サーバーサイド・テンプレートインジェクション|サイバーセキュリティ.com

サーバーサイド・テンプレートインジェクション

サーバーサイド・テンプレートインジェクション(Server-Side Template Injection、SSTI)とは、Webアプリケーションで使用されるテンプレートエンジンの脆弱性を悪用して、不正なコードをサーバー側で実行させる攻撃手法です。SSTIが発生すると、攻撃者はテンプレートエンジンを介してサーバーで任意のコードを実行できるため、機密情報の漏洩やサーバーの完全な制御権奪取など、深刻な被害が発生する可能性があります。

一般的にSSTIは、ユーザー入力をテンプレートエンジンに直接渡しているケースで発生しやすく、テンプレートエンジンがその入力を処理する際に、悪意あるコードを実行してしまいます。代表的なテンプレートエンジンには、Jinja2(Python)、Thymeleaf(Java)、FreemarkerSmarty(PHP)などが含まれ、これらのテンプレートエンジンでSSTIのリスクが問題視されています。

サーバーサイド・テンプレートインジェクションの仕組み

SSTIは、以下のような手順で行われます:

  1. ユーザー入力をテンプレートに直接組み込む
    Webアプリケーションで、ユーザーが入力したデータがそのままテンプレートエンジンに渡され、HTMLや他のコンテンツとしてレンダリングされるケースがあります。
  2. テンプレートエンジンによるコード実行
    攻撃者がテンプレートエンジンに対して不正な構文やコードを入力すると、そのコードがテンプレートエンジンによって処理され、サーバー側で実行されてしまいます。
  3. 任意のコードの実行
    攻撃者はこの仕組みを利用して、サーバー上でPythonやJavaScript、PHPなどのコードを実行し、システムの制御やデータの漏洩、ファイル操作などを行います。
  4. サーバーの制御権の奪取
    任意コードが実行されると、攻撃者はサーバー内のファイルやデータベースにアクセスしたり、他のシステムを攻撃するための拠点として悪用したりします。

サーバーサイド・テンプレートインジェクションの例

SSTIの典型的な例として、Jinja2を使用するPythonのWebアプリケーションにおけるケースを見てみます:

1. Jinja2でのSSTI

Jinja2はPythonのテンプレートエンジンで、ユーザーが入力した内容を直接テンプレートに渡すと、SSTIが発生する可能性があります。例えば、以下のようにユーザー入力を直接テンプレートに組み込む場合を考えます:

from flask import Flask, render_template_string, request

app = Flask(__name__)

@app.route("/greet", methods=["POST"])
def greet():
    name = request.form.get("name")  # ユーザー入力を取得
    template = f"Hello, {name}!"  # 入力をテンプレートに組み込む
    return render_template_string(template)  # テンプレートをレンダリング

上記のコードは、ユーザーの名前を取得し、そのままテンプレートに渡しています。このとき、攻撃者が「{{7*7}}」のような入力を渡すと、テンプレートエンジンはこれを計算し、「Hello, 49!」と表示してしまいます。さらに、悪意あるコード(例:{{ config['SECRET_KEY'] }})を埋め込まれると、サーバーの環境情報や機密データが漏洩する可能性があります。

2. Smarty(PHP)でのSSTI

PHPのテンプレートエンジンSmartyにおいても同様の脆弱性が存在します。例えば、以下のようにユーザー入力を直接テンプレートに含めるケースです。

$smarty->assign('username', $_POST['username']);
$smarty->display('hello.tpl');

この場合、攻撃者が「{$smarty.server.SCRIPT_NAME}」などのコードを入力すると、Smartyエンジンがそのまま処理し、PHPファイルの情報が漏洩する可能性があります。

サーバーサイド・テンプレートインジェクションのリスクと影響

SSTIが発生すると、以下のようなリスクや影響が考えられます:

  1. 機密情報の漏洩
    攻撃者が任意のコードを実行できると、サーバー上にある環境変数や設定ファイルの機密情報(APIキー、データベース認証情報など)が漏洩する可能性があります。
  2. ファイル操作や不正アクセス
    攻撃者は、ファイル操作コードを利用してサーバーのファイルを取得したり、データベースに不正アクセスを行ったりすることができます。
  3. ランサムウェアの実行やシステムの乗っ取り
    SSTIを悪用してサーバー上でランサムウェアやマルウェアを実行することで、サーバーの完全な制御権を奪取し、さらに攻撃を拡大することが可能です。
  4. サービス妨害攻撃(DoS)
    攻撃者が計算量の多い処理をサーバー側で実行すると、サーバーが過負荷状態に陥り、サービスの停止や遅延が発生することがあります。

サーバーサイド・テンプレートインジェクションに対する対策

SSTIを防ぐためには、以下のような対策が効果的です。

  1. ユーザー入力をテンプレートに直接渡さない
    ユーザーからの入力をテンプレートに直接渡すのではなく、事前に無害化(エスケープ)処理を行います。例えば、HTMLエンコードを行うことで、不正なテンプレート構文がそのまま表示されるようにします。
  2. テンプレートエンジンを安全に設定する
    使用するテンプレートエンジンの設定を見直し、不正な構文が実行されないように設定を強化します。Jinja2であれば、sandboxモードを有効にするなどの対策があります。
  3. ホワイトリストによるフィルタリング
    テンプレートに含めるデータを事前にホワイトリストで制御し、許可された文字列やパターンのみをテンプレートに渡すようにします。
  4. 定期的なセキュリティ診断とテスト
    アプリケーション開発の段階から、SSTIを含むセキュリティテストやペネトレーションテストを実施し、脆弱性の有無を確認します。OWASP ZAPやBurp Suiteといったツールでの自動診断も効果的です。
  5. 安全なテンプレートエンジンの選択
    セキュリティ機能が充実したテンプレートエンジンを使用することで、脆弱性のリスクを低減できます。たとえば、テンプレートエンジンによっては、コード実行を無効化するオプションや、安全なデフォルト設定が提供されています。

まとめ

サーバーサイド・テンプレートインジェクション(SSTI)は、テンプレートエンジンの脆弱性を突くことで、サーバー側で任意のコードを実行できる非常に危険な攻撃手法です。ユーザー入力がテンプレートエンジンに直接渡されると、機密情報の漏洩やシステム乗っ取りなど、重大な被害が発生する可能性があります。SSTIへの対策としては、ユーザー入力の無害化、テンプレートエンジンの安全設定、セキュリティテストの実施などが効果的です。安全なテンプレート処理を徹底することで、SSTIのリスクを減らし、アプリケーションのセキュリティを高めることができます。


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