ゼロデイ攻撃|サイバーセキュリティ.com

ゼロデイ攻撃

ゼロデイ攻撃(Zero-Day Attack) とは、ソフトウェアやシステムに存在する「ゼロデイ脆弱性(Zero-Day Vulnerability)」を狙ったサイバー攻撃です。ゼロデイ脆弱性とは、開発者やソフトウェアの提供元がその脆弱性の存在に気づいていない、もしくは対策を講じていない状態のセキュリティホールや欠陥を指します。

このため、ゼロデイ脆弱性が発見されてからパッチが適用されるまでの「ゼロ日間」、つまり脆弱性が修正される前に攻撃が仕掛けられ、標的が防御する手段がほとんどない状態で成立するため、被害が拡大しやすいことが特徴です。

ゼロデイ攻撃の仕組み

ゼロデイ攻撃は、以下のような流れで実行されます。

  1. ゼロデイ脆弱性の発見
    攻撃者がソフトウェアやアプリケーションの未知の脆弱性を発見します。この脆弱性は通常、攻撃者のみが把握しており、提供元やユーザーには知られていないため、脆弱性の悪用が発覚しにくい状態にあります。
  2. エクスプロイトの開発
    攻撃者は、発見した脆弱性を利用してソフトウェアやシステムに侵入するためのエクスプロイトコード(不正アクセスを実現するためのコード)を開発します。エクスプロイトは、特定の条件下で脆弱性を起動させ、悪意あるコードを実行できるよう設計されます。
  3. 攻撃の実行
    開発したエクスプロイトを使い、標的のシステムに侵入します。ゼロデイ攻撃は、フィッシングメールや不正なWebサイトへの誘導、添付ファイルやメッセージなどを通じて行われることが一般的です。攻撃が成功すると、マルウェアのインストールやデータの窃取、システムの完全制御などが可能になります。
  4. 脆弱性の発見と修正
    ゼロデイ脆弱性が一般に認知され、ソフトウェアの提供元が修正パッチを配布します。しかし、修正されるまでに多くのユーザーが影響を受ける場合があります。

ゼロデイ攻撃の手口

1. フィッシングメールによる感染

攻撃者がフィッシングメールにエクスプロイトを仕込み、メール内のリンクや添付ファイルを開かせて、ゼロデイ脆弱性を通じてシステムに侵入します。

2. マルウェアを利用した攻撃

ゼロデイ脆弱性を悪用するマルウェア(ゼロデイマルウェア)が、ユーザーの気づかないうちにシステムに侵入し、不正なプログラムが実行されるケースです。

3. 不正なWebサイトへの誘導

ユーザーが不正なWebサイトにアクセスするよう仕向け、サイト内でエクスプロイトコードを自動実行させることで、デバイスに攻撃を仕掛けます。

4. ドキュメントファイルを悪用した攻撃

ゼロデイ脆弱性のあるWordやPDFファイルなどにエクスプロイトコードを埋め込み、ドキュメントを開いた際にマルウェアを起動させる手法です。

ゼロデイ攻撃の対策

ゼロデイ攻撃は防御が難しい一方で、被害を軽減するための対策は存在します。

1. ソフトウェアとシステムの定期的な更新

ソフトウェアやOS、アプリケーションは常に最新の状態に保ち、提供元からのセキュリティパッチが公開された場合、即座に適用します。定期的な更新はゼロデイ脆弱性への対策には欠かせません。

2. アンチウイルスソフトやEDRの導入

最新の脅威データベースを備えたアンチウイルスソフトやEDR(Endpoint Detection and Response)を利用することで、ゼロデイ攻撃に伴うマルウェア感染リスクを低減できます。

3. ファイアウォールとIDS/IPSの設定

ネットワークの境界で不正な通信を検知し、異常な通信が発生した際に遮断するファイアウォールや侵入検知・防止システム(IDS/IPS)を設定し、セキュリティを強化します。

4. サンドボックスの利用

サンドボックスは、安全な隔離環境で疑わしいファイルやリンクを実行し、ゼロデイ脆弱性を利用した攻撃を防止します。メールの添付ファイルやリンクは、サンドボックスで確認することで安全性を確保できます。

5. 多層防御(Defense in Depth)の実践

複数のセキュリティ対策を多層的に実装し、万が一一つの防御が突破された場合でも他の対策でリスクを最小限に抑えます。これは、ゼロデイ攻撃に対しても有効です。

6. セキュリティ意識の向上

従業員やユーザーに対して、フィッシングや不正なリンクに対する警戒心を高めるための教育やトレーニングを実施します。特に不審なメールやリンクには警戒し、不必要にファイルを開かない習慣をつけることが重要です。

ゼロデイ攻撃の事例

1. Stuxnet(スタックスネット)

スタックスネットは、工業制御システム(ICS)を標的としたゼロデイ攻撃の例です。主にイランの原子力施設を狙い、システムに重大なダメージを与えることを目的としました。スタックスネットには、複数のゼロデイ脆弱性が利用されており、工業分野のサイバー攻撃リスクの高まりを示しました。

2. SolarWindsのサプライチェーン攻撃

2020年、SolarWinds社のソフトウェア「Orion」にゼロデイ脆弱性を含むマルウェアが組み込まれ、米国政府機関や企業に対するサプライチェーン攻撃が行われました。広範な被害をもたらし、サプライチェーン全体のセキュリティを強化する必要性が浮き彫りになりました。

3. Adobe Flash Playerのゼロデイ攻撃

Adobe Flash Playerは頻繁にゼロデイ攻撃の対象とされ、脆弱性が悪用されていました。このため、Adobe社はFlash Playerのサポートを終了し、ゼロデイ攻撃のリスク低減を図りました。

まとめ

ゼロデイ攻撃は、開発者も把握していないセキュリティホールを突く高度なサイバー攻撃であり、ユーザーやシステム管理者には防御の準備がないため大きな被害をもたらします。最新のセキュリティパッチの適用や多層防御、サンドボックスの活用といった対策がゼロデイ攻撃への有効な防御策として推奨されます。また、サイバー脅威は日々進化しているため、セキュリティ対策の継続的な見直しやアップデートが重要です。


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