PEiDは、Windows向けのPE(Portable Executable)形式のファイルを解析し、どのようなパッカーやプロテクターが使用されているかを特定するためのツールです。主にリバースエンジニアリングやマルウェア解析に利用され、実行ファイル(EXE)やダイナミックリンクライブラリ(DLL)に適用された圧縮や暗号化の形式を特定することができます。
PEiDはそのシンプルなインターフェースと高い認識率から、多くのセキュリティ研究者やリバースエンジニアに愛用されています。しかし、2008年以降は公式のアップデートが停止しており、後継ツールが使用される場合もあります。
PEiDの主な特徴
1. パッカー/プロテクター検出
PEiDは、PEファイルに適用されたパッカー(実行ファイルのサイズを縮小するソフトウェア)やプロテクター(逆コンパイルを防ぐためのソフトウェア)を検出します。代表的な例には以下が含まれます:
- UPX(Ultimate Packer for Executables)
- ASPack
- Themida
- VMProtect
2. シグネチャベースの検出
PEiDは、内蔵されたシグネチャデータベースを使用して、パッカーやプロテクターを識別します。このデータベースは非常に広範で、多くの既知のパッキング技術をカバーしています。
3. カスタムシグネチャの追加
ユーザーは、独自のシグネチャを作成してPEiDに追加することができます。これにより、最新のパッカーや特定のカスタムプロテクターに対応可能です。
4. ファイル構造の簡易解析
PEiDは、解析対象のPEファイルの基本情報(例:エントリーポイント、セクションの構造、ファイルのエンコード形式)を提供します。
5. プラグインのサポート
PEiDはプラグインを通じて機能を拡張することが可能で、ファイル解析の効率を向上させます。
PEiDの利用方法
- ファイルをロード
- PEiDを起動し、解析したい実行ファイルをドラッグ&ドロップするか、「File」メニューから選択します。
- 解析の開始
- ファイルがロードされると、PEiDが自動的に解析を開始し、パッカーやプロテクターの情報を表示します。
- 結果の確認
- 主な画面に解析結果が表示されます。
- 使用されているパッカーの名前
- エントリーポイント
- セクション情報
- 主な画面に解析結果が表示されます。
- 詳細な情報の取得
- 必要に応じて、プラグインやカスタムシグネチャを使用してさらに詳細な情報を得ることができます。
PEiDの用途
1. リバースエンジニアリング
- PEiDは、解析対象のプログラムがパッキングされているかどうかを確認するのに役立ちます。これにより、デバッガや逆コンパイルツールを使用する際に適切な手法を選択できます。
2. マルウェア解析
- マルウェアは、解析を困難にするためにパッカーやプロテクターを使用する場合があります。PEiDを使うことで、これらの手法を特定し、アンパック(パッキングの解除)作業をスムーズに進められます。
3. ソフトウェア開発とデバッグ
- 開発中のアプリケーションに適用されたパッキングが正しく動作しているかどうかを確認できます。
4. セキュリティ研究
- 新たなパッキング技術やプロテクターの動向を調査するためのツールとして利用されます。
PEiDの利点
1. 簡単な操作
初心者でも扱いやすいシンプルなインターフェースを提供します。
2. 高い認識精度
広範なシグネチャデータベースにより、多くのパッカーやプロテクターを高精度で検出できます。
3. カスタマイズ性
ユーザー定義のシグネチャを追加することで、新しいパッキング手法やカスタム形式にも対応可能です。
4. 軽量かつ迅速
PEiDは非常に軽量で、ファイル解析が短時間で完了します。
PEiDの課題と限界
1. 更新の停止
公式のアップデートが2008年に終了しているため、最新のパッカーやプロテクターに対応していない場合があります。
2. シグネチャベースの制限
未知のパッカーやカスタムプロテクターには対応できず、新しい技術には弱いです。
3. サポートの不足
古いツールであるため、現代の解析環境やオペレーティングシステムとの互換性に問題が生じる場合があります。
4. 悪用の可能性
悪意のある攻撃者がPEiDを使用して、セキュリティ対策のバイパスや攻撃手法の研究に利用するリスクがあります。
PEiDの代替ツール
PEiDの公式サポートが終了したことにより、以下のような代替ツールが使用されています。
- Exeinfo PE: 高度なPEファイル解析機能を提供。
- Detect It Easy(DIE): 最新のパッカーやプロテクターに対応するツール。
- CFF Explorer: PEファイル構造の詳細な解析が可能。
まとめ
PEiDは、Windows向け実行可能ファイル(PEファイル)を解析し、パッカーやプロテクターを特定するためのシンプルかつ強力なツールです。その使いやすさと高精度な検出機能から、リバースエンジニアリングやマルウェア解析で広く利用されています。ただし、公式アップデートが終了しているため、最新の解析環境では他のツールと組み合わせて使用することが推奨されます。PEiDの利用に際しては、正当な目的で使用することが重要です。