ゾンビAPIとは、開発者や運用者が使用しているつもりがない、または無効化したと考えているAPIエンドポイントや機能が、実際には外部に公開されてしまっている状態を指します。これらのAPIは、予期せず残っているにもかかわらず、外部からアクセス可能であるため、セキュリティリスクやデータ漏洩の原因となる可能性があり、適切な管理が求められます。
ゾンビAPIは、開発やメンテナンスの過程でAPIが放置されたり、非推奨のバージョンが削除されずに公開されたままになったりすることで発生します。特に、企業が頻繁にAPIを改修・追加・削除する場合に見落とされやすく、攻撃者の標的になるリスクが高いです。
ゾンビAPIの発生原因
1. 非推奨APIの放置
APIのバージョンアップや機能の更新時に、古いAPIエンドポイントが削除されずに残るケースです。開発者が新しいバージョンに移行しても、旧バージョンがアクセス可能なまま残ることがあり、古いバージョンには最新のセキュリティパッチが適用されないため、脆弱性が悪用されるリスクがあります。
2. 開発・テスト用APIの公開
開発中やテスト用に利用していたAPIエンドポイントが、誤って本番環境で公開されてしまうケースです。開発者がテストAPIを削除しないまま本番環境に移行することで、外部からアクセス可能なゾンビAPIが発生します。
3. API管理の不十分さ
APIが多数存在すると、どのエンドポイントが現役で、どれが不要かの管理が難しくなります。組織内でのAPI使用状況やバージョン管理が不十分だと、非稼働のAPIが残りやすくなります。
4. システム統合やクラウド移行時のミス
システム統合やクラウド移行の際、APIの設定やデプロイに誤りがあると、不要なAPIエンドポイントが引き継がれる場合があります。特に複数のシステムが統合されると、どのAPIが利用されているかの把握が難しくなります。
ゾンビAPIのリスク
1. セキュリティリスク
ゾンビAPIには、古い認証方法や未修正の脆弱性が含まれていることが多く、攻撃者に悪用されるリスクが高いです。たとえば、APIを通じて機密データやユーザー情報が漏洩する恐れがあり、サイバー攻撃の標的にされやすくなります。
2. データ漏洩のリスク
ゾンビAPIが企業の内部システムやデータベースに接続している場合、外部からのアクセスによりデータが漏洩する可能性があります。特に認証が不十分なゾンビAPIが残っていると、攻撃者によって不正アクセスが行われ、機密情報の流出につながる危険性があります。
3. コストの増加
不要なAPIエンドポイントが稼働していると、サーバーリソースやネットワーク帯域が無駄に消費され、クラウド利用費用やAPIリクエストにかかる費用が増加します。特に、APIリクエストに従量課金が適用される場合、ゾンビAPIによるコスト負担が企業の経費に悪影響を与えます。
4. システムの複雑化
ゾンビAPIが存在すると、システム全体の構成が複雑化し、エンジニアの負担が増します。管理が複雑になると、新たなAPIのデプロイや既存のAPIの修正時に誤りが生じやすくなり、セキュリティ上のリスクが増大します。
ゾンビAPI対策
1. APIインベントリの作成と管理
すべてのAPIエンドポイントを一覧化し、APIインベントリを作成して管理することが基本です。APIインベントリを作成することで、どのAPIが使用中で、どれが不要かを明確に把握でき、ゾンビAPIを早期に発見できます。
2. APIゲートウェイの利用
APIゲートウェイを導入することで、APIアクセスを一元管理し、不要なAPIや非推奨APIへのアクセスを制限できます。ゲートウェイを通じてアクセス制御や認証を行うことで、ゾンビAPIへの不正アクセスリスクを減らします。
3. 使用状況のモニタリング
APIの使用状況を監視し、一定期間アクセスがなかったエンドポイントを特定して無効化することが有効です。アクセス解析ツールを使い、リクエストが途絶えたAPIについてはアラートを出す設定を行うと、不要なAPIの早期発見が可能です。
4. CI/CDパイプラインでのセキュリティチェック
APIのデプロイや更新時に、CI/CDパイプラインでセキュリティチェックを実施します。セキュリティポリシーに従って、不要なエンドポイントがデプロイされないように自動的に検出する仕組みを組み込むことで、ゾンビAPIの発生を防止します。
5. 認証とアクセス制御の強化
各APIエンドポイントに強固な認証とアクセス制御を導入し、外部からの不正なリクエストが行われないようにします。たとえば、APIキーの管理やOAuthの導入などが挙げられます。
6. APIのライフサイクル管理
APIにはライフサイクルがあるため、設計から廃止に至るまでのプロセスを管理します。APIのバージョン管理や廃止計画を作成し、不要になったAPIは確実に無効化することで、ゾンビAPIのリスクを削減できます。
まとめ
ゾンビAPIは、サイバー攻撃の標的となり得る不要なAPIであり、セキュリティリスクやデータ漏洩の原因になります。APIインベントリの作成やゲートウェイを活用した一元管理、定期的なモニタリングといった対策を講じることで、ゾンビAPIの発生を防止し、既存のAPIを適切に管理することが求められます。また、認証やアクセス制御を強化し、APIのライフサイクル管理を徹底することで、APIの安全性を保ち、企業システム全体のセキュリティ向上に貢献することができます。