TA|サイバーセキュリティ.com

TA

TA(Threat Actor)とは、サイバー攻撃や不正行為を行う「脅威主体」を指し、攻撃を実行する個人やグループ、さらには特定の国家に属する組織も含まれます。Threat Actorは、企業や個人、政府機関のシステムに侵入して情報を盗んだり、システムを破壊したり、金銭を要求するなど、さまざまな目的で攻撃活動を行います。

Threat Actorは、技術力や攻撃手法、目的によって異なる分類がされることが多く、特に高度な技術を持つ国家支援グループから、金銭を目的とする犯罪者集団、政治的な意図を持つハクティビスト(ハッカー+アクティビスト)など、さまざまなタイプが存在します。

Threat Actorの主な種類

Threat Actorには、その動機や目的に基づき、以下のような分類が行われます:

  1. 国家支援型(State-Sponsored Actors)
    国家が直接的または間接的に支援しているThreat Actorで、特定の国の政府や軍が支援することが多いです。こうしたグループは、他国の政府機関や重要インフラ、企業を標的にスパイ活動や破壊工作を行うことがあり、高度な技術やリソースを備えています。APT(Advanced Persistent Threat)と呼ばれる長期的な攻撃を行うことが特徴です。
  2. サイバー犯罪者(Cyber Criminals)
    金銭的利益を目的とするThreat Actorで、個人や企業を狙った詐欺やランサムウェア攻撃、金融詐欺などを行います。金銭を直接盗むだけでなく、情報を暗号化して身代金を要求するなど、さまざまな手法で利益を上げようとします。TA505やFIN7などのサイバー犯罪グループがこのカテゴリに属します。
  3. ハクティビスト(Hacktivists)
    政治的や社会的な目的でサイバー攻撃を行うグループや個人で、特定の団体や政策に抗議するために、政府機関や企業に攻撃を仕掛けることが多いです。主な攻撃方法はDDoS攻撃やウェブサイトの改ざん、情報の暴露などで、Anonymous(アノニマス)などの団体が代表例です。
  4. インサイダー(Insiders)
    組織内部に所属する人物によって行われる攻撃で、機密情報を盗んだり、システムに損害を与えたりする行為です。インサイダーには、解雇された元従業員や不満を持つ従業員、さらにはスパイなどが含まれます。内部の知識やアクセス権限を悪用するため、防御が難しいタイプのThreat Actorです。
  5. ハクティビスト型・サイバーテロリスト
    テロリストの一環として、政治的・宗教的な動機でサイバー攻撃を行う個人やグループです。政府機関や公共インフラへの破壊的な攻撃を仕掛け、社会の混乱や不安を煽ることを目的としています。

Threat Actorの攻撃手法

Threat Actorが行う攻撃手法は、組織の規模や能力、目的に応じて多岐にわたります。以下は一般的な攻撃手法の一部です。

  1. フィッシング
    メールやメッセージを用いてユーザーをだまし、マルウェア感染や情報窃取を狙う手法で、ランサムウェアやマルウェアの拡散にも利用されます。
  2. ランサムウェア攻撃
    コンピュータやネットワークをロックしたり、データを暗号化してアクセス不能にする攻撃で、復旧のために身代金を要求するものです。
  3. APT攻撃(Advanced Persistent Threat)
    長期間にわたり対象の組織に潜伏し、機密情報を継続的に収集する高度な攻撃です。ステルス性が高く、検出されにくい特徴を持っています。
  4. DDoS攻撃
    大量のトラフィックを送信し、ターゲットのサーバーやネットワークをダウンさせる攻撃です。サービスの停止や業務の混乱を狙う目的で行われます。
  5. ゼロデイ攻撃
    未発見の脆弱性(ゼロデイ脆弱性)を突いた攻撃で、製品やシステムのパッチが適用される前に行われます。ゼロデイ攻撃は防御が難しく、特にAPTグループで使用されることが多いです。

Threat Actorの活動例

  1. TA505
    金融業界を狙ったフィッシングやランサムウェア攻撃で知られるグループで、主に金銭目的のサイバー犯罪を行っています。
  2. APT29(Cozy Bear)
    ロシア政府と関連があるとされるグループで、主に外交機関や政府機関をターゲットに、情報収集を目的としたサイバー攻撃を行っています。
  3. Anonymous(アノニマス)
    ハクティビストの代表的存在で、政治や社会問題に抗議するために、政府機関や企業を標的にサイバー攻撃を仕掛けます。DDoS攻撃や情報暴露が主な手法です。
  4. FIN7
    金融詐欺やクレジットカード情報の盗難を目的としたサイバー犯罪グループで、金融機関や小売業を狙い、POSマルウェアを使用するなどの手法で利益を得ています。

Threat Actorの脅威から守るための対策

Threat Actorによる攻撃から組織を守るためには、以下の対策が有効です:

  1. メールセキュリティの強化
    フィッシングメールを検知・ブロックするためのフィルタリングやセキュリティツールの導入を行い、社員教育を通じてリンクや添付ファイルの安全性を確保します。
  2. エンドポイントセキュリティの導入
    アンチウイルスやEDR(Endpoint Detection and Response)を導入し、感染の兆候や不正な動作を早期に検知・対処します。
  3. 多要素認証の実装
    システムやネットワークへのログインに二要素認証(2FA)を取り入れることで、パスワードが漏洩しても侵入を防ぎます。
  4. セキュリティパッチの適用
    ソフトウェアやシステムの脆弱性を狙う攻撃を防ぐために、定期的にパッチやアップデートを行い、ゼロデイ攻撃のリスクを軽減します。
  5. インシデント対応計画の策定
    インシデントが発生した際に迅速に対応するため、インシデント対応の手順やチームの整備を行い、被害拡大を防ぐ備えを整えます。

まとめ

Threat Actor(TA)は、サイバー攻撃を行う脅威主体であり、その目的や手法によって国家支援型、サイバー犯罪者、ハクティビスト、インサイダーといった分類がされます。TAによる攻撃は年々高度化し、APT攻撃やゼロデイ攻撃など組織にとって脅威となる手法も増えてきています。組織としては、多要素認証の導入、メールセキュリティ、インシデント対応計画の策定といった対策を通じて、TAの脅威に対抗するための防御体制を整えることが不可欠です。


SNSでもご購読できます。