では、病院・医療施設サイバーセキュリティがなぜ重要なのか、そして医療機関が直面する具体的な脅威、さらに効果的な対策まで、分かりやすく解説します。ランサムウェア攻撃から大切な医療情報を守り、患者の安全と信頼を確保するためのヒントを見つけていきましょう。

取次・紹介:双日インシュアランス
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病院・医療施設でサイバーセキュリティが重要な理由

病院は、患者の個人情報や病歴、投薬情報といった機密性の高い医療情報を大量に保有しています。そのため、サイバー攻撃の標的になりやすく、セキュリティ対策は企業のそれ以上に重要です。

1. 患者の安全と命を守るため

サイバー攻撃が医療機器やシステムに影響を及ぼすと、患者の安全に直接的な危害が及ぶ可能性があります。

  • 医療機器の誤作動: 攻撃によって点滴の流量や心電図モニターなどの医療機器が誤作動を起こすと、患者の命に関わる事態に発展します。
  • 電子カルテの停止: 電子カルテが利用できなくなると、適切な治療や投薬ができなくなり、診療が困難になります。

2. 機密性の高い情報を守るため

病院は、氏名、住所、電話番号といった個人情報に加え、病歴や遺伝子情報など、非常に機密性の高い医療情報を保有しています。

  • 個人情報の流出: サイバー攻撃によってこれらの情報が流出すると、患者のプライバシーが侵害され、悪用される可能性があります。
  • 信用の失墜: 医療機関として、患者の信頼を失い、社会的な信用を失墜させてしまう可能性があります。

3. 事業継続性を確保するため

サイバー攻撃によってシステムが停止すると、診療業務全体が停止し、病院運営に深刻な影響を及ぼします。

  • 診療業務の停止: 予約システム、会計システム、画像診断システムなどが停止すると、通常通りの診療ができなくなります。
  • 経済的な損失: 診療が停止することで、収入の減少だけでなく、復旧費用や損害賠償といった経済的な損失が発生します。

病院が直面するサイバー攻撃の主な脅威

病院を狙うサイバー攻撃は、日々巧妙化しています。特に注意すべき主な脅威は以下の通りです。

1. ランサムウェア攻撃

ランサムウェアは、病院のシステムを停止させる最も深刻な脅威の一つです。

  • 攻撃の手口:
    • 病院のシステムに侵入し、電子カルテや予約システムなどのデータを暗号化します。
    • データの復旧と引き換えに身代金(ランサム)を要求します。
  • 被害の拡大:
    • 身代金を支払ってもデータが復旧しないケースや、情報が流出するケースも多く報告されています。
    • 攻撃によって診療業務が停止し、患者の安全が脅かされます。

2. フィッシング詐欺

フィッシング詐欺は、病院の従業員を騙して、認証情報などを盗み出す手口です。

  • 攻撃の手口:
    • 病院の従業員に対して、偽のメールやウェブサイトを送りつけ、パスワードや個人情報を入力させようとします。
    • 病院のシステムにアクセスする権限を持つ従業員が騙されると、病院全体が攻撃の標的になります。

3. DDoS攻撃

DDoS攻撃は、病院のウェブサイトやシステムをダウンさせる手口です。

  • 攻撃の手口:
    • 多数のコンピューターから病院のサーバーにアクセスを集中させ、システムをパンクさせます。
  • 被害の拡大:
    • 病院のウェブサイトが閲覧できなくなったり、予約システムやオンライン診療が利用できなくなったりするなど、患者サービスに影響が及びます。

病院・医療施設が今すぐ始めるべきサイバーセキュリティ対策

病院・医療施設がサイバー攻撃の脅威から身を守るためには、以下の5つの対策を速やかに実施することが不可欠です。これらの対策は、組織全体で取り組むべき多層的なアプローチを要します。

1. 従業員へのセキュリティ教育の徹底

サイバー攻撃の多くは、従業員の不注意や知識不足が原因で発生します。ヒューマンエラーを防ぐための教育は、最も基本的かつ重要な対策です。

  • 定期的な研修と訓練の実施
    • 不審なメールや添付ファイルを開かない、怪しいウェブサイトにアクセスしない、といったセキュリティの基本ルールを従業員に定期的に教育しましょう。
    • フィッシング訓練を定期的に実施し、従業員が偽のメールを見破るスキルを身につけられるようにします。
    • ランサムウェア感染時の初動対応(ネットワーク切断など)についても、具体的な訓練を行い、緊急時の対応力を高めましょう。
  • パスワード管理の厳格化
    • 強固なパスワード(文字数、文字種を組み合わせる)の設定を義務付け、定期的な変更を促します。
    • 複数のシステムで同じパスワードを使い回すことを避け、システムごとに異なるパスワードを使用するよう指導しましょう。
    • 可能であれば、**多要素認証(MFA)**の導入を検討し、不正アクセスに対する防御力を高めます。

