UEBA(User and Entity Behavior Analytics)|サイバーセキュリティ.com

UEBA(User and Entity Behavior Analytics)

UEBA(User and Entity Behavior Analytics)とは、ユーザーやエンティティ(端末、アプリケーション、ネットワーク機器など)の行動を分析し、異常な動きを検出することで、セキュリティリスクを特定する技術やシステムを指します。従来の境界防御型のセキュリティ対策だけでは検知が難しい内部脅威や標的型攻撃を、行動パターンの異常検知を通じて発見できるため、セキュリティ管理の高度化に貢献します。

UEBAは、企業内で正常とされる行動基準を機械学習などでモデル化し、それと照らし合わせて疑わしい行動を即座に識別します。一般的なログ管理システムと異なり、動作の「正常」や「異常」を動的に学習し続けるため、予測が難しい内部リスクやサイバー攻撃に対しても効果的です。

UEBA(User and Entity Behavior Analytics)の特徴

UEBAの特徴は、従来のセキュリティ対策と異なり、「振る舞い」に着目したアプローチにあります。主な特徴は以下の通りです:

  • 動的な行動分析:機械学習アルゴリズムを活用し、ユーザーやエンティティの通常の行動パターンを把握します。
  • 異常検知の自動化:リアルタイムでの異常検知により、異常な行動が発生した際に即座に通知が行われます。
  • セキュリティイベントの相関分析:特定の単一イベントだけでなく、行動の積み重ねによる脅威を関連付けて評価することで、潜在的なリスクを把握します。
  • インシデント対応の迅速化:異常検知に基づくインシデント対応を通じて、リスクの迅速な封じ込めが可能です。

UEBAのメリット

UEBAを導入することで、以下のような多くのメリットが得られます。

  1. 内部脅威の早期発見:不正なアクセスや異常なデータ移動など、通常の業務範囲を逸脱した行動を発見することで、内部犯行や誤操作などによるリスクを低減します。
  2. サイバー攻撃の検出:標的型攻撃やゼロデイ攻撃など、従来の境界防御や署名ベースの対策が効かない攻撃も、異常な振る舞いの検出によって補完的に対策できます。
  3. 誤検知の削減:単純なルールベースのアラートと異なり、行動の文脈を考慮するため、誤検知の削減が期待されます。
  4. コンプライアンスの強化:GDPRやHIPAAなどの法規制に対応するためのモニタリング強化にも役立ち、コンプライアンス遵守を支援します。

UEBAの仕組みと構成要素

UEBAシステムは、大きく以下の3つの構成要素から成り立っています。

1. データ収集

UEBAはまず、企業内のシステムやアプリケーションからログやイベントデータを収集します。このデータにはユーザーのアクセスログ、ファイル操作ログ、端末からのトラフィックなど、多岐にわたる情報が含まれます。

2. 行動パターンの学習

収集したデータをもとに、ユーザーやエンティティの通常の行動パターンを機械学習アルゴリズムが学習します。このプロセスでは、例えば業務時間外のアクセスや通常とは異なるデータ量の転送など、異常と判断する基準がモデル化されます。

3. 異常検知とアラート

学習した基準から逸脱した行動が検出された場合、即座にアラートが発生します。例えば、特定ユーザーが急に大量のデータを外部に送信し始めた場合などは、即座に管理者に通知が送られ、早期の対応が可能となります。

UEBAの適用分野と活用例

UEBAは、特に以下のような分野での活用が進んでいます。

  • 金融業界:不正取引の検出や、取引システムへの不正アクセスの監視に役立ちます。
  • 医療業界:患者データの保護や、医療従事者による不適切なデータアクセスの監視に利用されています。
  • 小売業:顧客データの漏洩防止や、決済システムへの不正アクセスを監視するために活用されています。

UEBA導入の課題

UEBAは強力なセキュリティ対策ですが、導入にはいくつかの課題も存在します。

  1. 高コスト:UEBAシステムの導入には、システムコストや運用コストがかかるため、特に小規模な企業にとっては導入が難しい場合があります。
  2. 運用の複雑さ:高度な異常検知を行うためのデータ収集や、機械学習モデルの維持には専門知識が必要です。
  3. 誤検知のリスク:UEBAは高精度な異常検知を目指していますが、学習精度や設定によっては、意図しない行動が異常と判断されることもあります。

まとめ

UEBA(User and Entity Behavior Analytics)は、ユーザーやエンティティの行動をリアルタイムで分析し、通常の防御策では検出が難しい内部脅威やゼロデイ攻撃の早期発見を可能にするセキュリティ手法です。異常行動の検出によりリスクを軽減し、企業のセキュリティ管理を強化するために非常に有効です。ただし、導入には高コストや運用の複雑さといった課題もあるため、組織のニーズに応じた最適な運用が求められます。


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