3DES(Triple DES)|サイバーセキュリティ.com

3DES(Triple DES)

3DES(Triple DES)とは、DES(Data Encryption Standard)暗号を三重に適用することで、暗号化強度を高めた共通鍵暗号方式の一つです。DESの鍵長が56ビットと短く、総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)に対して脆弱だったため、その安全性を補完する目的で開発されました。3DESは、3回にわたるDESの暗号化処理を行うことで、理論上168ビットの鍵長を提供し、DESに比べてより強力な暗号強度を実現しています。

3DESの仕組み

3DESは、1つのデータブロックに対し3回のDES処理を施すことで暗号化を行います。3DESの処理は以下のように行われます。

  1. 最初のDES処理(暗号化または復号)
    入力データに対し最初のDES暗号化を施します。
  2. 2回目のDES処理(復号または暗号化)
    2回目のDES処理でデータを逆方向に変換します。1回目の処理で暗号化したデータを、2回目の処理では復号化する手順になります。
  3. 3回目のDES処理(暗号化または復号)
    最後に再度DES暗号化を施し、最終的な暗号文を得ます。

この3段階の暗号化・復号プロセスにより、3DESは「暗号化→復号→暗号化(EDE)」の手順で処理されます。3DESのアルゴリズムは以下の3種類に分類されます。

1. キーリング1(3キー方式)

3つの異なる鍵を使用して暗号化を行い、鍵の長さは168ビットとなります。安全性が高いですが、3つの鍵を管理する必要があり、実装が複雑です。

2. キーリング2(2キー方式)

2つの異なる鍵を使用して、1つ目の鍵で暗号化、2つ目の鍵で復号、再び1つ目の鍵で暗号化します。鍵長は112ビットとなり、実装の負担を軽減しつつもDES単体より強力な暗号強度が得られます。

3. キーリング3(1キー方式)

1つの鍵で3回の暗号化処理を行う方式です。この方法はDESと同じ暗号強度で、3DESの意味がなくなりセキュリティ上の強化も図れないため、一般的には使用されません。

3DESのメリット

1. DESに比べた安全性の向上

3DESはDESを三重に施すため、理論上の鍵長が168ビットに達し、DES単体よりも総当たり攻撃に対して高い耐性を持っています。これにより、DESの脆弱性を補完する手段として長年利用されてきました。

2. 互換性

3DESはDESを基本としているため、DESが実装されているシステムと互換性を保ちながらセキュリティを向上させられます。これにより、古いシステムや設備をすぐに置き換えずに3DESへの移行が容易です。

3DESのデメリット

1. 処理速度の低下

3DESはDESを3回適用するため、処理が3倍重くなり、計算コストが高くなります。これにより、大量のデータを処理する際に効率が悪く、特にリアルタイムでの暗号化には不向きです。

2. 新たな暗号標準に劣るセキュリティ

3DESは鍵長が168ビットであるものの、実際には112ビット相当の安全性しか提供しないことが分かっており、現在のAES(Advanced Encryption Standard)などの最新の暗号方式に比べて安全性が低いとされています。また、暗号解析技術の進歩により、3DESも将来的に安全性が確保できなくなる可能性が指摘されています。

3. 現行の暗号標準からの非推奨化

3DESは、NIST(米国標準技術研究所)によって2023年以降、暗号標準として非推奨とされており、徐々にAESに置き換えが進められています。これにより、新しいシステムでは3DESの使用が控えられる傾向があります。

3DESの主な用途と使用例

3DESはDESに代わる暗号方式として、特に以下の分野で採用されてきました。

  • 金融機関:ATMや銀行間のデータ通信など、機密性が高い金融取引データの暗号化に使用されてきました。
  • 電子決済システム:クレジットカード決済やオンライン決済において、3DESを用いた暗号化が採用されてきました。
  • VPNやSSL/TLS:一部の仮想プライベートネットワーク(VPN)やSSL/TLSの暗号化手段として利用されていますが、近年はAESなどのより強力な暗号方式へと移行が進んでいます。

3DESの代替と今後の展望

3DESはその強力な暗号化手法で長年にわたって利用されてきましたが、現在はAES(Advanced Encryption Standard)がその役割を担い、主流の暗号方式として使用されています。AESは3DESよりも高速で安全性が高く、256ビットの鍵長にも対応しているため、現代のセキュリティ要件を十分に満たしています。3DESの運用期限が迫っていることから、金融機関や企業はAESや他の新しい暗号方式への移行を進めています。

まとめ

3DES(Triple DES)は、DESの脆弱性を補完するために開発された暗号方式で、3回のDES処理を施すことで暗号強度を高めています。長年にわたり金融機関や決済システムなどで利用されてきましたが、処理速度が遅いことやAESなどのより安全な暗号方式の登場により、現在では徐々に非推奨化されています。


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