2. ITシステムの脆弱性対策と防御体制の強化

システムの脆弱性を放置していると、サイバー攻撃の標的になりやすくなります。常にシステムの安全性を確保し、外部からの攻撃を防ぐ体制を構築しましょう。

  • OSやソフトウェアの常時アップデート
    • OS、電子カルテシステム、各種アプリケーションは、常に最新の状態に保ち、脆弱性を修正しておきましょう。
    • アップデートの自動化や、パッチ管理の徹底を図り、セキュリティホールをなくします。
  • 強固なセキュリティソフトの導入
    • マルウェアの感染を検知・防止するために、エンドポイントセキュリティソフトやファイアウォールを導入しましょう。
    • 定期的なスキャンを実施し、不正なプログラムやマルウェアの存在をチェックします。
  • ネットワークのセグメント化
    • 院内のネットワークを、医療機器用、事務用、ゲスト用など、用途に応じて分割(セグメント化)しましょう。
    • これにより、万が一一部のネットワークが感染しても、被害が全体に広がるのを防ぐことができます。

3. バックアップと復旧計画の策定

サイバー攻撃によるシステムダウンやデータ損失は避けられない事態に備え、迅速な復旧を可能にする計画が不可欠です。

  • バックアップの多重化と定期実施
    • 電子カルテや重要なデータを定期的にバックアップしましょう。バックアップは、1つの場所に限らず、異なる媒体や場所(クラウド、外部ストレージなど)に多重化して保管します。
    • ランサムウェア攻撃に備え、バックアップデータをオフライン環境に保管しておく「エアギャップ」対策も有効です。
  • サイバーリカバリー計画の策定
    • サイバー攻撃が発生した際の初動対応(ネットワーク切断、被害範囲の特定など)から、システムの復旧までの具体的な手順を定めた計画を策定しましょう。
    • 復旧計画には、クリーンな状態のデータを確実に復元する手順を含める必要があります。

4. 医療機器とIoTデバイスのセキュリティ管理

医療機器やIoTデバイスもサイバー攻撃の標的となります。これらのデバイスのセキュリティ対策を強化することは、患者の安全を守る上で特に重要です。

  • デバイスの特定と管理
    • 院内ネットワークに接続されているすべての医療機器(MRI、CTスキャナーなど)やIoTデバイス(監視カメラ、スマートロックなど)を正確に把握し、台帳を作成しましょう。
    • これらのデバイスのOSやファームウェアが最新の状態に保たれているか定期的に確認します。
  • 専用ネットワークの構築
    • 医療機器を一般のネットワークから分離し、専用の閉域ネットワークに接続しましょう。
    • これにより、外部からの不正アクセスや、ランサムウェア感染のリスクを低減できます。

5. 専門家との連携と情報共有

サイバー攻撃の脅威は進化し続けるため、専門的な知識を持つ組織との連携が不可欠です。

  • 外部専門家との連携
    • サイバー攻撃は専門的な知識を要するため、外部のセキュリティ専門家やベンダーとの連携体制を構築しておきましょう。
    • インシデント発生時の緊急対応を依頼できる体制を整えておくことが、被害を最小限に抑える鍵となります。
  • 情報共有と研修
    • サイバーセキュリティに関する最新情報を常に収集し、従業員に共有しましょう。
    • 業界団体や公的機関(厚生労働省、IPAなど)が提供する研修やガイドラインを活用し、知識のアップデートを図ります。

まとめ

病院・医療施設サイバーセキュリティは、患者の安全と命を守り、病院の信用と事業継続性を確保するために、不可欠な対策です。

ランサムウェア攻撃やフィッシング詐欺など、医療機関を狙う脅威は日々巧妙化しています。これらの脅威から身を守るためには、従業員へのセキュリティ教育、ITシステムの脆弱性対策、バックアップと復旧計画の策定に加え、医療機器の管理専門家との連携といった多層的な対策が重要です。

この記事でご紹介した対策を参考に、あなたの病院のサイバーセキュリティを強化し、患者が安心して医療を受けられる環境を築きましょう。

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