セキュア・バイ・デフォルト|サイバーセキュリティ.com

セキュア・バイ・デフォルト

セキュア・バイ・デフォルト(Secure by Default)とは、ソフトウェアやシステムが初期設定や標準設定のままでも、ユーザーがセキュリティを強化するための追加設定やカスタマイズをせずに、十分なセキュリティが確保されている状態を指します。セキュア・バイ・デフォルトの設計思想に基づくシステムでは、ユーザーが不適切な設定を行うリスクが減り、安全性が確保された状態での運用が可能になります。

このアプローチは、特に一般ユーザーやセキュリティに詳しくない利用者が安心して利用できることを目指しており、組織内の全ユーザーが簡単かつ安全にシステムを活用できるよう配慮されています。

セキュア・バイ・デフォルトの重要性

  1. ユーザーのミスを防ぐ すべてのユーザーがセキュリティに詳しいわけではないため、ユーザーが誤った設定を行うことで生じるリスクを防ぐことができます。セキュア・バイ・デフォルトの設計では、初期設定で適切なセキュリティが施されているため、設定ミスのリスクを低減します。
  2. 運用負荷の軽減 デフォルトでセキュリティが確保されているため、管理者が全ユーザーに対して追加のセキュリティ教育や設定の指示を行う必要が減り、システム運用の負荷が軽くなります。
  3. インシデント発生リスクの低減 初期状態からセキュリティを重視した設定が施されているため、脆弱な設定が原因のサイバーインシデントが発生しにくくなります。特に、未設定や初期設定のまま放置されたことによるセキュリティインシデントが減少します。

セキュア・バイ・デフォルトの主な原則

1. デフォルトで安全な設定

システムの標準設定が安全性の高い状態に保たれていることを指します。例えば、不要なポートやサービスをデフォルトで無効化したり、強力なパスワードポリシーを初期設定とするなど、標準状態がセキュアになるように配慮します。

2. 不要な機能を無効化

使わない機能やサービスがデフォルトで無効化されていることにより、攻撃者に狙われるリスクが減少します。たとえば、管理者が明示的に有効にしない限り、開発用のデバッグモードやテストモードが無効化されている設計です。

3. 強力な認証とアクセス制御

セキュア・バイ・デフォルトでは、強力な認証方式を標準設定にし、すべてのユーザーやデバイスに適切なアクセス制御が施されていることが重要です。たとえば、二要素認証を標準で有効にしたり、最低限のアクセス権限のみが初期設定されるといった工夫が行われます。

4. 暗号化の標準使用

デフォルトで通信やデータの保存に暗号化が施されていることで、データの安全性が確保されます。例えば、HTTPS通信の強制、ストレージ内データの暗号化など、セキュア・バイ・デフォルトでは暗号化がデフォルトとして適用されます。

5. アップデートの自動化

システムやソフトウェアのセキュリティ更新を自動で適用する設定により、脆弱性が速やかに解消されるようにします。ユーザーが手動でアップデートしなくても、最新のセキュリティパッチが適用されるように設計します。

セキュア・バイ・デフォルトのメリット

1. ユーザーの安全な利用が可能

初期設定のままでセキュリティが確保されているため、ユーザーは特別な知識がなくても安全にシステムを利用できます。特に一般ユーザーやセキュリティリテラシーが低いユーザーでも安心です。

2. 管理負担の軽減

セキュリティ設定をあらかじめデフォルトで適用することで、管理者が全ユーザーに対して追加のセキュリティ設定を指示する必要が減り、運用の効率が上がります。

3. セキュリティインシデントの減少

標準設定がセキュアであるため、ユーザーが気づかないうちに脆弱な設定を放置するリスクが減り、セキュリティインシデントの発生が抑えられます。

セキュア・バイ・デフォルトの例

1. HTTPSの標準化

多くのWebサービスがデフォルトでHTTPS通信を利用することで、通信内容の盗聴や改ざんが防がれるようになっています。これにより、ユーザーが特別な設定をしなくても、暗号化された安全な通信が確保されます。

2. 二要素認証(2FA)のデフォルト有効化

クラウドサービスやオンラインバンキングなどでは、デフォルトで二要素認証が設定されている場合が増えています。ユーザーが不正アクセスから保護されるため、アカウントの安全性が高まります。

3. 自動更新の強制

OSやアプリケーションがデフォルトで自動更新されるよう設定されていることで、ユーザーが更新を意識しなくても最新のセキュリティパッチが適用され、脆弱性が解消されます。

4. ファイアウォールのデフォルト有効化

多くのOSでは、デフォルトでファイアウォールが有効化されており、外部からの不正なアクセスをブロックしています。ユーザーが設定を意識せずとも、安全な通信が確保されます。

まとめ

セキュア・バイ・デフォルトは、システムやソフトウェアの初期設定のままで高いセキュリティが確保されるように設計するアプローチであり、ユーザーの設定ミスによるセキュリティリスクを軽減します。強力な初期設定、安全な認証とアクセス制御、暗号化の標準利用など、ユーザーが特別な対応をせずとも安心して利用できる環境を提供します。現代のサイバーセキュリティにおいて、セキュア・バイ・デフォルトは安全なシステム運用の基盤として重要な役割を果たしています。


SNSでもご購読できます。