SQLインジェクション|サイバーセキュリティ.com

SQLインジェクション

SQLインジェクション(SQL Injection) とは、データベースを使用するアプリケーションに対して、悪意のあるSQLコードを注入することで、データの不正取得や改ざん、削除などを行うサイバー攻撃手法です。この攻撃は、アプリケーションがユーザーからの入力を適切に検証せずにSQLクエリに組み込む場合に発生します。SQLインジェクション攻撃を受けた場合、攻撃者は認証を回避し、データベースの機密情報を盗み出す、データを変更する、さらにはシステムに深刻な損害を与える可能性があります。

SQLインジェクションは、Webアプリケーションに対する一般的で深刻な脅威の一つであり、適切な対策が講じられていない場合には、システム全体が攻撃者の手に渡るリスクを抱えることになります。

SQLインジェクションの仕組み

SQLインジェクションは、ユーザーが入力するデータがSQLクエリの一部としてそのまま扱われる場合に発生します。以下はその代表的な例です。

1. 基本的な例

たとえば、以下のようなSQLクエリを想定します:

SELECT * FROM users WHERE username = '入力されたユーザー名' AND password = '入力されたパスワード';

このクエリは、ユーザーが入力した「ユーザー名」と「パスワード」を元にデータベースを照会するものです。しかし、攻撃者が「’ OR ‘1’=’1’」といった入力を行った場合、クエリは次のように変わります:

SELECT * FROM users WHERE username = '' OR '1'='1' AND password = '';

このクエリは、'1'='1' という常に真になる条件によって全てのレコードが返される可能性があります。結果として、攻撃者は認証をスキップし、不正なアクセスを行うことができます。

2. データベース情報の取得

SQLインジェクションは、データベースの情報を取得するためにも利用される可能性があります。例えば、次のようなクエリを利用することで、データベース内のテーブル名やカラム情報を取得できる場合があります:

' UNION SELECT table_name FROM information_schema.tables; --

これにより、データベース構造を把握し、さらなる攻撃を行うことが可能になります。

SQLインジェクションの影響

  • 認証の回避: 攻撃者は、アプリケーションの認証メカニズムをバイパスし、不正にシステムにアクセスすることができます。
  • データの改ざんや削除: 攻撃者は、データベース内のデータを変更、削除することで、システムの正常な動作を妨げることが可能です。
  • 機密情報の漏洩: データベース内のユーザー情報やパスワード、クレジットカード情報などの機密データが漏洩するリスクがあります。
  • システムの破壊: SQLインジェクションを利用してシステム全体を操作し、アプリケーションの機能を停止させたり、サービスを破壊することも可能です。

SQLインジェクションの対策

1. プレースホルダーとバインド変数の使用

SQLインジェクションの対策として、ユーザー入力を直接SQLクエリに組み込むのではなく、プレースホルダーとバインド変数を使用することが推奨されます。これにより、ユーザー入力がSQLコードとして解釈されることを防ぎます。例:

# Pythonの例
cursor.execute("SELECT * FROM users WHERE username = ? AND password = ?", (username, password))

2. 入力のサニタイズと検証

ユーザーからの入力を適切にサニタイズし、不正な文字やコードが含まれていないかをチェックすることで、SQLインジェクションのリスクを軽減できます。入力の長さや形式を検証し、予期しない入力を排除することも重要です。

3. 最小権限の原則の適用

データベースのユーザー権限を最小限に設定し、不要な権限を付与しないようにします。これにより、攻撃者がデータベースに不正にアクセスしても、影響を最小限に抑えることができます。

4. Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の導入

WAFを利用することで、SQLインジェクション攻撃を検出し、ブロックすることが可能です。WAFは、Webトラフィックを監視し、不審なリクエストをフィルタリングすることで、攻撃を防ぎます。

5. 定期的なセキュリティテスト

セキュリティテストや脆弱性スキャンを定期的に実施することで、SQLインジェクションなどの脆弱性がないかを確認し、早期に対策を講じることができます。

まとめ

SQLインジェクションは、Webアプリケーションに対する非常に深刻な脅威であり、適切な対策を講じないとデータベースの機密情報の漏洩やシステム全体の損害を引き起こす可能性があります。プレースホルダーや入力のサニタイズ、権限管理、WAFの導入など、包括的なセキュリティ対策を行うことで、SQLインジェクションのリスクを軽減し、システムの安全性を確保することが求められます。


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