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AS(Autonomous System)

AS(Autonomous System、自律システム) は、インターネット上で一貫したルーティングポリシーを持つネットワークの集合体を指し、特定の組織やプロバイダーによって管理されています。ASは一意の識別番号(ASN:Autonomous System Number)を持ち、他のASと通信するためのルーティングが設定されています。ISP(インターネットサービスプロバイダー)や大規模な企業、政府機関などが自社のネットワークを管理するためにASを使用しており、インターネット全体の構造を形成する基本単位として重要な役割を担っています。

ASは、インターネットの経路制御プロトコルであるBGP(Border Gateway Protocol)を利用して、他のASと経路情報を共有し、インターネット全体のルーティングを最適化しています。

ASの仕組みと役割

ASは、特定の組織が管理するネットワークで構成され、主に以下の役割と機能を持っています。

1. 一貫したルーティングポリシー

ASは一貫したルーティングポリシーに基づいて運営されており、内部での経路設定が統一されています。これにより、ネットワーク内の通信が効率的に行われるだけでなく、他のASと通信する際にもポリシーに従ったルーティングが行われます。

2. 独自のASN(Autonomous System Number)

ASは一意のASN(自律システム番号)によって識別されます。この番号を用いることで、インターネット上で各ASが独自のネットワークとして認識され、他のASとの間でルーティング情報を交換できます。ASNは、インターネット上での経路情報の管理とルーティングに不可欠です。

3. BGP(Border Gateway Protocol)による経路情報の共有

ASは、BGPを使って他のASと経路情報を交換します。BGPはインターネット上での経路制御プロトコルであり、AS間の経路を決定します。たとえば、あるASが他のASに通信パスを提供する際、BGPは最適な経路を選択し、トラフィックを効率的にルーティングします。

4. 独自のトラフィック制御

ASは、インターネット上のトラフィックを独自に制御できます。たとえば、特定のASと優先的に通信したり、経路を最適化したりすることができます。企業やISPは、ASのルーティングポリシーを利用して、自社のネットワーク運営に最適なトラフィック管理を行います。

ASの種類

ASには、主に以下の3つの種類があります。

1. シングルホームAS(Single-homed AS)

シングルホームASは、1つの上位プロバイダーに接続されているASです。このASは、1つのISPに依存してインターネットに接続するため、他のASと直接接続することがありません。通常、小規模な企業やネットワークで利用されることが多く、複雑なルーティング設定が必要ありません。

2. マルチホームAS(Multi-homed AS)

マルチホームASは、複数のISPや上位プロバイダーに接続しているASで、複数の経路からインターネットにアクセスできるようになっています。マルチホームASは、ネットワークの冗長性を高め、特定のISPがダウンした場合にも通信を維持するために使用されます。中規模から大規模の企業が利用するケースが多いです。

3. トランジットAS(Transit AS)

トランジットASは、他のASにインターネット接続を提供するASで、ISPや大規模なネットワークプロバイダーが該当します。トランジットASは、他のASにインターネットへの経路を提供することで、インターネット全体の通信経路を構築する役割を担っています。トランジットASは大規模なISPや国際的なネットワークで使用され、インターネットの中核を成しています。

ASとBGPの関係

ASはBGP(Border Gateway Protocol)を通じて、他のASと経路情報を交換し、インターネット上でのルーティングを実現します。BGPはAS間のルーティング情報を管理するプロトコルであり、インターネット全体で利用されています。

BGPによる経路選択とポリシー設定

BGPでは、ASが独自のルーティングポリシーを設定し、通信経路を選択できます。たとえば、あるASがトラフィックを特定の経路で受信したり、特定のASを優先的に選択したりする場合、BGPポリシーを設定してその経路を選ぶことが可能です。これにより、インターネット全体で最適なルーティングが実現されます。

BGPとASNによる経路識別

BGPは、AS間の経路情報をASNを用いて識別します。BGPは各ASの経路情報を管理し、ASNをもとに最適な経路を決定するため、各ASはBGP経由でネットワーク上のトラフィックを効率的に管理できます。これにより、BGPとASNは、AS間の通信を円滑にするための重要な要素となっています。

ASの利点と役割のまとめ

ASには、インターネット上でのトラフィック管理と経路情報交換において、以下のような利点と役割があります。

  • 一貫したルーティングポリシーの維持:ASは、一貫性のあるルーティングポリシーを保持し、ネットワークの効率的な管理を可能にします。
  • BGP経由の経路情報交換:ASはBGPを使って他のASと経路情報を共有し、最適な経路を選択するため、トラフィックの効率的なルーティングが実現されます。
  • トラフィック制御の柔軟性:ASは独自のトラフィック制御を行い、ネットワークの効率化と冗長性を高めることができます。

ASの利用事例

  1. ISPのネットワーク運用
    ISPはASを利用して顧客のネットワーク接続を管理し、他のISPやトランジットASと接続することで、インターネット全体への経路を提供します。これにより、各ISPが効率的なネットワークサービスを提供できます。
  2. 大企業のインフラ管理
    大企業は、自社のASを持ち、複数のISPや上位プロバイダーと接続することで、安定した通信を確保し、災害発生時にも通信が継続できる冗長性を実現しています。
  3. 国際ネットワークのトラフィック管理
    国際的なトランジットASは、世界中のASと接続してグローバルなトラフィックのハブとして機能し、インターネット上での円滑な通信を支えています。

まとめ

AS(Autonomous System、自律システム)は、インターネット上で独立したネットワークの集合体として、BGPプロトコルを使い他のネットワークと経路情報を交換する役割を持ちます。ASはISPや大企業、国際的なネットワークプロバイダーによって運営され、トラフィックの管理、ルーティングポリシーの設定、ネットワークの冗長性の向上を実現します。

ASとASNを活用することで、各ネットワークはインターネット全体の構造の一部として効率的に運営され、最適な通信経路が確保されています。ASは、インターネットの安定性と柔軟性を支える重要な構成要素です。


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