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NTDS

NTDS(Windows NT Directory Services)は、マイクロソフトのWindowsサーバーオペレーティングシステムで動作するディレクトリサービスの一部であり、Windows Active Directory(AD)の基盤となる技術です。具体的には、Active Directoryデータベースの管理を担当し、ユーザーやコンピュータアカウント、グループ、ポリシー、その他のディレクトリオブジェクトの情報を保存および管理します。

NTDSという名称は、Active DirectoryのデータベースファイルであるNTDS.ditに由来し、このファイルにはAD環境全体の情報が格納されています。

NTDSの主な役割

  1. ディレクトリデータの保存
    • ユーザーアカウント、コンピュータアカウント、セキュリティグループ、GPO(グループポリシーオブジェクト)など、Active Directoryに関連するすべてのデータを保存します。
  2. 認証のサポート
    • KerberosプロトコルやNTLMを利用して、ユーザーやデバイスの認証を実行します。
  3. リソース管理
    • ユーザーやデバイス、共有リソースのアクセス許可を管理します。
  4. レプリケーション
    • ドメインコントローラー間でデータを同期し、分散環境で一貫性を保ちます。

NTDS.ditファイル

NTDS.ditの役割

NTDS.ditはActive Directoryデータベースの中核を成すファイルで、ドメインコントローラーに保存されています。このファイルには、以下のような情報が含まれます。

  • ユーザー、グループ、コンピュータのアカウント情報
  • パスワードのハッシュ
  • グループポリシー
  • ドメイン階層とオブジェクト情報

NTDS.ditの保存場所

通常、NTDS.ditは以下のパスに保存されています。

C:\Windows\NTDS\NTDS.dit

ファイル構造

NTDS.ditは、エクステンダブルストレージエンジン(ESE)データベース形式を使用しており、効率的なデータストレージとアクセスを実現しています。

NTDSの機能と仕組み

ドメインコントローラー

  • NTDSは、Windowsドメイン環境のドメインコントローラー上で動作します。
  • ドメインコントローラーは、Active Directoryのデータを保存・提供し、ユーザーやコンピュータの認証を処理します。

レプリケーション

  • ドメインコントローラー間でのデータ同期をサポートし、冗長性と可用性を確保します。
  • レプリケーションプロトコル(RPC over IPなど)を使用して、データの整合性を維持します。

セキュリティと認証

  • KerberosやNTLMを活用し、ユーザーやデバイスの認証を行います。
  • セキュリティ識別子(SID)を管理して、リソースへのアクセスを制御します。

スキーマの管理

  • Active Directory内のオブジェクト構造や属性を定義するスキーマを管理します。
  • スキーマの変更により、新しいオブジェクトタイプや属性を追加可能。

NTDSとセキュリティ

パスワードハッシュ

NTDS.ditファイルには、ユーザーのパスワードハッシュが保存されています。このハッシュは、以下のような形式で格納されます。

  • NTハッシュ: パスワードのMD4ハッシュ
  • LMハッシュ: 古い形式で互換性目的で使用される場合がある(セキュリティが弱い)

NTDS攻撃と対策

NTDS.ditが攻撃者によってアクセスされると、全てのユーザーのアカウント情報やパスワードハッシュが漏洩する可能性があります。

  • 攻撃例:
    • NTDS.ditのダンプ: ドメインコントローラーからデータベースを抽出。
    • DCSync攻撃: レプリケーション機能を悪用して、認証情報を取得。
  • 対策:
    • ドメインコントローラーの物理的およびネットワーク的なセキュリティを強化。
    • パスワードポリシーを強化(複雑なパスワード、定期変更)。
    • レプリケーションの監視と異常なアクティビティの検出。

NTDSの課題と管理のポイント

課題

  1. スケール
    • 大規模環境ではデータベースサイズが増大し、レプリケーションの負荷が高まる。
  2. バックアップと復元
    • データベースの破損や災害時に迅速に復元するための対策が必要。
  3. セキュリティリスク
    • NTDS.ditが攻撃者に奪われるリスクを常に考慮する必要がある。

管理のポイント

  1. バックアップ
    • 定期的にドメインコントローラー全体、またはNTDS.ditを含むシステムのバックアップを取得。
  2. 監視
    • ドメインコントローラーのログやレプリケーションの状態を監視。
  3. 最適化
    • データベースのメンテナンスを実施(例: ESEUTILを使用してデフラグ)。
  4. アクセス制御
    • ドメインコントローラーへの管理者アクセスを制限。

まとめ

NTDSは、WindowsのActive Directoryの基盤を形成する重要な技術であり、ユーザー認証やリソース管理、ディレクトリサービスの提供を担っています。その中核であるNTDS.ditは、非常にセンシティブな情報を格納しているため、物理的および論理的なセキュリティ対策が不可欠です。

また、Active Directoryが組織のITインフラ全体に及ぼす影響を考慮し、適切なバックアップや監視、セキュリティ強化を行うことで、NTDSの運用を安全かつ効率的に管理することが可能です。


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