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syslog

syslog(シスログ)は、コンピュータシステムにおけるイベントやログメッセージを記録・管理するための標準的なプロトコルおよびフレームワークです。主にUNIX系システム(Linux、macOSなど)で使用されてきましたが、現在ではWindowsなどの他のオペレーティングシステムやネットワーク機器、セキュリティデバイスなど幅広いプラットフォームでもサポートされています。syslogを活用すると、システム全体のログを集約し、統一的な形式で管理できます。

syslogは、システムで発生するさまざまなイベント(システムエラー、ネットワークイベント、アクセスログ、アプリケーションログなど)を効率よく記録し、セキュリティ管理やシステムトラブルシューティング、監査対応に役立てられます。

syslogの主な構成要素

syslogは、以下の3つの構成要素から成り立っています:

  1. syslogクライアント
    ログメッセージを生成し、syslogサーバーに送信する機能を持つシステムコンポーネントです。OSやアプリケーション、ネットワーク機器がsyslogクライアントとして機能し、発生したイベントをsyslogサーバーへ送信します。
  2. syslogサーバー
    受信したログを保存・管理するための中央サーバーです。システムから送信されるログデータを一括管理するために使用され、長期保存、解析、フィルタリング、通知などの処理が可能です。rsyslogやsyslog-ngといったソフトウェアが、主なsyslogサーバーソフトとして利用されています。
  3. syslogプロトコル
    ログデータのフォーマットおよび転送規則を定義するプロトコルで、通常、UDP(ポート514)やTCP経由でログメッセージを転送します。syslogメッセージには、ログレベルや発生元、タイムスタンプ、メッセージ本文などが含まれ、システム全体で一貫した形式でイベントを管理できます。

syslogのメッセージ形式

syslogのメッセージは、標準フォーマットに基づいて次のような構成要素を含みます:

  1. 優先度(PRI)
    ログの重要度と発生元の機能を示すフィールドで、ファシリティとシビリティから構成されます。
  2. タイムスタンプ
    ログメッセージが生成された日時です。ISO 8601形式やRFC 3339形式などで表記され、発生した時間を明確に記録します。
  3. ホスト名
    メッセージを送信したホストの名前やIPアドレスが含まれます。
  4. アプリケーション名
    メッセージを生成したアプリケーションやプロセスの名前です。
  5. プロセスID
    メッセージを生成したプロセスのIDです。
  6. メッセージ内容
    イベントの内容やエラーメッセージなど、ログメッセージの詳細情報が記載されます。

syslogのファシリティとシビリティ

syslogのメッセージには「ファシリティ」と「シビリティ」が含まれ、どのレベルの重要度か、どの機能からのメッセージかが識別されます。

syslogのファシリティ(Facility)一覧

ファシリティコード ファシリティ(機能) 説明
0 kern カーネルメッセージ
1 user ユーザーアプリケーションのメッセージ
2 mail メールシステム関連のメッセージ
3 daemon デーモン(バックグラウンドプロセス)のメッセージ
4 auth 認証システム関連(ログインなど)
5 syslog syslogデーモン自体のメッセージ
6 lpr 印刷システム(ラインプリンタ)のメッセージ
7 news ニュースやネットワークニュースのメッセージ
8 uucp Unix-to-Unix Copyのメッセージ
9 cron cronやatなどのスケジューリングデーモンのメッセージ
10 authpriv プライベート認証情報関連のメッセージ
11 ftp FTPデーモンのメッセージ
12 ntp NTP(ネットワーク時間同期)のメッセージ
13 security/alert セキュリティ関連の緊急警告メッセージ
14 console コンソールへのメッセージ
15 solaris-cron Solarisのcron関連のメッセージ
16〜23 local0〜local7 ローカルで利用するカスタム設定用のファシリティ

syslogのシビリティ(Severity)一覧

シビリティコード シビリティ(重要度) 説明
0 Emergency システムが使用不能な状態。最も緊急度が高いエラー
1 Alert 即時の対応が必要な状態。重要なサービスやリソースに影響が出ている
2 Critical 重大なエラー。システムの主要な機能が停止している、または停止する恐れがある
3 Error エラー状態。システムやサービスに障害が発生したが、全体には即影響しない
4 Warning 警告状態。異常だが、重要度はそれほど高くない。対応が推奨される
5 Notice 通知レベル。重要ではないが注視が必要。通常の動作で生成されるメッセージ
6 Informational 情報レベル。システムやサービスの動作に関する情報提供
7 Debug デバッグ情報。システム診断やトラブルシューティングのための詳細な情報

