SE(システムエンジニア)などのIT人材を育成するために、資格取得を推奨しているという企業は4割にも上ります。ただし、実際は、社員に資格取得を推奨しながらも、その目的は人材育成ではなく、人材評価の材料としての活用というのが現状のようです。
新卒や職種未経験者をシステムエンジニアとして採用した場合、彼らを即戦力化するために本当に必要な研修はどのようなものでしょうか。本記事では、人材育成における“資格取得神話”について検証しながら、システムエンジニアにおける真の新人研修について考えます。
この記事の目次
新卒・未経験SEを育成するためには資格取得?
IPAが発行した「IT人材白書2020」では、企業におけるIT人材育成と研修について、実施状況を調査しています。
「会社の制度として資格取得の推奨や支援を行っている」と回答した企業は、39.9%。システムエンジニアを含むIT人材に資格を取得させることが効果的と考え、支援もしている組織や会社が4割近くに上るという結果となりました。
人材育成のための資格推奨とは言い難い
採用したIT人材が資格を取得することを、多くの企業が推奨していますが、なぜ資格が人材育成に有効だと考えるのでしょうか?
IT人材白書より明らかになった「企業がIT資格・試験を活用している理由」についての調査結果を見てみましょう。
「企業がIT資格・試験を活用している理由」の上位6位までを見てみると、IT人材が知識やスキルなどを学ぶためという理由が合計47.0%です。一方で、人材評価のために資格を活用という理由が合計33.3%でした。
普遍的・汎用的な知識・スキルを社員に習得 | 20.0% |
専門分野・担当業務の知識・スキルを社員に習得 | 19.5% |
社員の知識・スキルを客観的に評価 | 17.9% |
採用時に志願者の知識・スキルを客観的に評価 | 9.3% |
事業推進上必要な製品やサービスに関する知識・スキルを社員に習得 | 7.5% |
社員の行動特性(挑戦意欲や知的好奇心等)を評価 | 6.0% |
会社の制度として社員に資格取得を推奨する一方で、その目的は、社員のスキルアップではなく、会社側の人材評価のためという企業が3割を超えているのが現状です。
人材評価という会社の都合のために、従業員に資格を取らせているという、本来の支援の目的とずれた支援がなされているのが現状です。
“人材育成=資格取得の推奨”という考えは、真のIT人材を育成する目的とずれていることを認識すべきです。
SE(システムエンジニア)に必要なスキル・能力
そもそも、システムエンジニアには、どのようなスキルや能力が求められるのでしょうか。
技術力・ITに関する知識
開発で用いる技術を選定し、ユーザーにとって最適なシステムを提案するために、最新技術に対して常にアンテナを張り、技術力・ITに関する知識を強化し続けることが求められます。
マネジメント能力
システムエンジニアはプログラマーに指示を出し、管理をする立場にあります。また、開発プロジェクト全体を統括し、推進するのもシステムエンジニアです。このため、プロジェクト全体や他のメンバーを管理するマネジメント能力も要求されます。
コミュニケーション能力
システムエンジニアの重要な仕事の一つ、ヒアリングの工程などでは特に、顧客や他の従業員とのコミュニケーションが欠かせません。特に、人の話を深く聞き、まとめる能力が要求されます。
現役のシステムエンジニアはどの能力不足で苦労している?
厚生労働省による「若手・中堅・ベテラン社員へのインタビュー集」によると、システムエンジニアとして勤務する若手社員・中堅社員・ベテラン社員が、それぞれ能力・スキル不足で苦労した点として、次のような体験を語っています。
若手社員
「プログラムの作成などもシステムエンジニアの業務のひとつですが、この仕事は、機械よりもむしろ、人と上手にコミュニケーションを取れるかどうかが非常に求められると痛感しています。”機械が好きな人”ではなく、”人が好きな人”がシステムエンジニアに適していると思います。」
中堅社員
「取引先からの依頼と、メンバーの考えが食い違うときに、調整に苦労します。コミュニケーションの重要さを身にしみています。」
ベテラン社員
「苦労している点として、売上の責任を負うことが一番に挙げられます。また、マネージャー職として、社員と契約企業の橋渡しの役割を担い、両者からの要望やクレームに対応しています。組織の潤滑油としての機能をどう果たせるのかに悩んでいます。」
このように、現役のシステムエンジニアは、マネジメント能力やコミュニケーション能力といった、IT技術・知識とは異なる能力に関する部分で苦労しています。
IT技術・知識以外の能力はどう研修すべきか
残念ながら、システム開発プロジェクトで必要とされる、マネジメント能力やコミュニケーション能力は、いくら資格のための勉強をしても身につきません。
このような能力は、実際の開発プロジェクトに参加しないで身につけることは不可能だからです。
「資格取得は真の研修とはほど遠い」事実に企業は気付いている
前述の「IT人材白書2020」において、「IT資格・試験の活用は、投資額に対して育成効果が高い」と回答した企業は、わずか0.5%でした。
自社では資格取得を推奨しながら、実はIT人材育成としての効果は低いのではないかと、多くの企業がすでに気づいています。
メール対応も含む実践型研修に脚光
新卒や未経験者をシステムエンジニアとして採用した後、彼らにどう研修すべきか悩む企業が注目しているのが、資格試験に合格できる新人ではなく”業務ができる新人”を育成する実践型研修です。
実践型の研修では、実際の開発プロジェクトに入り、専用機材を用いて拠点間冗長ネットワークなどを構築します。
また、実プロジェクトとして行うため、研修にはメール・電話対応、報告文書作成、プロジェクトの工程管理から、トラブルシューティングまで含みます。
このような実践型の研修であれば、IT技術・知識はもちろん、マネジメント能力やコミュニケーション能力も苦労しながら身につけられるため、新規採用したシステムエンジニアを最速で即戦力化できるでしょう。
まとめ
新卒や未経験システムエンジニアを教育する研修担当者の悩みの一つが、資格取得のための勉強や座学では、チームワークができない点です。実践型の研修であれば、研修でありながらチームワークを通して、実業務と同等の経験を積むことができます。
また、実践型研修サービスを検討する場合は、エンジニアとして優秀なだけでなく、育成経験が豊富な講師陣を揃えているかを確認することも重要です。優良な研修サービスでは、システム開発だけではなく、人材育成にも長けた講師陣が、企業ごとに計画したオリジナルの研修カリキュラムで実践型研修を行います。
例えば、「BasisPoint Academy」のように、実績が豊富な研修サービスに問い合わせ、広く情報収集することをお勧めします。