wgetは、Unix系OS(LinuxやmacOSなど)で広く利用されるコマンドラインツールで、インターネット上のWebページやファイルをダウンロードするために使用されます。wgetは、HTTP、HTTPS、FTPなどのプロトコルをサポートし、ファイルの自動ダウンロードや大規模なWebサイトの一括ダウンロード、リモートサーバーのデータ取得など、多岐にわたる用途で利用されます。また、コマンドラインから操作できるため、スクリプトや自動化システムに組み込むことが容易です。
wgetの名前は、「World Wide Web」と「Get」を組み合わせたもので、もともとはGNUプロジェクトの一部として開発されました。ネットワークの接続状態に依存せず、途中で通信が途絶えても再接続してダウンロードを続行する「レジューム機能」を備えており、堅牢なツールとして知られています。
wgetの主な機能
- 単一ファイルのダウンロード
指定されたURLからファイルをダウンロードするシンプルなコマンドで、ファイルの取得に用いられます。 - 再帰的ダウンロード
特定のWebサイト全体やディレクトリ構造を再帰的にたどり、一括でダウンロードできます。リンクをたどって複数のページを収集できるため、オフラインでの閲覧用にサイトを保存する際に便利です。 - ダウンロードの再開
通信エラーやネットワーク切断が発生しても、中断した位置からダウンロードを再開できます。長時間のダウンロード時に便利です。 - ユーザーエージェントの設定
--user-agent
オプションを使って、リクエスト時のユーザーエージェントをカスタマイズできます。サイトによっては特定のユーザーエージェントに対してダウンロードを制限しているため、アクセス対策に利用可能です。 - 認証のサポート
ユーザー名とパスワードが必要なサイトに対しても、基本認証やクッキー情報を使ってアクセスできます。
wgetの基本的な使い方
1. 単一ファイルのダウンロード
単純に指定URLのファイルをダウンロードするには、次のコマンドを使用します。
wget https://example.com/samplefile.txt
このコマンドは、指定URLのファイル(samplefile.txt)をカレントディレクトリに保存します。
2. ファイルを別名で保存
ダウンロードしたファイルの名前を変更して保存したい場合、-O
オプションを使用します。
wget -O newname.txt https://example.com/samplefile.txt
3. 再帰的ダウンロード
Webサイト全体をダウンロードするには、-r
オプション(再帰的ダウンロード)を使用します。
wget -r https://example.com/
このコマンドで、example.com
のWebサイト全体をディレクトリ構造ごとにダウンロードします。
4. 中断したダウンロードの再開
ダウンロードが途中で中断された場合に再開するには、-c
オプションを使用します。
wget -c https://example.com/largefile.zip
このオプションを使用すると、既にダウンロードされた部分から続きが再開されます。
5. 制限速度を設定したダウンロード
帯域幅を抑えてダウンロードするには、--limit-rate
オプションを使用します。
wget --limit-rate=100k https://example.com/largefile.zip
この例では、ダウンロード速度が100 KB/sに制限されます。
6. ユーザーエージェントを変更してダウンロード
Webサーバーに対して、異なるユーザーエージェントでアクセスするには、--user-agent
オプションを使います。
wget --user-agent="Mozilla/5.0" https://example.com/samplefile.txt
7. クッキー情報を使用してダウンロード
ログイン状態などを維持するため、クッキー情報を利用するには、次のようにクッキーファイルを指定します。
wget --load-cookies=cookies.txt https://example.com/protectedfile.txt
8. 特定のファイルタイプだけをダウンロード
特定のファイル拡張子(例:画像ファイルなど)だけをダウンロードする場合、-A
オプションを使用します。
wget -r -A jpg,png,gif https://example.com/
この例では、画像ファイルのみがダウンロードされます。
wgetのメリット
- 堅牢なダウンロード:エラー発生時の自動再試行やダウンロードの再開に対応しており、大量のファイルをダウンロードする際にも安定しています。
- 軽量で効率的:コマンドラインからの操作が可能で、スクリプトや自動化タスクに容易に組み込むことができます。
- 再帰的なダウンロード:サイト全体のデータ取得が可能なため、データ収集やオフラインでのコンテンツ閲覧に便利です。
- 豊富なオプション:帯域制限、ユーザーエージェント変更、クッキー使用など、柔軟にカスタマイズできます。
wgetのデメリットと課題
- 動的コンテンツへの非対応:JavaScriptによる動的コンテンツの取得には対応しておらず、ページ内容がJavaScriptで生成される場合には不向きです。
- セキュリティの配慮が必要:認証情報をコマンドラインに直接入力すると、セキュリティリスクが発生するため、扱いには注意が必要です。
- 一部のサイトでの制限:サーバー管理者がwgetによるアクセスを禁止している場合があり、その場合は
wget
でのデータ取得がブロックされます。
まとめ
wget
は、シンプルで強力なコマンドラインツールとして、インターネット上のデータ収集やダウンロードの自動化に広く使用されています。特に、安定したダウンロード機能と多様なオプションによって、ファイルのダウンロードやWebサイト全体のバックアップ、オフライン閲覧に非常に便利です。とはいえ、動的コンテンツへの非対応や、利用におけるセキュリティリスクには注意が必要です。