CSIRT(Computer Security Incident Response Team)は、組織の情報セキュリティインシデントに対応するための専門チームで、インシデントの発生時に迅速な対応、調査、復旧を行い、システムのセキュリティを保護することを目的とした組織やチームのことを指します。企業や官公庁、教育機関など、さまざまな組織で導入され、サイバー攻撃や情報漏洩などのインシデントが発生した際に、その影響を最小限に抑え、迅速な対応を行うことが求められます。
CSIRTの活動は、インシデント対応に留まらず、セキュリティの強化、インシデント予防策の策定、関係者との情報共有など、組織全体の情報セキュリティの維持と向上に貢献します。
CSIRTの主な役割
- インシデント対応サイバー攻撃や情報漏洩、不正アクセスなどのインシデントが発生した場合に、速やかに対応策を実施します。具体的な活動としては、インシデントの検知、影響範囲の調査、被害の封じ込め、システムの復旧、インシデントの根本原因の特定と対策などがあります。
- インシデント予防インシデントを未然に防ぐために、セキュリティ教育の実施、セキュリティパッチの適用、脆弱性管理、システム監視など、日常的なセキュリティ対策を推進します。CSIRTは、リスクを低減するためのセキュリティポリシーや手順の策定も行います。
- セキュリティ情報の収集と共有新たな脅威や脆弱性に関する情報を収集し、組織内および外部の関係者に対して情報を提供します。これにより、迅速な対応が可能となり、セキュリティインシデントの発生を防ぐことができます。
- インシデント対応の評価と改善過去に対応したインシデントを振り返り、対応の効果を評価し、改善点を特定して次回のインシデントに備えます。これにより、組織全体のセキュリティ対応力が向上します。
- 関係機関との連携警察やセキュリティ専門企業、他のCSIRTチームとの連携を行い、情報共有や協力体制を築くことによって、インシデント対応の効果を高めることができます。特に重大なインシデントでは、外部機関との連携が鍵となります。
CSIRTの構成要素
- リーダーCSIRT全体の指揮を執り、インシデント対応の進捗管理や関係者への報告を行います。
- インシデントハンドラー実際にインシデントの対応を行う担当者であり、インシデントの分析、対応策の実施、システムの復旧を担当します。
- 脅威インテリジェンス担当最新の脅威情報を収集し、インシデントの予防や対応に役立つ情報を提供します。
- セキュリティアナリストインシデントの原因分析やログ解析を行い、インシデントの影響範囲や原因を特定します。
- 広報担当必要に応じて外部への情報発信を行い、インシデントに関する情報を管理する役割を果たします。
CSIRTの導入形態
- 社内CSIRT企業や組織が自ら設置するCSIRTで、組織内部で発生するインシデントに対応するために設置されます。通常、企業内のIT部門やセキュリティ部門が中心となります。
- グループCSIRT親会社や複数の関連会社を統括するCSIRTで、グループ全体のインシデントに対応します。
- 外部CSIRT外部のセキュリティベンダーや専門機関が提供するCSIRTで、必要に応じてインシデント対応を支援します。リソースが限られた組織にとって有用な選択肢です。
CSIRTとCERT/CSIRTの違い
「CERT(Computer Emergency Response Team)」は、CSIRTと類似した役割を持つ組織を指しますが、元々は1980年代に米国のカーネギーメロン大学で設立された「CERT Coordination Center」に由来します。現在では、CSIRTとCERTという名称はほぼ同義で使われることが多いですが、CERTは特に公式な登録を持つ場合に用いられることが一般的です。
まとめ
CSIRT(Computer Security Incident Response Team)は、組織内で発生する情報セキュリティインシデントに対して迅速に対応し、被害を最小限に抑えるために設置された専門チームです。インシデント対応だけでなく、セキュリティ対策の強化や関係機関との連携を通じて、組織のセキュリティ体制を向上させる重要な役割を担っています。サイバー攻撃が増加する現代において、CSIRTの設置と運用は、組織の安全を守るための必須要件となっています。