ネットワーク・スキャン|サイバーセキュリティ.com

ネットワーク・スキャン

ネットワーク・スキャン(Network Scanning)は、ネットワーク内のデバイスやサービスの情報を収集するための手法です。スキャンを行うことで、ネットワークに接続されているデバイスのIPアドレス、ポート、使用されているプロトコル、OSの種類などを特定でき、ネットワークのセキュリティ対策や資産管理に役立ちます。しかし、ネットワーク・スキャンは悪意のある攻撃者にも利用され、攻撃の準備段階でネットワークの脆弱性を調査する目的にも使われるため、適切な監視と対策が必要です。

ネットワーク・スキャンは、ホストの発見、ポートのスキャン、サービスの確認といった段階を経て、ターゲットとなるシステムの状態を調査します。特に、セキュリティの観点では、外部からの不正なスキャンを検出し、ネットワークの安全性を保つことが重要です。

ネットワーク・スキャンの種類

ネットワーク・スキャンにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的や調査対象に応じて使用されます。以下に代表的なものを紹介します。

1. ポートスキャン

ポートスキャンは、ネットワーク内の特定のデバイスで開いているポートを確認するためのスキャンです。ポートはデバイス内のサービスやアプリケーションにアクセスするための入り口であり、攻撃者が悪用できるポートが開いているかを調査する目的で使われます。代表的なポートスキャンの手法には以下のようなものがあります。

  • TCPスキャン
    TCP接続を利用して、ターゲットが特定のポートを開いているかを確認する手法です。3ウェイハンドシェイクの仕組みを利用し、ターゲットポートが応答するかどうかで開閉状況を判断します。
  • SYNスキャン
    通常のTCPスキャンに比べて高速で、ステルス性が高いスキャンです。3ウェイハンドシェイクの最初の段階(SYNパケット送信)で確認を行い、フルコネクションを確立しないため、検出されにくくなっています。
  • UDPスキャン
    UDPポートの状態を確認するためのスキャンで、DNSやSNMP、DHCPなどのUDPプロトコルが使用するポートに対して行われます。TCPよりも結果の確証が難しいため、複数回の試行が必要です。

2. ホストスキャン(IPスキャン)

ホストスキャンは、ネットワーク上に存在するデバイス(ホスト)を検出するためのスキャンで、主にIPアドレスが有効かどうかを調べます。これにより、ネットワークに存在するアクティブなデバイスを特定できます。

  • Pingスキャン
    ICMPプロトコルのエコーリクエスト(Ping)を使用して、ターゲットのホストが応答するかを確認する手法です。応答がある場合、そのホストはネットワーク上で稼働中と判断されます。
  • ARPスキャン
    ローカルネットワーク内で使用されるスキャン方法で、ARPリクエストを送信し、ターゲットのIPアドレスとMACアドレスの関連性を確認します。LAN内で効率的にホストを特定する際に利用されます。

3. バナーグラビング

バナーグラビングは、サーバーやサービスに接続して、起動しているサービスの種類やバージョン情報を取得する手法です。たとえば、ウェブサーバーがApacheかNginxか、バージョンがどのようなものかを確認できます。バージョン情報を知ることで、既知の脆弱性の有無も推測可能です。

4. トポロジースキャン

トポロジースキャンは、ネットワーク内のデバイス間の接続関係や、ルータやスイッチの位置を把握するために行うスキャンです。これにより、ネットワーク構造を可視化し、効率的なセキュリティ対策やトラブルシューティングを行いやすくなります。

ネットワーク・スキャンの活用目的

ネットワーク・スキャンは、セキュリティ対策のために必要な情報を収集したり、ネットワーク資産を把握するために役立ちます。一方で、悪意のある目的にも利用される場合があるため、用途に応じた対応が重要です。

1. ネットワーク監査とセキュリティ診断

企業や組織では、ネットワーク上にあるデバイスやサービスの状況を把握し、セキュリティリスクを評価するためにスキャンを行います。ネットワーク・スキャンを定期的に実施することで、脆弱なポートの特定や不要なサービスの停止が可能です。

