Text4Shellは、2022年10月に公開されたApache Commons Textライブラリの脆弱性(CVE-2022-42889)の通称で、攻撃者がリモートで任意のコードを実行できるリスクを持つ深刻なセキュリティ問題です。この脆弱性は「Apache Commons Text」ライブラリの「文字列補間機能」に起因し、特定の入力処理において外部からの任意コード実行(RCE)攻撃が可能となるため、アプリケーションがリモートから攻撃を受ける危険性があります。
Text4Shellは、Apache Log4jの脆弱性(Log4Shell)と同様に、アプリケーションで広く利用されているオープンソースライブラリの脆弱性であることから、この脆弱性を利用した攻撃のリスクが懸念され、多くの企業や開発者が対応を求められました。
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Text4Shellの原因
Text4Shellの根本原因は、Apache Commons Textライブラリの「文字列補間機能」において、外部入力からの信頼されていないデータを処理する際に発生します。特に、ライブラリが提供する StringSubstitutor
クラスの処理に問題があり、外部から受け取った文字列に特定の書式で構成された変数が含まれている場合、ライブラリが意図せず任意のリモートコードを実行してしまう可能性があります。
具体的には、${prefix:name}
という構文で書かれた変数が含まれた文字列が補間されるとき、script
や dns
などの特定のプレフィックスが設定されている場合、これを解釈して外部からのコード実行を許してしまうことが脆弱性の原因です。
影響を受けるバージョン
Text4Shellの脆弱性は、Apache Commons Textバージョン1.5から1.9までのリリースに存在しています。最新バージョンの1.10.0で修正されているため、脆弱性の影響を受けないようにするには、Commons Textを1.10.0以上に更新することが推奨されています。
Text4Shellの危険性
Text4Shellの危険性は以下の通りです:
- 任意コード実行(RCE):脆弱なバージョンを使用しているアプリケーションでは、攻撃者が外部から任意のコードを実行でき、システムを完全に制御されるリスクがあります。
- データの窃取や操作:リモートコード実行により、機密データの窃取、データベースの変更、ファイルの操作など、不正なアクセスや情報漏洩が発生する恐れがあります。
- 攻撃の拡散:サーバーへのアクセス権を得た攻撃者がさらにネットワーク内の他のシステムへ横展開し、より大規模な攻撃につながる可能性もあります。
Text4Shellへの対策
Text4Shellの脆弱性に対する有効な対策は、Apache Commons Textのバージョンを1.10.0以上にアップデートすることです。以下に、具体的な対策手順を示します:
- 脆弱なバージョンの確認
自身のシステムで使用しているApache Commons Textのバージョンを確認します。Javaの依存関係管理ツール(MavenやGradle)を利用している場合、依存関係を確認して、脆弱なバージョンが含まれていないか調査します。 - Apache Commons Textのアップデート
Commons Textのバージョンを1.10.0以上に更新することで、この脆弱性を修正できます。最新バージョンに更新後、アプリケーションを再デプロイして適用することが推奨されます。 - 入力データのフィルタリング
外部からの入力における「文字列補間」や変数展開を無効化する、もしくは入力データを適切に検証して信頼できないデータの処理を避けるようにします。 - Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の導入
WAFなどのセキュリティ対策により、外部からの不正リクエストを検知・防御し、サーバーに到達する前に遮断することで、脆弱性が悪用されるリスクを軽減します。
Text4Shellの影響範囲を特定する方法
Text4Shellの影響範囲を特定するには、アプリケーションのコードや依存ライブラリをスキャンし、脆弱性のあるバージョンが使用されていないか確認します。以下のツールが有効です:
- Dependency-Check:脆弱な依存関係をスキャンして、脆弱性情報を報告するツールです。
- Snyk:脆弱性スキャンツールで、プロジェクト内の依存ライブラリを調査し、脆弱性の有無を検出します。
- OWASP Dependency-Track:ソフトウェアのサプライチェーン管理を支援し、依存関係内の脆弱性を特定するツールです。
Text4ShellとLog4Shellの違い
Text4ShellとLog4Shellはいずれも、Javaのオープンソースライブラリに発見された脆弱性ですが、異なる点もあります:
- 脆弱性の対象:Log4Shellは「Apache Log4j」における脆弱性ですが、Text4Shellは「Apache Commons Text」に関する脆弱性です。
- 原因:Log4Shellは「ログ記録時のJNDI(Java Naming and Directory Interface)の不適切な利用」によるもので、Text4Shellは「文字列補間の処理における不適切な変数展開」が原因です。
- 悪用リスク:Log4Shellは非常に広範囲で悪用され、脅威レベルも極めて高いとされていますが、Text4Shellも類似の悪用リスクを持ちつつ、影響範囲がより限定的と見られています。
まとめ
Text4Shellは、Apache Commons Textライブラリの脆弱性であり、任意コード実行(RCE)のリスクを持つ重大なセキュリティ問題です。広く利用されているライブラリの脆弱性であるため、迅速な対応が求められます。Text4Shellへの対策として、Apache Commons Textのバージョンを1.10.0以上に更新し、脆弱性のあるバージョンを使用しないようにすることが推奨されます。また、依存関係管理やセキュリティツールを用いて、脆弱性の影響範囲を特定・軽減することが重要です。