電子計算機損壊等業務妨害罪|サイバーセキュリティ.com

電子計算機損壊等業務妨害罪

電子計算機損壊等業務妨害罪(でんしけいさんきそんかいとうぎょうむぼうがいざい)は、コンピュータや電子機器を標的としたサイバー攻撃や不正行為によって、他人の業務を妨害する行為を処罰するための刑法上の罪です。日本の刑法第234条の2に定められており、業務に不可欠なシステムやデータが破壊・妨害されることを防ぎ、業務の信頼性と円滑な遂行を守るために設けられています。

この罪は、不正なプログラムを使ったサイバー攻撃、ウイルス感染の拡散、データの消去・改ざん、サービスの妨害(DDoS攻撃)などに適用されることがあり、情報化社会における重要な法的枠組みです。

電子計算機損壊等業務妨害罪の構成要件

電子計算機損壊等業務妨害罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 電子計算機やその電磁的記録を損壊、妨害する行為

対象となるのは、他人が管理する電子計算機(コンピュータやサーバー)や、その中のデータを破壊、削除、改ざん、または業務妨害を目的とする妨害行為です。プログラムやデータを正常に機能しない状態にしたり、システムを意図的に停止させる行為が含まれます。

2. 業務に必要不可欠なデータやシステムであること

妨害対象は、業務の遂行に必要不可欠なシステムやデータである必要があります。たとえば、企業のサーバー上のデータ、取引情報、業務システムなど、業務運営に必要な記録が該当します。

3. 故意の妨害行為であること

この罪は、明確な妨害の意思をもって行われた行為に対して適用されます。偶発的なエラーやシステム障害は処罰対象外です。

電子計算機損壊等業務妨害罪の主な事例

1. サイバー攻撃によるデータの破壊・削除

サイバー攻撃者が不正に他人のコンピュータシステムに侵入し、データベース内の情報を削除・改ざんする行為が該当します。例えば、企業の取引データや顧客情報を削除することで、業務が停止するように仕向ける行為がこれに当たります。

2. DDoS攻撃によるサービス停止

DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃により、特定のWebサーバーに大量のリクエストを送り、サーバーが応答不能な状態にする行為もこの罪に該当します。DDoS攻撃によって、正当な利用者がサービスを使用できなくなることで、業務に多大な影響が生じます。

3. マルウェアの拡散によるシステムの妨害

企業内ネットワークにマルウェアを仕掛け、システム全体を感染させて業務を妨害する行為も、この罪の対象です。たとえば、ランサムウェアによってファイルを暗号化し、業務データの利用を不可能にする行為が該当します。

4. 内部関係者によるデータ改ざんや消去

企業の従業員や関係者が意図的に業務に関わるデータを改ざん・削除し、業務遂行に支障をきたすようにする場合もこの罪に該当します。特に、退職時や不満を抱えた従業員による不正操作が多い事例です。

電子計算機損壊等業務妨害罪の罰則

電子計算機損壊等業務妨害罪の罰則は、刑法第234条の2に基づき、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。不正行為による被害の大きさや社会的影響の程度により、重い罰則が科せられることもあります。特に企業の基幹システムや重要なデータが破壊された場合、罰則が強化される可能性が高まります。

電子計算機損壊等業務妨害罪の防止策

電子計算機損壊等業務妨害罪のリスクを軽減するため、企業や組織では次のような対策が有効です。

1. ネットワークセキュリティの強化

ファイアウォールや侵入検知システム(IDS)、侵入防止システム(IPS)を導入し、外部からの不正なアクセスやマルウェアの侵入を防ぎます。DDoS攻撃に備えて、トラフィックの監視と異常なアクセスのブロックができる仕組みを整備します。

2. アクセス制御と権限管理

業務に必要なデータやシステムにアクセスできる権限を厳格に管理します。管理者権限の付与や業務上のアクセス範囲を適切に設定することで、データやシステムの不正な利用を防ぎます。

3. 定期的なデータバックアップ

サイバー攻撃やシステム破壊が発生した場合に備え、定期的なデータのバックアップを行います。これにより、データが破壊された際に迅速な復旧が可能となり、業務への影響を最小限に抑えられます。

4. 社員教育とセキュリティ意識の向上

社内の社員に対し、情報セキュリティや法的な責任に関する教育を行い、不正な操作や不適切な行為が業務妨害につながるリスクについて理解を深めさせます。従業員のセキュリティ意識を高めることで、内部不正の発生を防止します。

5. システムログの監視と分析

システムやネットワーク上の操作ログを監視・分析し、不審なアクセスや異常な操作が検出された場合に即座に対応できる体制を構築します。これにより、不正行為が行われても早期に発見・対処が可能です。

まとめ

電子計算機損壊等業務妨害罪は、サイバー攻撃や内部不正によって他人の業務を妨害する行為を取り締まる刑法上の罪です。刑法第234条の2に基づき、企業や組織の業務を妨げる不正アクセスやデータ破壊、DDoS攻撃、マルウェア感染などを防ぐための重要な役割を果たします。

この罪を防ぐためには、アクセス権限やネットワークの管理を徹底し、定期的なデータバックアップや社員教育を行うことが求められます。また、監視体制やログ分析の強化により、不正行為の早期発見と対策を講じることで、業務の信頼性と安全性を守ることが可能です。


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