2. ネットワーク資産の管理

スキャンによってネットワーク上のデバイスやIPアドレスの使用状況が把握できるため、IT資産の効率的な管理が行えます。新しいデバイスが追加された場合の検知や、未使用のIPアドレスの確認にも活用されます。

3. トラブルシューティング

ネットワーク・スキャンは、ネットワークの接続不良や障害の原因を特定するためにも用いられます。どのデバイスがネットワークに正常に接続されていないか、またはどのルートに問題があるかをスキャンで把握できます。

4. 攻撃準備としての悪用

ネットワーク・スキャンは、不正アクセスを行う前の情報収集として攻撃者に悪用されることもあります。スキャンを通じてターゲットのデバイスやサービス、開放されているポートの状況を把握し、脆弱性を突く準備段階として利用されるため、監視や対策が必要です。

ネットワーク・スキャンのツール

ネットワーク・スキャンにはさまざまなツールが存在し、管理者やセキュリティ専門家がスキャンを行う際に利用されます。

  • Nmap
    最も広く使われるオープンソースのスキャンツールで、ポートスキャンやOSの検出、バナーグラビングなど多機能なスキャンが可能です。ネットワークの監査やセキュリティ診断で利用されています。
  • Angry IP Scanner
    シンプルで使いやすいIPスキャンツールで、IPアドレス範囲を指定してスキャンを行い、ホストの応答状況を確認できます。主にホストの検出や資産管理に使用されます。
  • Wireshark
    ネットワークパケットのキャプチャやプロトコルの分析を行うためのツールです。ネットワーク・スキャン自体というよりも、スキャン後のパケット解析やトラブルシューティングに活用されます。
  • Advanced IP Scanner
    ネットワーク内のIPアドレス、デバイス、サービス情報を迅速に取得できるツールで、特に資産管理に役立ちます。直感的な操作が可能なため、管理者にもよく使われます。

ネットワーク・スキャンへの対策

ネットワーク・スキャンを検知・防御するためには、以下の対策が効果的です。

1. ファイアウォール設定の強化

ファイアウォールを用いて、不要なポートやサービスへのアクセスをブロックすることで、外部からのスキャンを防ぎます。また、許可するIPアドレスの範囲を限定することで、スキャンリクエスト自体を遮断します。

2. IDS/IPSの導入

侵入検知システム(IDS)や侵入防止システム(IPS)を導入することで、ネットワーク・スキャンの兆候を早期に検出・対処できます。これにより、不正なスキャンをリアルタイムで検知し、アラートを出すことが可能です。

3. ポート管理と不要サービスの無効化

使用していないポートやサービスは無効化し、スキャンの対象を減らすことで、脆弱性を低減します。例えば、不要なネットワークプロトコルやファイル共有機能の停止も有効です。

4. ログの監視

ネットワーク・スキャンの兆候はログに記録されるため、ログを監視して異常なアクセスや接続試行を確認します。ログに基づくアラート設定を行い、早期に不審なスキャンを把握できるようにします。

5. ネットワークセグメントの分離

重要なデータや機密情報を含むネットワークセグメントは、一般的なセグメントから分離してアクセス制御を行います。これにより、外部からのスキャンや攻撃による影響を最小限に抑えられます。

まとめ

ネットワーク・スキャンは、ネットワーク環境の把握やセキュリティ診断、資産管理において重要な手法ですが、攻撃者にとっても事前の情報収集として利用されるリスクがあります。適切なファイアウォールやIDS/IPSの導入、ポート管理の徹底によって、スキャンを検知・防御し、セキュリティを強化することが大切です。ネットワーク管理者は、ネットワーク・スキャンのメリットとリスクの両方を理解し、定期的なスキャンと監視を行うことで、ネットワークの安全性を維持しましょう。


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