DCSync攻撃|サイバーセキュリティ.com

DCSync攻撃

DCSync攻撃とは、Active Directory(AD)環境で使用される攻撃手法であり、攻撃者がドメインコントローラー(Domain Controller)のレプリケーション機能を不正に利用して、ユーザーアカウントの情報やハッシュ値を取得するものです。この攻撃手法は、ドメイン内の高い権限を持つアカウント、特にドメイン管理者(Domain Admins)やエンタープライズ管理者(Enterprise Admins)の権限を持つユーザーを狙うことが一般的です。

DCSync攻撃では、攻撃者がドメインコントローラーと同様に動作する権限を取得し、ディレクトリのデータをレプリケーションすることで、認証情報を盗むことができます。これにより、攻撃者はパスワードハッシュやKerberosのチケット情報を取得し、さらなる攻撃に利用することが可能となります。

DCSync攻撃の特徴

DCSync攻撃には、いくつかの特徴が存在します。これらの特徴が、この攻撃手法の危険性を高めています。

ドメインコントローラーのレプリケーションを悪用

DCSync攻撃は、Active Directoryのレプリケーションプロトコルを悪用します。Active Directory内では、複数のドメインコントローラー間で情報が同期される仕組みがありますが、この機能を悪用して認証情報を取得するのがDCSync攻撃です。攻撃者は、このレプリケーションプロセスを通じて、管理者のパスワードハッシュやNTLMハッシュを収集することができます。

特権ユーザーのアクセスが必要

DCSync攻撃を成功させるためには、ある程度の特権を持つユーザーアカウントが必要です。通常、ドメイン管理者やリプリケーターユーザーのような高い権限を持つアカウントに対するアクセス権がある場合、攻撃を実行できます。そのため、攻撃者はまず低い権限から侵入し、権限昇格を行うことでDCSync攻撃が可能な状態にします。

検出が困難

DCSync攻撃は、通常のレプリケーションプロセスに見えるため、既存のセキュリティソリューションでは検出が難しい場合があります。これは、攻撃が通常の管理操作のように見えるため、監視がされにくいという問題を引き起こします。

DCSync攻撃の影響

DCSync攻撃が成功した場合、組織に対して重大なセキュリティリスクが生じます。以下はその影響の一部です。

認証情報の漏洩

DCSync攻撃により、攻撃者はドメイン内のすべてのユーザーのパスワードハッシュやKerberosチケット情報を取得することが可能です。これにより、攻撃者は任意のアカウントとしてアクセスできるようになり、組織全体のネットワークに対する完全なコントロールを持つことができます。

横方向の移動と特権の昇格

DCSync攻撃で得た情報を基に、攻撃者はネットワーク内の他のシステムにアクセスし、横方向の移動を行います。また、管理者権限を取得することで、さらなる特権昇格が可能となり、組織全体を制御下に置くことができます。

長期的な侵害のリスク

DCSync攻撃によって取得された情報は、攻撃者がネットワーク内で長期的に存在し続けるための手段となります。これは、特に管理者アカウントが制御されている場合、ネットワーク全体の監視や操作が可能になるため、セキュリティの維持が非常に難しくなります。

DCSync攻撃に対する対策

DCSync攻撃に対して有効な対策を講じることが重要です。以下は、組織が取るべき主な対策です。

特権アカウントの管理と監視

ドメイン管理者や高い権限を持つアカウントを適切に管理し、不要な権限を削減することが重要です。また、これらのアカウントの使用や変更を監視し、異常な挙動が検出された場合に速やかに対応できる体制を整えることが必要です。

Active Directoryの監査設定を強化

Active Directoryの監査ログを有効にし、レプリケーションイベントや特権アカウントの操作を監視することで、DCSync攻撃の兆候を早期に検知することが可能です。WindowsのイベントログのID 4662(特定のディレクトリサービス操作)などを監視対象とすることが推奨されます。

サービスアカウントの管理

DCSync攻撃では、サービスアカウントが悪用される場合があります。サービスアカウントに与えられる権限を最小限に制限し、必要に応じてパスワードの変更を行うことが重要です。

多要素認証(MFA)の導入

多要素認証を導入することで、単一の認証情報だけでは不正アクセスができなくなり、攻撃者の権限昇格を防ぐ効果があります。

定期的なセキュリティトレーニング

従業員に対するセキュリティ意識の向上も重要です。フィッシング攻撃などによる初期侵入を防ぐため、日常的なセキュリティトレーニングを実施し、潜在的な脅威に対する認識を高めます。

まとめ

DCSync攻撃は、Active Directoryのレプリケーション機能を悪用して、特権アカウントの情報を取得する高度な攻撃手法です。特に、ドメイン内の高い権限を持つアカウントを狙うため、組織にとって大きなリスクとなります。適切な特権管理、監視体制の強化、そしてセキュリティ対策の実施を通じて、DCSync攻撃に対抗し、組織のセキュリティを強化することが求められます。


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