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BGP

BGP(Border Gateway Protocol) は、インターネット上で異なる自律システム(AS:Autonomous System)間の経路情報を交換し、ネットワークの経路選択を管理するための経路制御プロトコルです。BGPはインターネット全体の構造を形成し、各ASが他のASと通信する際の最適な経路を決定する役割を担っています。BGPによってインターネット上でのトラフィックが適切にルーティングされ、ネットワークの冗長性と安定性が確保されます。

BGPは、特にインターネットサービスプロバイダー(ISP)や大規模な企業、政府機関などで使用され、インターネットの構成要素として重要な役割を果たしています。

BGPの仕組みと基本機能

BGPは、AS間でネットワーク経路情報を交換するプロトコルであり、以下のような仕組みと機能があります。

1. 経路情報の交換

BGPは、各ASが自分のネットワークや隣接ASへの経路情報を他のASに提供します。これにより、各ASはインターネット上で到達可能なネットワークの経路を把握し、経路情報をもとに最適な通信経路を選択します。

2. 経路選択の基準とポリシー

BGPは、複数の経路情報を受け取った際に、各ASが独自のポリシーに基づいて経路を選択できる柔軟性を持っています。例えば、通信コストや経路の安定性などの基準を設定し、最も効率的なルートや信頼できるルートを選択することが可能です。

3. 経路情報の広域管理

BGPは、インターネット全体で広範囲にわたる経路情報を管理し、他のASに通知する役割を果たしています。BGPは、各ASが他のASへの到達経路を知るための情報を提供し、ネットワークの障害や経路の変動に対しても迅速に対応できるようにしています。

4. 冗長性と負荷分散

BGPは、複数の経路が利用できる場合に冗長性を提供し、通信の負荷分散を行います。これにより、通信経路が一部で障害が発生しても、他の経路で通信を続けることが可能となり、インターネットの信頼性と耐障害性が向上します。

BGPの種類

BGPには、AS内またはAS間の通信に応じて以下の2種類のモードがあります。

1. eBGP(External BGP)

eBGPは、異なるAS間で経路情報を交換するためのプロトコルです。主にISPや企業が他のASとインターネット経路情報を交換する際に利用されます。eBGPは外部ネットワークとの接続を管理し、複数の経路が存在する場合に最適な経路を選択します。

2. iBGP(Internal BGP)

iBGPは、同じAS内での経路情報を交換するためのプロトコルです。iBGPはAS内でのネットワーク接続を管理し、AS内の各ルーターが共通の経路情報を持つことで、インターネットへの安定した接続を維持します。iBGPにより、AS内のルーター間で経路情報を共有することで、効率的なルーティングが実現されます。

BGPの経路選択プロセス

BGPでは、複数の経路情報がある場合、各ASが独自の基準に基づいて経路を選択します。経路選択は、BGPのさまざまなパラメータ(属性)によって決定され、最も適切な経路が最終的に選択されます。

BGPの主な経路属性

  1. ASパス
    経路に含まれるASのリストです。BGPはASパスが短い経路を優先するため、ASパスが短いほど経路として選択されやすくなります。
  2. プリファレンス(Preference)
    管理者が優先的に使用したい経路に設定する属性です。プリファレンス値が低い経路が優先されます。
  3. メトリック(Metric)
    経路のコストや品質を表す値です。メトリックが低い経路が選択されやすく、経路のパフォーマンスや信頼性を考慮してルーティングを最適化します。
  4. 次ホップ(Next Hop)
    パケットを送信するための次のルーターのIPアドレスです。経路の到達可能性を確認するために使用されます。
  5. 重み(Weight)
    Cisco製ルーターの固有属性で、BGP経路選択時の優先順位を指定できます。重みが高い経路が選択されます。

BGPの経路選択手順

BGPは、以下の手順で経路選択を行います。

  1. BGP属性を比較
    各経路のBGP属性(ASパス、プリファレンス、メトリック、次ホップなど)を比較し、条件に最も適合する経路を選択します。
  2. ASパスの短い経路を優先
    同じ条件の経路が複数ある場合、ASパスの長さが短い経路が優先されます。
  3. 管理者のポリシーを適用
    ネットワーク管理者が指定した優先順位やプリファレンスを適用し、最適な経路を決定します。
  4. 経路の最適化
    負荷分散や冗長性のために、複数の経路が選ばれることもあります。選ばれた経路に基づき、トラフィックが最適なルートを通過するように設定されます。

BGPの利点と役割のまとめ

BGPは、インターネット上でのトラフィック管理と経路情報交換において、以下のような利点と役割を果たしています。

  • 経路の最適化
    BGPは、最適な経路を選択し、トラフィックが効率的に流れるように制御します。これにより、インターネット全体の通信速度と効率が向上します。
  • トラフィックの冗長性と信頼性向上
    BGPは、複数の経路がある場合に冗長経路を保持し、ネットワーク障害が発生した場合でも他の経路に切り替えることで通信を維持します。
  • インターネット構造の柔軟性
    各ASが独自のルーティングポリシーを設定できるため、ISPや大規模組織は自分たちに最適なトラフィック管理を行えます。

BGPの課題と注意点

BGPはインターネットの基盤プロトコルですが、いくつかの課題もあります。

  1. BGPハイジャックのリスク
    不正なASが偽の経路情報を発信してトラフィックを誘導するBGPハイジャックが発生することがあります。これにより、通信が不正にリダイレクトされたり、データが盗まれたりするリスクがあります。
  2. 経路の収束遅延
    大規模なネットワークでBGP経路の変更が発生した場合、全体が安定するまでに時間がかかることがあります。これにより、一時的に通信が不安定になる可能性があります。
  3. セキュリティ対策
    BGPはもともと認証機能を持っていないため、偽の経路情報が発信されやすく、ルート認証技術や暗号化技術(RPKIなど)を導入してセキュリティを強化する必要があります。

まとめ

BGP(Border Gateway Protocol)は、インターネットの基盤を支える経路制御プロトコルで、AS間の通信経路を管理し、最適なルーティングを実現します。BGPはインターネット全体の経路情報を交換し、ネットワークの冗長性と信頼性を確保するために欠かせない存在です。各ASが独自のルーティングポリシーを適用できるため、ISPや大企業はBGPを利用してトラフィックを最適化し、安定したインターネット接続を提供しています。

ただし、BGPにはセキュリティリスクや経路の収束遅延といった課題もあり、適切な管理と保護が求められます。


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