ブロック暗号(Block Cipher)は、暗号化アルゴリズムの一種で、データを一定のブロック単位に分割して一括で暗号化する方式です。ブロック暗号は、インターネット通信やデータベースの保護など、さまざまな分野でデータの機密性を維持するために使われます。一般的に、暗号化と復号化には共通の秘密鍵(対称鍵)を使用し、定められた長さのデータブロックを暗号化アルゴリズムに従って暗号化します。
ブロック暗号は、一定の長さに分割されたブロックごとに暗号化を行うため、大量のデータを効率よく安全に処理できます。代表的なブロック暗号には、「DES(Data Encryption Standard)」や「AES(Advanced Encryption Standard)」があります。
ブロック暗号の特徴
ブロック暗号の特徴は、以下の点にまとめられます。
1. ブロック単位で暗号化
データを一定のビット長に区切り、ブロックごとに暗号化処理を行います。一般的なブロックサイズは、64ビットや128ビットなどです。これにより、複数のブロックが同時に暗号化される場合も効率的な処理が可能です。
2. 共通鍵暗号方式
ブロック暗号は、送受信者が同じ鍵(共通鍵)を用いる「対称暗号方式」であることが一般的です。送信者は秘密鍵でデータを暗号化し、受信者も同じ鍵でデータを復号化するため、鍵の管理が重要です。
3. 暗号モード
ブロック暗号は、さまざまな暗号モードと組み合わせて使用されます。代表的な暗号モードには「ECBモード」や「CBCモード」、「CFBモード」、「CTRモード」があります。これらのモードによって暗号化の特性が変わり、セキュリティや性能に影響を与えます。
ブロック暗号の代表的なアルゴリズム
1. DES(Data Encryption Standard)
DESは、1977年に米国で標準暗号化方式として採用されたブロック暗号方式で、64ビットのブロックを56ビットの鍵で暗号化します。ただし、DESはセキュリティの脆弱性が発見されたため、現在ではほとんど使われていません。
2. 3DES(Triple DES)
DESの脆弱性を改善するため、DESを3回連続で実行して暗号強度を高めた方式が3DESです。現在でも利用されることがありますが、AESの普及に伴い使用頻度は減少しています。
3. AES(Advanced Encryption Standard)
AESは、現在最も広く使用されているブロック暗号で、128ビット、192ビット、256ビットの鍵長に対応しています。AESは、セキュリティと性能の両方に優れているため、インターネット通信やデータベース保護など、幅広い分野で利用されています。
ブロック暗号の暗号モード
ブロック暗号にはさまざまな暗号モードがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。
1. ECBモード(Electronic Codebook Mode)
各ブロックを個別に暗号化するモードで、シンプルな構造です。しかし、同じ平文ブロックは同じ暗号文ブロックになるため、パターンが解析されやすく、セキュリティが低下しやすいという欠点があります。
2. CBCモード(Cipher Block Chaining Mode)
直前の暗号文ブロックと現在の平文ブロックを排他的論理和(XOR)してから暗号化するモードです。初期化ベクトル(IV)を使用して最初のブロックにランダム性を加えるため、同じ平文でも異なる暗号文が生成され、セキュリティが向上します。
3. CFBモード(Cipher Feedback Mode)
暗号化された前のブロックを次のブロックの暗号化に利用するモードです。ストリーム暗号に似た性質を持ち、暗号ブロックの長さが任意のサイズである場合に適しています。
4. CTRモード(Counter Mode)
カウンター値を使って暗号化を行うモードで、各ブロックに異なるカウンター値を割り当て、平文とXOR演算を行います。この方式により並列処理が可能となり、効率的な暗号化が可能です。
ブロック暗号のメリットとデメリット
メリット
- 効率的な暗号化:一定の長さのブロック単位で処理するため、大量のデータを効率的に暗号化できる。
- 高いセキュリティ:AESなどのアルゴリズムはセキュリティが強固で、さまざまな攻撃に耐性がある。
- 多様なモードの利用:さまざまな暗号モードがあるため、用途やセキュリティ要件に応じて適切なモードを選択できる。
デメリット
- 固定ブロックのためのパディング:ブロック単位で暗号化するため、ブロック長に満たないデータはパディング(補填)が必要となり、若干のオーバーヘッドが生じる。
- 同一データのパターンが残る場合がある:ECBモードなどでは同じ平文ブロックが同じ暗号文ブロックに変換されるため、パターンが残りやすい。
まとめ
ブロック暗号は、データを一定のブロック単位で暗号化するため、大量のデータの機密性を保つために広く使用されています。代表的なアルゴリズムには、AESや3DESがあり、それぞれ高いセキュリティと効率性を備えています。また、暗号モードを組み合わせることで、さまざまな用途やセキュリティ要件に応じた暗号化が可能です。
ブロック暗号の利用においては、セキュリティ要件やデータ特性に合った暗号モードの選択が重要です。