このファシリティとシビリティの組み合わせによって、syslogでは詳細で適切なログ管理が行われます。たとえば、メールサーバーのエラーであれば「ファシリティ2(mail)」と「シビリティ3(Error)」のように指定されます。これにより、管理者はシステム上のどのコンポーネントでどの程度の重要なイベントが発生したかを把握しやすくなります。

syslogの主な用途

syslogは、以下のような用途で活用されます:

  1. システム監視とトラブルシューティング
    システムエラーや異常動作の記録を通じて、問題発生時にsyslogを分析することで、原因特定や対応が迅速に行えます。
  2. セキュリティ監視とインシデント対応
    不正アクセスや攻撃の痕跡をログとして記録し、異常なイベントの早期検知やインシデント対応を行います。SIEM(Security Information and Event Management)ツールと組み合わせ、監視・アラートを自動化することが一般的です。
  3. 法的監査とコンプライアンス
    コンプライアンスや法的監査の要件に応じて、操作ログやアクセスログの記録・保存を行い、監査対応に役立てます。
  4. ネットワークトラフィックの監視
    ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、ファイアウォール)からのログを収集し、トラフィックの変動や異常通信を監視します。

syslogの主な利点と欠点

利点

  • 汎用性:多くのOSやネットワーク機器でサポートされており、異なるデバイス間でも一貫した形式でログを集約できるため、システム全体の管理が簡単です。
  • リアルタイム監視:イベント発生時にログが即座に記録され、リアルタイムのシステム監視が可能です。
  • 柔軟な管理:ログメッセージの転送、フィルタリング、通知が柔軟に設定でき、用途に応じた管理が可能です。

欠点

  • セキュリティ:syslogは通常UDPで通信され、暗号化が標準でないため、不正アクセスのリスクがあります。セキュリティが求められる環境では、TCPやTLSでの通信が推奨されます。
  • 大量データの処理:システムやネットワーク規模が大きい場合、ログデータが膨大になり、ストレージや管理の負担が増大します。
  • データの信頼性:syslogのタイムスタンプやホスト名が改ざんされると、正確なトラブルシューティングやインシデント対応が困難になります。

syslogの実装例と設定

syslogの設定は、通常以下のファイルに記述します。

syslog設定例(Linuxの/etc/rsyslog.conf

# 基本設定例
*.* /var/log/syslog              # すべてのログをsyslogファイルに記録
authpriv.* /var/log/auth.log      # 認証関連のログのみをauth.logに記録
kern.* /var/log/kern.log          # カーネルメッセージをkern.logに記録

# 外部syslogサーバーに送信
*.* @192.168.1.100:514            # syslogサーバーのIPアドレスとポート番号
  1. ログ保存:ローカルファイルに保存したい場合、ファイルパスを指定して出力先を設定します。
  2. 外部送信:ログを外部syslogサーバーに転送する場合、サーバーのIPアドレスとポートを指定してログを送信します。

まとめ

syslogは、システムやネットワーク全体のイベントを一元的に収集・管理できる標準的なログ管理システムであり、システム監視、セキュリティ対策、トラブルシューティング、コンプライアンス遵守など、幅広い用途で使用されます。syslogは柔軟性が高く、多くのプラットフォームでサポートされているため、ほとんどのIT環境に対応可能です。しかし、暗号化を含まない場合が多く、セキュリティ対策としてはTCPやTLS通信などの補強が求められることがあります。


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