共通鍵暗号|サイバーセキュリティ.com

共通鍵暗号

共通鍵暗号(Symmetric Key Encryption)とは、暗号化と復号に同じ鍵(共通鍵)を使用する暗号方式です。データを暗号化する側と復号する側が同じ鍵を共有しているため、暗号化・復号処理が高速であり、かつ暗号アルゴリズムもシンプルで効率的です。そのため、共通鍵暗号は大量のデータを扱うシーンやリアルタイム性が求められる通信に適しています。

ただし、共通鍵暗号には「鍵をどのように安全に共有するか」という課題もあり、この鍵の配布方法が暗号のセキュリティを保つ上で重要です。

共通鍵暗号の特徴

1. 暗号化と復号で同じ鍵を使用

共通鍵暗号では、暗号化と復号に同じ鍵を使うため、データの送信者と受信者の両方が同じ鍵を保持する必要があります。この鍵が漏洩すると第三者にもデータが解読される可能性があるため、鍵の管理が非常に重要です。

2. 高速かつ効率的

共通鍵暗号は、データの暗号化と復号を短時間で行えるため、大量データを暗号化する際に適しています。主に、データ転送速度が求められるリアルタイムの通信(動画配信や音声通話など)に使われることが多いです。

3. セキュリティリスク

共通鍵暗号は、送信者と受信者が同じ鍵を使用するため、鍵を安全に配布する方法が確立されていない場合、第三者による盗聴や不正アクセスのリスクが高まります。この問題を解決するため、鍵の配布に関しては安全な通信手段や、公開鍵暗号方式を組み合わせる方法が一般的です。

共通鍵暗号の主なアルゴリズム

共通鍵暗号にはさまざまなアルゴリズムがあり、それぞれ暗号化方式や処理方法が異なります。以下に代表的なアルゴリズムを紹介します。

1. DES(Data Encryption Standard)

DESは、1970年代にアメリカの国立標準技術研究所(NIST)によって標準化された共通鍵暗号の代表的なアルゴリズムです。DESは56ビットの鍵を使用し、非常に短時間で暗号化を行うことができました。しかし、現在ではコンピュータの性能向上により、56ビットの鍵長ではセキュリティが十分とはいえなくなったため、推奨されなくなっています。

2. 3DES(Triple DES)

3DESは、DESを3回連続して実行することで、DESのセキュリティ強度を高めたものです。鍵の長さが168ビットとなり、DES単体よりも安全性が向上していますが、処理速度が低下するため、現在はAES(後述)に取って代わられています。

3. AES(Advanced Encryption Standard)

AESは、NISTが2001年に採用した共通鍵暗号方式で、128ビット、192ビット、256ビットの鍵長が利用可能です。AESは高速で効率的であり、現在、最も広く使用されている共通鍵暗号方式の一つです。金融機関や政府機関のデータ保護にも使用され、非常に高い安全性を提供します。

4. BlowfishとTwofish

Blowfishは、1993年にブルース・シュナイアーによって開発された暗号方式で、自由な鍵長を指定できる特徴があります。Blowfishの後継として登場したTwofishも、安全性と速度を兼ね備えた暗号方式として知られており、AESの候補にもなったほどです。現在は、用途に応じて利用されています。

5. RC4

RC4は、ストリーム暗号の一種で、高速で暗号化できるため、かつてはSSL(Secure Sockets Layer)などで広く使われていました。ただし、アルゴリズム上の脆弱性が指摘されたため、現在では使用が推奨されていません。

共通鍵暗号のメリット

1. 高速な暗号化と復号

共通鍵暗号は処理が軽いため、暗号化と復号を非常に高速で行えます。特に、リアルタイム性が求められる通信や大量のデータを暗号化する際に適しています。

2. 実装が簡単で効率的

共通鍵暗号はアルゴリズムがシンプルで、実装が比較的容易です。そのため、システムリソースを大きく消費せず、効率的に運用できるというメリットがあります。

共通鍵暗号のデメリット

1. 鍵の配布と管理の問題

共通鍵暗号の最大の課題は、暗号化と復号に使用する鍵を安全に共有しなければならない点です。もし第三者に鍵が漏洩すると、暗号化された情報が解読されてしまうため、鍵の管理方法がセキュリティの要になります。

2. スケーラビリティの問題

多数のユーザーが存在する環境では、ユーザーごとに異なる鍵を共有する必要があるため、鍵の数が増加し、管理が煩雑になります。この問題を解決するために、鍵配布には公開鍵暗号方式と併用することが一般的です。

共通鍵暗号の鍵配布方法

共通鍵暗号では、鍵の配布方法がセキュリティに大きく影響するため、安全な鍵配布方法を選択することが重要です。

1. 直接共有

物理的に会うなどの安全な環境で鍵を直接共有する方法です。対面での鍵交換や、USBなどのデバイスを利用して鍵を渡す方法が考えられます。セキュリティは高いですが、物理的な制約があるため、広範な利用には向きません。

2. 公開鍵暗号方式との併用

共通鍵暗号と公開鍵暗号方式を組み合わせることで、安全な鍵交換が可能になります。例えば、最初に公開鍵暗号で共通鍵を暗号化し、その共通鍵を用いてデータを暗号化する方式です。この方法により、鍵配布時の安全性が向上し、多くの通信プロトコル(例:SSL/TLS)で採用されています。

3. 鍵配送センター(KDC)

鍵配送センター(Key Distribution Center, KDC)は、中央サーバーを通じて鍵を管理し、認証されたユーザーに共通鍵を配布する方式です。代表的な例として、Kerberosプロトコルが挙げられ、企業内ネットワークなどで広く利用されています。

共通鍵暗号の利用例

共通鍵暗号は、その高速性と効率性から、特に通信の暗号化やデータ保護に広く利用されています。代表的な使用例には以下があります。

1. HTTPS通信

インターネットのHTTPS通信では、公開鍵暗号で共有した共通鍵を使用して、以降のデータ通信を共通鍵暗号で暗号化します。これにより、Webブラウザとサーバー間の通信が保護されます。

2. Wi-Fiセキュリティ

Wi-Fi通信の暗号化には、共通鍵暗号が使用されています。WPA2(Wi-Fi Protected Access 2)などのプロトコルはAES共通鍵暗号を使用し、セキュリティと速度を両立しています。

3. ファイルの暗号化

ファイルやデータベースの暗号化にも共通鍵暗号が利用されます。AESなどの高速な暗号アルゴリズムにより、大量のファイルやデータを効率的に暗号化できます。

まとめ

共通鍵暗号は、暗号化と復号に同じ鍵を使用するシンプルで高速な暗号方式です。そのため、リアルタイム性が求められる通信や大量データの暗号化に適しています。一方で、鍵の配布や管理の課題もあり、安全な鍵配布のためには公開鍵暗号方式と組み合わせることが多いです。


SNSでもご購読できます。