TLP(Traffic Light Protocol)は、情報共有における機密レベルを色分けして明示し、受け取った情報をどの範囲まで共有できるかを分かりやすく定義するためのプロトコルです。もともと、国際的な情報共有を円滑に行うため、情報セキュリティやサイバーインシデント対応の場で広く使用され、CERT(Computer Emergency Response Team)やISAC(Information Sharing and Analysis Center)などの組織間の情報共有の基準として採用されています。
TLPには、情報の機密性や共有範囲に応じて4つの色(「レッド」「アンバー」「グリーン」「ホワイト」)が設定されており、それぞれ異なる共有範囲が示されています。TLPによる色分けにより、情報の取り扱い基準を統一し、情報漏洩や不適切な共有リスクを軽減できます。
TLPの4つの分類
TLPは情報の共有範囲によって以下の4つのレベルに分類されます。
- TLP(レッド)
- 共有範囲:送信者と直接の受信者間のみ。
- 概要:最も機密性が高く、特定の相手と限定的に共有する情報に使用されます。情報漏洩のリスクが高いため、受信者が他者に共有することはできません。
- 使用例:高度にセンシティブな脅威情報、緊急性のある機密データ。
- TLP(アンバー)
- 共有範囲:受信者の組織内に限定され、必要に応じて特定の関係者に共有が許可される。
- 概要:組織内において、セキュリティ関係者などの限られた範囲で共有される情報に使用されます。組織外部への共有には送信者の許可が必要です。
- 使用例:組織の対応に重要な情報や、リスクを評価するために必要なデータ。
- TLP(グリーン)
- 共有範囲:組織外の関係者やコミュニティ内での共有が可能。
- 概要:組織外の関係者や関係コミュニティに対しても、情報の適切な取り扱いが期待される範囲での共有が許可されています。ただし、一般公開は推奨されません。
- 使用例:一般的な脅威情報、協力関係にある組織へのアラート情報。
- TLP(ホワイト)
- 共有範囲:制限なく公開可能。
- 概要:機密性が低く、広範囲での共有が推奨される情報に使用されます。公開資料や広報資料など、公開しても問題がない情報に対して使用されます。
- 使用例:セキュリティに関するガイドライン、業界のベストプラクティス。
TLPの利用目的
TLPは、情報共有の機密性に関する共通ルールを設けることで、次のような目的で利用されます:
- 情報漏洩の防止:機密レベルに応じた共有範囲を明示することで、情報が意図せず漏洩するリスクを軽減します。
- 効率的な情報共有:情報の機密性を明確にすることで、関係者が適切な範囲内で迅速に情報を共有でき、意思決定がスムーズに行えます。
- リスク管理の向上:機密情報が適切に取り扱われるため、サイバーセキュリティにおけるリスク管理が強化され、インシデント対応の品質も向上します。
TLPの活用事例
TLPは、各種セキュリティ組織や企業での情報共有時に使用され、以下のような場面で活用されています:
- インシデント対応時の情報共有
サイバーインシデント対応で、被害状況や対応計画を共有する際にTLPを活用し、情報共有の範囲を調整することで、対応を迅速かつ安全に進めることができます。 - 脅威インテリジェンスの共有
各種脅威インテリジェンスを関係組織やCERTチームと共有する際、TLPを用いて機密度に応じた適切な共有範囲を設定します。これにより、攻撃の予兆や対策の周知が効率的に行えます。 - 政府と民間企業間の情報共有
政府機関や公的なセキュリティ機関が、サイバー攻撃に関する重要な情報を民間企業と共有する際、TLPで情報の機密性を明示し、共有範囲を限定することで、情報の不正な拡散を防ぎつつ情報共有が行われます。 - ISAC内での情報共有
業界ごとのISACで脅威情報を共有する際に、TLPを使用して、情報の共有範囲を適切に管理し、業界全体のセキュリティ強化が図られます。
TLPのメリット
TLPを利用することで、以下のメリットが得られます:
- 明確な共有ルール:TLPにより情報の共有範囲が明確化され、関係者が適切な範囲で情報を管理できるようになります。
- 迅速な意思決定:TLPの使用によって情報の重要度や共有範囲が把握しやすくなり、必要に応じて迅速に意思決定が行われます。
- 情報漏洩リスクの軽減:機密性の高い情報が不要な範囲で共有されることを防ぎ、情報漏洩のリスクを軽減します。
TLPの課題とデメリット
TLPには便利な面が多い一方で、次のような課題やデメリットも存在します:
- 適切な運用が必要:TLPの適用範囲を誤って判断した場合、機密情報が不適切に拡散される可能性があり、運用には注意が必要です。
- 管理の負担:TLPを用いた情報の管理には、従業員のトレーニングや情報共有ルールの定期的な見直しが必要です。
- 誤解のリスク:TLPの理解が不十分な場合、誤った共有範囲で情報が拡散し、情報漏洩リスクが発生する可能性があります。
まとめ
TLP(Traffic Light Protocol)は、情報共有における機密レベルを4つの色(レッド、アンバー、グリーン、ホワイト)で区分することで、情報の適切な共有範囲を管理するプロトコルです。情報共有を行う際に、TLPを利用して共有範囲を明示することで、効率的かつ安全に機密情報の取り扱いが可能になります。TLPは、セキュリティ分野やインシデント対応、業界横断的な情報共有において広く活用され、情報漏洩リスクの軽減と迅速な意思決定に寄与します。