TPRM(Third-Party Risk Management)|サイバーセキュリティ.com

TPRM(Third-Party Risk Management)

TPRM(Third-Party Risk Management)は、「サードパーティリスク管理」と呼ばれ、企業が外部の第三者(サードパーティ)との取引やサービスの委託に伴って生じるリスクを評価・管理するプロセスのことです。これには、サプライチェーンの取引先、ITサービス提供者、クラウドベンダー、業務委託先などが含まれ、企業がサードパーティから受ける潜在的な影響を総合的に評価し、リスクを低減するための体制や手順を構築することが目的です。

TPRMの目的は、サードパーティに依存することで生じる情報セキュリティ、法的、財務、オペレーショナル、レピュテーション(評判)リスクを最小化し、企業の信頼性や安定性を保つことです。

TPRMが重要である理由

近年のサイバー攻撃の増加や情報漏洩事件の多くが、サードパーティ経由で発生しています。サードパーティの弱点が攻撃に利用されると、自社システムや顧客情報が危険にさらされるため、TPRMは企業全体のリスク管理として重要です。特にIT分野での外部委託が増加しており、TPRMによって委託先のセキュリティ対策やコンプライアンス状況を定期的に評価することが求められます。

TPRMプロセスの主な手順

TPRMはリスクを評価し、必要な対策を講じるためのプロセスを通じて行われます。一般的な手順は以下の通りです。

  1. サードパーティの識別とリスク評価
    取引先、委託先などのサードパーティを特定し、企業が受けるリスクを評価します。業務内容や関係性、サードパーティの規模や性質に応じてリスクの度合いを把握します。
  2. リスク評価基準の確立
    サードパーティに関連するリスク評価基準を設け、特定したリスクがどの程度の影響を与えるかを測定します。例えば、情報セキュリティ、財務リスク、法的コンプライアンス、オペレーショナルリスクなどのカテゴリで評価します。
  3. サードパーティのセキュリティ体制とコンプライアンス評価
    サードパーティのセキュリティ対策やコンプライアンス基準を確認します。これには、ISO 27001やGDPRなどの基準への適合性や、サイバーセキュリティの強化レベルが含まれます。
  4. リスク管理計画の策定
    リスクが許容範囲を超える場合には、リスク緩和計画を策定します。具体的には、契約にセキュリティ条項を盛り込む、監査の実施、またはリスク転嫁のための保険加入などの対策を講じます。
  5. モニタリングと評価の継続
    TPRMは一度の評価で完了するのではなく、定期的にサードパーティをモニタリングし、契約期間中にリスクが増加したり、新たな脅威が発生した場合には適切に対応します。

TPRMの主なリスクカテゴリ

TPRMでは、一般的に以下のリスクカテゴリが管理対象となります。

  • 情報セキュリティリスク
    サードパーティによるデータ漏洩、ネットワーク侵入、サイバー攻撃による被害を防止するため、サードパーティのITインフラやデータ管理体制を監視します。
  • 法的リスクとコンプライアンス
    サードパーティが法令や規制を遵守しているかを確認し、GDPRやCCPAなどのデータ保護法、業界の法規制に適合しているかを定期的にチェックします。
  • オペレーショナルリスク
    サードパーティが提供するサービスやプロダクトが、企業の日常業務に影響を及ぼすリスクです。例えば、サービスの停止や障害が発生した場合の影響を評価し、リスクに備えます。
  • 財務リスク
    サードパーティの財務状態が安定しているかを評価し、倒産や資金難による契約履行の停止、サービス提供の中断リスクに備えます。
  • レピュテーションリスク
    サードパーティによる不正やスキャンダルが発生し、自社の信用が損なわれるリスクです。サードパーティの評判も管理し、企業イメージを守るために適切な対策を講じます。

TPRMの導入方法

企業がTPRMを導入するには、以下の方法が一般的です。

  1. リスク管理ポリシーの策定
    企業としてのリスク許容度や管理基準に基づいて、TPRMに関するポリシーを策定します。このポリシーにより、リスク管理の範囲と方法を明確にします。
  2. サードパーティリスク評価ツールの導入
    TPRMに特化したリスク評価ツールを導入し、各リスクの自動評価やモニタリングを行います。ツールには、取引先のセキュリティ状況を自動で評価する機能や、リスクの可視化機能が備わっているものがあります。
  3. 従業員と管理者のトレーニング
    サードパーティとの契約やリスク管理に携わる従業員や管理者に対し、リスクの特定と対応方法についてのトレーニングを行い、企業全体のTPRMに関する理解を深めます。
  4. リスク対応の準備
    サードパーティとの契約に、リスク発生時の対応方法や監査権限を盛り込み、リスク発生時に迅速に対応できる体制を整えます。必要に応じて、リスク転嫁として保険加入も検討します。

TPRMのメリット

TPRMを適切に導入することで、以下のようなメリットが得られます:

  • 情報セキュリティの強化
    サードパーティが提供するサービスやシステムのセキュリティレベルを把握できるため、データ漏洩やサイバー攻撃のリスクを軽減できます。
  • 法的コンプライアンスの遵守
    サードパーティのコンプライアンス違反による法的リスクを事前に特定し、規制遵守を確認することで法的リスクを管理します。
  • 企業価値の維持
    サードパーティの不正やスキャンダルが企業に及ぼす評判リスクを未然に防ぎ、信頼性やブランドイメージの保護に寄与します。
  • 経済的損失の予防
    サードパーティによるオペレーション停止や品質問題を防ぎ、業務停止や取引中断による経済的損失のリスクを最小化します。

まとめ

TPRM(Third-Party Risk Management)は、サードパーティに依存する企業が安全性とリスク管理を維持するための重要なプロセスです。情報セキュリティリスクや法的コンプライアンス、オペレーショナルリスクを総合的に管理し、企業の安定性や評判の維持、財務的損失の予防に寄与します。リスク評価基準の策定や定期的なモニタリング、リスク対応手順の明確化により、サードパーティとの連携を強化し、企業全体のリスク管理体制を強固にすることがTPRMの目標です。


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