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BlackLotus

BlackLotus は、高度なUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)ブートキットマルウェアであり、UEFI環境を攻撃することで、感染したコンピュータを長期的に制御する目的を持っています。特にWindowsのセキュアブート機能を無効化し、OS起動前にシステムに介入する手法で知られ、通常のセキュリティ対策では検出が困難な点が特徴です。

BlackLotusは、初期アクセスを得ると、UEFIに感染して永続的なバックドアを作成します。これにより、システム再起動やOSの再インストールを行っても削除されないため、攻撃者が長期間にわたりシステムにアクセスし続けることが可能です。

BlackLotusの特徴

BlackLotusは、通常のウイルスやマルウェアよりもシステムの深いレイヤーに潜伏するため、他の攻撃手法にはない以下の特徴を持っています。

1. セキュアブート回避

BlackLotusは、Windowsのセキュアブート機能を無効化し、システム起動前に実行されるため、通常のアンチウイルスソフトウェアでは検出が難しいです。セキュアブートは、OSが信頼されたソフトウェアのみを実行することを保証する機能ですが、BlackLotusはこの保護機能を回避して攻撃者のコードを起動時に実行できるようにします。

2. UEFIファームウェアへの感染

BlackLotusは、コンピュータのファームウェアであるUEFIに直接感染します。UEFIは、OSやセキュリティソフトウェアよりも低いレイヤーに位置しているため、一度感染すると再インストールやディスクのクリーンアップだけでは削除が困難です。このようなブートキット攻撃は、OS起動前にシステムを制御するため、永続的なバックドアとして機能します。

3. 高度な検出回避技術

BlackLotusは、アンチウイルスソフトウェアや侵入検知システム(IDS)による検出を回避するために、難読化やエンコード技術を駆使しています。また、システムコールのフックやメモリ操作を活用し、不審な活動を隠すことで、検出されることなく長期間潜伏することが可能です。

4. 永続的なバックドア作成

BlackLotusは、感染したシステムに永続的なバックドアを作成し、攻撃者がシステムにアクセスし続けることができます。これにより、攻撃者はシステムの管理者権限を取得し、情報収集やリモート操作、さらには追加のマルウェアをインストールするなどの活動を続けられます。

5. 情報収集と遠隔操作

BlackLotusは、感染したシステムから情報収集を行い、攻撃者のC2(コマンド&コントロール)サーバーと通信することで、遠隔操作が可能です。攻撃者は、システムに関する情報、ネットワーク設定、ユーザー情報などを収集し、他のマルウェアや攻撃の拡大に利用します。

BlackLotusの攻撃手法

BlackLotusは、以下の手法でシステムに感染し、持続的に制御を行います。

  1. 初期アクセスの取得
    攻撃者は、フィッシングメールや脆弱性の悪用、リモートアクセスツール(RAT)などを使って、まず標的のシステムに初期アクセスを取得します。BlackLotusは特に脆弱性の悪用による感染が多く、管理者権限を取得してUEFI領域へのアクセスを確保します。
  2. UEFIへのブートキットインストール
    管理者権限が取得されると、BlackLotusはUEFIファームウェアにブートキットをインストールします。これにより、システムの再起動時にマルウェアが実行されるようになり、OSが起動する前にシステムを制御することが可能になります。
  3. セキュアブートの無効化
    BlackLotusは、セキュアブート機能を無効化し、信頼されていないコードが実行できるようにします。これにより、システムが本来実行すべきではないマルウェアコードを起動時に読み込むことが可能となり、以降のセキュリティチェックを回避します。
  4. 情報収集とC2通信
    BlackLotusは、感染したシステムの情報収集を行い、C2サーバーに定期的に通信して指令を受け取ります。攻撃者は、システムに関するデータ、ネットワークの設定情報、ユーザー情報などを収集し、感染の拡大や情報漏洩を進めます。
  5. 追加マルウェアの展開と制御維持
    攻撃者は、必要に応じて追加のマルウェアを感染システムに展開し、長期的な監視やさらなる情報収集を続けられるようにします。これにより、感染システムは持続的な攻撃拠点として利用され、外部からのアクセスが可能な状態が維持されます。

BlackLotusによる被害とリスク

BlackLotusに感染したシステムやネットワークには、以下のような深刻なリスクが伴います。

  1. システムへの永続的なバックドア
    一度感染すると、システムの再起動やOS再インストールを行っても削除が困難で、攻撃者に継続的なアクセスを許してしまうため、非常に高いリスクが伴います。
  2. 機密情報の漏洩
    BlackLotusは情報収集が主な目的のため、システム内の機密情報やユーザー情報が窃取され、攻撃者のC2サーバーに送信されます。これにより、個人情報、認証情報、ネットワーク構成などが盗まれるリスクがあります。
  3. 企業や政府機関のセキュリティリスク
    BlackLotusのようなUEFIブートキットは企業や政府機関を狙うことが多く、重要なデータが流出するリスクや、システム全体が攻撃者にコントロールされるリスクがあります。特に、国家規模のサイバー攻撃に利用される場合もあるため、国家安全保障にも影響を及ぼしかねません。
  4. システムの完全な再構築が必要
    感染が発覚した場合、通常のソフトウェアベースの削除では完全に除去できないため、ファームウェアの書き換えやハードウェアの交換といった大規模な対応が必要です。これにより、システムの復旧に高額なコストと時間がかかります。

BlackLotusへの対策

BlackLotusのようなUEFIブートキットマルウェアへの対策には、次のような多層的なセキュリティ対策が有効です。

  1. セキュアブートの強制と検証
    セキュアブート機能を有効にし、定期的に設定が改ざんされていないか検証します。システムが信頼されていないソフトウェアやマルウェアコードを読み込まないよう、セキュアブートの設定管理を徹底します。
  2. ファームウェアのアップデート
    UEFIやファームウェアの脆弱性を悪用するブートキットに対抗するため、デバイスのファームウェアを最新バージョンにアップデートし、脆弱性を解消することが重要です。
  3. EDR(Endpoint Detection and Response)の導入
    EDRやSIEM(Security Information and Event Management)ツールを使用して、システムの異常な挙動や不正アクセスを検出し、迅速に対応します。これにより、マルウェアの兆候を早期に発見できます。
  4. 管理者権限の制限
    UEFI領域へのアクセスには管理者権限が必要なため、不要なユーザーに管理者権限を与えないように制限します。また、リモートアクセスや管理者権限へのアクセスには多要素認証を実施し、セキュリティを強化します。
  5. システム監査と定期的なセキュリティチェック
    システムやファームウェアの改ざんを定期的に監査し、改ざんや不審なコードの存在を確認します。これにより、ブートキット感染を早期に発見し、リスクを軽減できます。

まとめ

BlackLotusは、UEFIファームウェアに感染する高度なブートキットマルウェアで、セキュアブートを無効化してシステムに永続的なバックドアを作成するため、通常のセキュリティ対策では検出や除去が難しい点が特徴です。特に、国家や大企業など重要な情報を扱う組織を狙うケースが多く、感染すると長期間にわたる情報漏洩やシステム制御のリスクが発生します。

BlackLotusに対抗するためには、セキュアブートやファームウェアのアップデート、EDRによる監視といった多層的なセキュリティ対策が重要です。また、定期的なシステム監査や管理権限の制限も、ブートキット攻撃を防ぐための有効な手段です。


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