LPE|サイバーセキュリティ.com

LPE

LPE(Local Privilege Escalation)は、システム内で低い権限しか持たないユーザーまたはプロセスが、システム管理者やルートユーザー(root)のような高い権限を不正に取得する攻撃手法を指します。この攻撃は、通常、システムやアプリケーションの脆弱性を悪用して行われ、攻撃者が標的システムの完全な制御を得ることを可能にします。

LPEは、リモート攻撃と組み合わせて行われることが多く、まず攻撃者が標的システムに侵入し、次にLPEを利用してより高い権限を取得します。これにより、データの窃取、システムの破壊、さらなる攻撃の展開が可能となります。

LPEが行われる理由

1. 権限昇格

攻撃者は、通常ユーザーの権限から始まり、システム管理者やrootのような高権限を取得して、システム全体へのアクセスを試みます。

2. セキュリティ制限の回避

低権限のユーザーでは実行できない操作(例:セキュリティ設定の変更、ファイルシステムの完全な操作)を可能にします。

3. 持続的な攻撃基盤の構築

高権限を持つことで、バックドアの設置や追加のマルウェア配布、システムの完全な制御を実現します。

LPEが利用する主な脆弱性

1. システムの設計上の欠陥

オペレーティングシステムやアプリケーションの設計上の不備により、特定の操作で権限を昇格させられることがあります。

2. 未修正のソフトウェアバグ

ソフトウェアに存在する既知または未知のバグ(ゼロデイ脆弱性)が攻撃に利用されます。

3. 不適切なアクセス制御

特定のファイルやプロセスに対して誤って高い権限が付与されている場合、攻撃者がそれを利用して権限を昇格させます。

4. ライブラリやモジュールの悪用

システムやアプリケーションが使用する外部ライブラリやモジュールに存在する脆弱性が攻撃対象となることがあります。

LPEの攻撃手法

1. メモリのオーバーフロー攻撃

バッファオーバーフローやスタックオーバーフローを利用して、コードを挿入し、権限を昇格させます。

2. シンボリックリンク攻撃

攻撃者は、不適切に保護されたファイルやディレクトリへのアクセスを取得するために、シンボリックリンクを利用します。

3. 特権プロセスの悪用

特権を持つプロセスやサービスに不備がある場合、それを利用して攻撃者が高権限を取得します。

4. カーネル脆弱性の利用

オペレーティングシステムのカーネル(LinuxやWindowsなど)に存在するバグを悪用して、システム全体の制御を取得します。

5. DLLインジェクション

動的リンクライブラリ(DLL)を標的プロセスに挿入して、不正なコードを実行します。

LPEの防御策

1. ソフトウェアの定期的な更新

オペレーティングシステムやアプリケーションを常に最新バージョンに保ち、既知の脆弱性を修正するパッチを適用します。

2. アクセス制御の適切な設定

  • ファイルやディレクトリのアクセス権限を必要最低限に設定します。
  • システム管理者アカウントの使用を最小限に抑えます。

3. セキュリティツールの導入

  • EDR(Endpoint Detection and Response)を利用して、LPEの兆候を検出します。
  • 権限昇格攻撃に特化した検出機能を持つセキュリティソフトを導入します。

4. ログと監視の強化

  • システムのアクセスログやプロセスの挙動を監視し、不審なアクティビティを早期に検出します。
  • SIEM(Security Information and Event Management)を使用して異常な動作を分析します。

5. 最小権限の原則(PoLP)の適用

  • ユーザーやプロセスに必要最低限の権限のみを付与する「最小権限の原則」を適用します。
  • 高権限のアカウントを分離し、不要な権限昇格を防ぎます。

6. サンドボックスの利用

  • アプリケーションやプロセスをサンドボックス環境で実行し、権限昇格の影響範囲を制限します。

LPEの具体的な攻撃事例

1. Dirty COW(CVE-2016-5195)

Linuxカーネルに存在した競合状態のバグを利用して、ローカルユーザーがroot権限を取得できる脆弱性。

2. PrintNightmare(CVE-2021-34527)

Windowsのプリントスプーラーサービスに存在した脆弱性を悪用して、リモートまたはローカルでの特権昇格を可能にした攻撃。

3. CVE-2020-0796(SMBGhost)

Windows SMBv3プロトコルに存在したバグを悪用して、特権昇格やリモートコード実行を可能にした脆弱性。

LPEがもたらす影響

1. 完全なシステム制御

LPEに成功した攻撃者は、システム全体の制御を取得し、データの窃取や破壊、バックドア設置を実行できます。

2. 横展開(Lateral Movement)

ネットワーク内で他のデバイスやアカウントに侵入し、攻撃を拡大します。

3. セキュリティ対策の無効化

高権限を利用してセキュリティソフトを無効化し、さらなる攻撃を容易にします。

まとめ

LPE(Local Privilege Escalation)は、サイバー攻撃の中でも重要なフェーズを担う手法であり、システムの完全な制御やネットワーク全体への侵入を可能にします。このような攻撃を防ぐには、定期的なパッチ適用、アクセス制御の強化、権限管理の徹底が必要です。攻撃者に対する防御を強化することで、LPEを含む高度な攻撃からシステムを守ることができます。


SNSでもご購読できます。