WAAP(Web Application and API Protection)は、WebアプリケーションやAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)をサイバー攻撃から保護するための総合的なセキュリティソリューションです。
WAAPは、WAF(Web Application Firewall)を中心に、DDoS攻撃対策、ボット管理、APIセキュリティを統合した機能を備え、特にクラウド環境で稼働するWebアプリケーションやAPIの保護に効果を発揮します。
API利用が急増し、クラウド上でWebアプリケーションを展開する企業が増加する中、WAAPはオンラインサービスのセキュリティと可用性を確保するための重要な対策として広く導入されています。
WAAPの主な特徴
WAAPは、以下のような複数のセキュリティ機能を統合したソリューションです:
- WAF(Web Application Firewall):一般的な攻撃手法であるSQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)、リモートコード実行など、Webアプリケーションに対する攻撃を防御します。
- APIセキュリティ:API特有の脆弱性を悪用する攻撃(例:APIへの不正アクセス、スパムリクエスト)を防ぐため、認証・認可やトラフィック制御の仕組みを備えます。
- DDoS保護:DDoS攻撃からWebアプリケーションやAPIを守るため、ボリューム型攻撃やプロトコル型攻撃など、様々なDDoS攻撃に対する防御機能が組み込まれています。
- ボット管理:自動化された悪意のあるボットからアプリケーションやAPIを守るため、ボットトラフィックを特定し、制御または遮断する機能を提供します。
WAAPの仕組み
WAAPは、次のような段階を通じてWebアプリケーションやAPIを保護します。
- トラフィックの監視と解析
全てのリクエストをリアルタイムで監視し、正規のトラフィックと悪意あるトラフィックを識別します。トラフィック解析エンジンが、脅威のパターンや異常なアクセス行動を検知し、攻撃リスクを判断します。 - アクセス制御とフィルタリング
WAFとAPIセキュリティのルールに基づき、正規のリクエストのみを通過させ、悪意あるリクエストやボットからのアクセスをブロックします。また、異常なリクエストには自動で制限をかけることもあります。 - 攻撃からの防御
DDoS攻撃や特定のボットによる攻撃に対しては、WAAPが自動的に防御し、攻撃を無害化または制限することで、WebアプリケーションやAPIの可用性を確保します。 - ログとレポート生成
全てのトラフィックや攻撃の試行はログに記録され、管理者は状況を把握し、対策を最適化するための詳細なレポートを閲覧できます。
WAAPの主な用途
WAAPは、特に以下のような用途で活用されます。
- クラウドベースのWebアプリケーションの保護
クラウド上で動作するWebアプリケーションをDDoSやアプリケーション層の攻撃から保護し、サービスの可用性とセキュリティを確保します。 - APIの保護
モバイルアプリやWebサービスにおいて、APIを通じた外部連携が増加する中、APIへの不正アクセスやデータ窃取から保護するために活用されます。 - 自動化ボットの管理
不正アクセスや情報漏洩を試みる悪意のあるボットを識別し、業務に支障をきたさないよう適切に管理するために利用されます。
WAAPのメリット
WAAPを導入することで、以下のメリットが得られます:
- 多層防御による高いセキュリティ:WAF、DDoS対策、ボット管理、APIセキュリティが統合され、多層的な防御を実現します。
- 運用の効率化:複数のセキュリティ機能が一元管理されるため、セキュリティ運用の手間が削減されます。
- ビジネス継続性の確保:DDoS攻撃やボットによる不正アクセスがあっても、サービス停止のリスクを低減でき、サービスの安定稼働が確保されます。
WAAPのデメリットと課題
一方で、WAAPには以下のデメリットや課題もあります。
- コストが高い:特に高度なセキュリティ機能を備えたWAAPソリューションは導入コストや維持費が高くなりやすいです。
- 運用に専門知識が必要:トラフィックの監視や攻撃の検知にはセキュリティの専門知識が求められ、運用負荷がかかる場合があります。
- 誤検知のリスク:正規のトラフィックを悪意あるものと誤って検知し、ユーザーがサービスにアクセスできなくなる可能性もあるため、設定調整やモニタリングが重要です。
WAAPの代表的なソリューション
以下は代表的なWAAPソリューションです:
- Akamai Kona Site Defender:クラウドベースでWAF、DDoS、ボット管理、API保護を提供し、大規模なWebアプリケーションやAPIのセキュリティを支えます。
- Cloudflare WAAP:パフォーマンスとセキュリティを両立させるサービスで、WAF、DDoS対策、API保護、ボット管理などを提供しています。
- AWS WAF:AWSのWebアプリケーションを保護するためのサービスで、WAF機能に加え、DDoS対策やAPIセキュリティもサポートします。
まとめ
WAAP(Web Application and API Protection)は、WebアプリケーションやAPIを包括的に保護するために設計されたセキュリティソリューションであり、WAF、DDoS対策、ボット管理、APIセキュリティを統合しています。近年、クラウド上のサービスやAPIを狙ったサイバー攻撃が増加する中、WAAPはビジネスの継続性とデータの安全性を確保するための重要な手段となっています。コストや運用負荷がかかるデメリットもありますが、強力な多層防御が可能なため、クラウドサービスやAPIを提供する企業にとって有力なセキュリティ対策です。