皆さんは「ハクティビズム」という言葉を聞いたことがありますか?
世界では米中の貿易摩擦や日韓の政治的な関係の悪化、領土の帰属問題など、国家間、組織間などさまざまな問題が起きています。そして、こういった政治的、社会的な問題に対して主張するサイバー攻撃を「ハクティビズム」と呼んでいます。
こうした政治的な問題に対してのサイバー攻撃であるハクティビズムの実際と今後について、今回はさまざまな事例を取り上げて見ていきましょう。
ハクティビズムとは
サイバー攻撃にはさまざまな目的があります。単に「相手を困らせよう」「自分の力を誇示しよう」といったような愉快犯、個人情報や企業の機密情報を盗み出そうとするもの、データを破壊しようとするものなどがそれです。
そういった中で、政治的、社会的な主張をするためのサイバー攻撃を「ハクティビズム」と呼び、それらを行う攻撃者をハクティビストと呼んでいます。例えば、政府に対して自らの考えを主張するために行うサイバー攻撃や、国家間の争いに対して便乗して攻撃を行うものなどがそれです。
ハクティビズムによるサイバー攻撃例
政治的あるいは社会的な目的から行われるハクティビズムによるサイバー攻撃。こうしたものにはどのような例があるのでしょうか。
ウィキリークス
政治的な目的で行われたハクティビズムといえば「ウィキリークス」が有名です。ウィキリークスは、オーストラリアのジャーナリストであり元ハッカーのジュリアン・アサンジ氏によって創設されたサイトで、政府や企業などの機密情報をウェブ上で公開するといったことを行なっています。
ウィキリークスでは、イラク戦争の機密文書の公開や、アメリカの外交公電、重要施設の情報など国家にとって外部に流出することが非常に問題となる文書を多く公開していたため、国家間の密約やメールのやりとりなどさまざまな機密情報を公開してきた経緯から、創設者のアサンジ氏は米国をはじめとする各国の捜査機関から追われている状況となっています。
アノニマス
有名なハッカー集団であるアノニマスについても、ハッカー集団として知っている人も多いのではないでしょうか。
アノニマスは、国際的なハッカー集団のネットワークであり、ハクティビストとして政府や企業に対するDDoS攻撃などのサイバー攻撃を行なっています。アノニマス自体はゆるやかにつながったネットワークといった側面もあり、実際に何人のメンバーで構成されており、どういった組織なのかといったことはあまりよくわかってはいません。
具体的な攻撃の事例としては、たとえば2010年から2011年にかけてアラブ社会で行われていた反体制活動(アラブの春)では、アノニマスも政府に対してサイバー攻撃をしかけていたことがわかっています。また、北朝鮮がミサイル実験を繰り返すことに対しての抗議として当局のウェブサイトをハッキングして情報を公開するといったこともアノニマスによるものと言われています。
また、先ほどのウィキリークスについても各国政府の抑圧に対する抗議行動として政府期間に対してDDoS攻撃やハッキングといったサイバー攻撃も行なっています。
ハクティビズムの今後
ウィキリークスやアノニマスに代表されるようなハクティビズムは、今後どのようになっていくのでしょうか。ハクティビズムの動向を分析しているマイナビの情報によると、ハクティビスとの活動については以下のような傾向が見られるようです。
- 2016年以降は活動に減少傾向が見られる
- アノニマスやウィキリークスのような大規模なものから小さなグループへと変わってきている
- サイバー攻撃の対象となる政府機関や金融機関などの組織で対策が進んでおり、これまでほど攻撃が有効にできなくなってきている
こういったことを考えると、今後は大規模グループでなく、少数の精鋭集団による活動へとシフトしてくと考えられます。
まとめ
政府や金融機関などに政治的、社会的な問題に対する抗議や主張といった目的で行われるサイバー攻撃は「ハクティビズム」と呼ばれています。ハクティビズムを行う攻撃者のことをハクティビストと呼び、よく知られたところでは今回紹介したようなウィキリークスやアノニマスといったものがあります。
ハクティビズムによる攻撃の実例としては、政府の機密情報の暴露や流出、政府機関や金融機関などに対しての抗議や主張といった意味合いからのサイバー攻撃といったものが挙げられますが、その性格は今後大きく変わっていくものと考えられています。
従来、ハクティビズムといえば、大規模なグループによるものが多い傾向がありましたが、今後は、「政府機関などの対策が進んでいること」などから、少人数の精鋭グループによる犯罪へと移っていく傾向も見えます。このように、将来的にはハクティビズム自体の内容も変化していくと考えられます。