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IAST

IAST(Interactive Application Security Testing)**は、アプリケーションのセキュリティをリアルタイムでテストし、脆弱性を検出する手法の一つです。IASTは、アプリケーションが実行中の環境で動作し、動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)と静的アプリケーションセキュリティテスト(SAST)の利点を組み合わせたものと考えられています。

IASTは通常、アプリケーションサーバーにエージェントをインストールして動作し、コード実行時の挙動を監視することで脆弱性を特定します。これにより、開発プロセスの早い段階で問題を検出し修正できるため、効率的なセキュリティ強化が可能です。

IASTの仕組み

IASTは、アプリケーションの実行中に以下の要素を分析します。

  1. 実行時のコード監視
    • アプリケーションの動作中に、内部コードの挙動をモニタリング。
    • 例: メソッドの呼び出し、データフローの追跡。
  2. リアルタイムでの脆弱性検出
    • 実際のユーザー操作やテストスクリプトの実行中に、脆弱性をリアルタイムで検出。
    • SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)などの脆弱性を即時に特定。
  3. コンテキスト分析
    • アプリケーションの構造やコンポーネント間の関係を理解し、脆弱性がどのように影響を及ぼすかを分析。
  4. 統合性
    • CI/CDパイプラインや既存の開発環境に容易に統合可能。

IASTの利点

  1. リアルタイム性
    • アプリケーション実行中に即座に脆弱性を検出できるため、問題の早期発見と修正が可能。
  2. 高精度
    • アプリケーションの実行環境を利用しているため、誤検知(False Positive)が少なく、正確性が向上。
  3. コンテキストの把握
    • アプリケーションの実行時の状況に基づいて脆弱性を分析するため、影響範囲を正確に理解。
  4. 開発プロセスへの統合
    • 開発環境やCI/CDパイプラインに統合することで、セキュリティテストが開発の自然な一部となる。
  5. 効率的なテスト
    • 静的解析(SAST)の深さと動的解析(DAST)のカバレッジを兼ね備えた効果的なテスト手法。

IASTの主な使用例

  1. 開発中の脆弱性検出
    • コードを書いている段階で、リアルタイムにセキュリティの問題を特定。
  2. テスト中のセキュリティ検証
    • QAやユーザーテスト中に、実際のアプリケーション使用状況を模したセキュリティテストを実行。
  3. CI/CDパイプラインへの組み込み
    • 自動化されたセキュリティチェックをCI/CDプロセスの一部として統合。
  4. 運用環境でのモニタリング
    • 実稼働システムでのリアルタイムの脆弱性検知やセキュリティ監視。

IASTの対象とする脆弱性

IASTは、以下のような一般的なアプリケーション脆弱性を検出します。

  1. SQLインジェクション
    • データベースクエリに不正なコードが挿入される脆弱性。
  2. クロスサイトスクリプティング(XSS)
    • 悪意のあるスクリプトがブラウザで実行される脆弱性。
  3. セッション管理の欠陥
    • セッション固定やトークンの漏洩による問題。
  4. セキュリティミスコンフィギュレーション
    • 不適切なサーバーやデータベースの設定。
  5. データ漏洩
    • 機密情報が不適切に公開される問題。

IASTと他のセキュリティテスト手法の比較

特徴 IAST SAST DAST
実行環境 実行時(リアルタイム) コード静的解析 実行環境外部からのテスト
精度 高い 誤検知が多い 誤検知が少ないがカバレッジに限界
統合性 開発・運用プロセスに容易に統合可能 コードレビューに統合可能 テスト後のプロセスに統合
主な対象 アプリケーション全体 ソースコード 実行中のアプリケーション
適用範囲 コードと実行環境 ソースコードのみに限定 実行環境の外部的な脆弱性

IASTの課題

  1. エージェントの導入
    • エージェント型の実装には環境ごとのカスタマイズが必要で、初期セットアップにコストがかかる場合がある。
  2. パフォーマンスへの影響
    • 実行時にコードを監視するため、アプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性。
  3. 対応環境の制限
    • 対応するプログラミング言語やフレームワークに制限がある場合がある。
  4. 深い技術的知識の必要性
    • 効果的な運用には、セキュリティやテストに関する専門知識が求められる。

IASTの導入時のポイント

  1. 対応環境の確認
    • 使用しているプログラミング言語、フレームワーク、開発ツールにIASTが対応しているか確認。
  2. CI/CDとの統合
    • IASTをCI/CDプロセスに統合し、自動化されたセキュリティチェックを導入。
  3. パフォーマンスモニタリング
    • テスト中のアプリケーションパフォーマンスを監視し、必要に応じて設定を調整。
  4. セキュリティ教育
    • 開発チームにIASTの使用方法とセキュリティベストプラクティスをトレーニング。

まとめ

IAST(Interactive Application Security Testing)は、実行中のアプリケーションの脆弱性をリアルタイムで検出する強力な手法です。SASTやDASTの弱点を補完し、開発から運用までのプロセス全体でセキュリティを向上させることができます。

ただし、初期導入のコストや運用の複雑さを考慮し、CI/CDへの統合やパフォーマンスへの影響を最小限に抑える計画を立てることが重要です。IASTは、現代の高速な開発環境において、セキュリティを自動化し、効率化するための重要なツールとして注目されています。


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