パスワードリスト攻撃は、事前に取得した大量のパスワードリストを用いて、ユーザーアカウントに対して不正にログインを試みるサイバー攻撃の手法です。この攻撃は、リストに含まれるパスワードを順番に使って試行することで、他人のアカウントへアクセスしようとするものです。特に、複数のサービスで同じパスワードを使い回している場合に成功しやすく、認証情報が漏洩した場合に別のサービスで被害が広がる「リスト型攻撃」としても知られています。
パスワードリスト攻撃は、攻撃者がデータ流出や情報漏えいから収集したパスワードを利用するため、パスワードが複雑であっても、同じパスワードを使い回している限り被害を防ぐことは難しいです。企業や個人にとって、アカウントへの不正アクセスを防ぐために、適切なセキュリティ対策が求められます。
パスワードリスト攻撃の手法と流れ
パスワードリスト攻撃は、以下のような手順で行われます。
- パスワードリストの入手 攻撃者は、以前に発生したデータ漏洩事件や情報流出から、ユーザー名やパスワードのリストを入手します。こうしたリストは、ダークウェブやハッカーのフォーラムで取引されることが多く、非常に多くのアカウント情報が流通しています。
- 自動ツールを用いたログイン試行 攻撃者は、自動化ツールやスクリプトを使用して、リスト内のパスワードを一括で試行し、不正ログインを試みます。このプロセスは短時間で数千件のアカウントに対して行われるため、手動では不可能なスピードと規模で攻撃が実行されます。
- 認証成功とアクセス権の取得 リストの中から一致する組み合わせが見つかれば、攻撃者はそのアカウントにアクセスできるようになります。これにより、個人情報の窃取や不正取引、さらには他のサービスへの連携を利用した攻撃が可能になります。
パスワードリスト攻撃の被害例
パスワードリスト攻撃が成功すると、以下のような被害が発生する可能性があります。
- 個人情報の漏洩
攻撃者がユーザーアカウントに不正アクセスすると、名前、住所、連絡先などの個人情報が盗まれ、悪用されるリスクがあります。 - 不正送金やクレジットカードの不正利用
金融サービスのアカウントに対してパスワードリスト攻撃が成功すると、不正送金やクレジットカードの不正利用が行われる可能性があります。 - サービスの悪用
SNSやメールアカウントが乗っ取られると、詐欺メッセージの送信やスパムの拡散に利用され、被害が広がる恐れがあります。 - 他サービスへの波及
攻撃者は同一パスワードを使用する別のサービスへも不正アクセスを試みるため、連携するサービスにも被害が広がりやすくなります。
パスワードリスト攻撃への対策
パスワードリスト攻撃を防ぐために、以下のような対策が有効です。
1. 多要素認証(MFA)の導入
多要素認証(MFA)を導入することで、パスワードだけでなく、SMSや認証アプリによる追加の認証要素が必要となるため、攻撃者がパスワードリスト攻撃で不正アクセスすることが難しくなります。
2. パスワードの使い回しを避ける
パスワードリスト攻撃は、異なるサービスで同じパスワードが使用されている場合に成功しやすいです。そのため、サービスごとに異なるパスワードを使用し、万が一の漏洩による被害拡大を防ぎます。パスワード管理ツールを活用して複雑なパスワードを安全に管理するのも有効です。
3. アカウントロック機能の実装
一定回数のログイン試行に失敗したアカウントを自動でロックする仕組みを導入することで、大量のパスワードを試行する攻撃を防ぐことができます。また、不正なログイン試行があった際に、ユーザーに通知を送信する設定も有効です。
4. ボット対策の導入
自動化ツールを用いた攻撃を防ぐために、reCAPTCHAやBot Managerといったボット対策ツールを使用し、認証の際に自動化された攻撃を検知してブロックします。これにより、攻撃者のスクリプトやツールによる大量試行が制限されます。
5. パスワード強度の向上
パスワードの強度を高めることで、推測されにくいパスワードにします。英数字や記号を組み合わせた十分な長さのパスワードを要求することで、リストに含まれにくくし、リスト型攻撃に対して耐性を持たせることができます。
6. ログイン通知機能の活用
新しいデバイスや異なるIPアドレスからログインがあった際に、ユーザーに通知する機能を導入することで、ユーザーが不正アクセスに気づきやすくなります。不正アクセスが疑われる場合、ユーザー自身が速やかにパスワードを変更することが可能です。
まとめ
パスワードリスト攻撃は、流出したパスワードリストを利用して大量のアカウントに対して不正ログインを試みる攻撃手法です。特に同じパスワードを使い回している場合に被害が拡大しやすく、個人情報や財産の流出、不正アクセスによるサイバー犯罪のリスクが高まります。
対策として、多要素認証の導入やアカウントロック機能の設定、パスワードの使い回しを避けるなどが有効です。また、企業側もユーザーのアカウントを保護するため、ボット対策や強力な認証プロセスを構築し、セキュリティを強化する必要があります。