「官民データ活用推進基本計画」は超少子高齢化問題を解決するのか|サイバーセキュリティ.com

「官民データ活用推進基本計画」は超少子高齢化問題を解決するのか



2017年5月30日、「改正個人情報保護法施行」とともに、「官民データ活用推進基本計画」が閣議決定されました。あまり知られていませんが、今回のコラムではこの内容について触れて行きたいと思います。

世界最先端IT国家宣言との関係

以前にもコラムで紹介させていただきましたが、政府は今までも「世界最先端IT国家宣言」として、社会インフラへのITの利活用を推奨してきました。今回の計画はその流れを汲むもので、正式名称は「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」と長いものになります。

法的根拠としては、2016年12月施行の「官民データ活用推進基本法」に基づきます。これにより、今年からは単なる「宣言」ではなく、法的な位置づけを持つようになったのです。

官民データ活用推進基本計画が最終的に目指すもの

この法律・計画が目指すものは、“超少子高齢化社会における問題の解決”です。
※現代は「少子高齢化」ではありません。「“超”少子高齢化」です。(計画でもこう書かれています)

既に様々な問題は耳にするでしょう。老々介護、高齢者の自動車運転、後継者不足、デジタルディバイド等々。このまま手をこまねいているわけにはいきません。

とは言え、社会構造が変わってしまう以上、今までのやり方では到底間に合いません。このような状況の中、明るい未来を描くためには、ITの力をフル活用して、効率化とイノベーションを図らなくてはならない。これには誰しもが首肯することでしょう。

求められている具体的要求とは

そこで、この計画では公的機関に次のような要求を突き付けます。

  • 手続きは原則電子化を目指せ(デジタルファースト)
  • 情報システム優先で業務の見直しを図れ(BPR)
  • 公的機関で問題の無い情報は公開しろ(オープンデータ)

その上で“官民の情報システムの連携を図れ”と言っているのです。ここでサイバーセキュリティ的には突っ込みを入れたくなる内容になりますね。

さらに、「V.事業者等との連携・協力」の項目の中では、以下の様に記載されています。

事業者についても、データのオープン化も含め、自らが保有するデータを抱え込むのではなく、分野を超えて利活用し、様々な知識や知恵を共有する。

民間にも“オープンデータ化”を求めているのです。

目指す方向性は正しいと思いますし、超少子高齢化の中で発展を続けるためには、他に方法が無いのかも知れません。しかし、利便性が高まればリスクも高まるのが世の常。

サイバーセキュリティの確保がない限り、明るい未来どころか、データを悪用されインフラが破壊される最悪の未来にも繋がりかねません。

明るい未来のために必要なもの

セキュリティ人材の不足。度々取り上げているテーマです。もちろん国もそれは理解してはいます。

ただ、本当に充当できる対策がとれているのかどうか。「官民データ活用推進基本計画」には施策集が付いており、この計画を達成するために立てられた対策が沢山記載されています。

例えば、以前にも触れた「情報処理安全確保支援士」。3年後に3万人の登録が果たしてできるのでしょうか。

<関連>情報処理安全確保支援士の創設

IT人材の確保は急務

セキュリティだけでなく“IT人材”そのものも不足しています。国はセキュリティ人材目標とは別に、8年後にはIT人材を100万人増やす目標を立てています。しかし、今の超少子高齢化時代。学生は1学年100万人程度しかおりません。

つまり、「現代のIT人材が誰一人リタイアしないと仮定して、これから社会に出る子供たちの8人に1人はIT人材になってもらう」必要があることになります。無茶でしょう。

人材確保が難航している背景

そこで「技術系人材の再教育」が出てきました。今、IT系でない技術系人材にIT人材になってもらうということ。しかし、じゃあ技術系人材が担っていた仕事は誰がやるんだ、という話になりますね。これも画餅になりそうです。

これらの施策に共通して感じられるのは、「橋渡し人材」が本当に必要なのか、という話でも触れたように、「IT人材は絶対に必要。でも自分はITのことが分からないから誰かやって」…この様な意識が見え隠れしているように思われるのです。

人材の不足はある。でも自分はやりたくない。これではいつまでも不足は解消しません。もちろん、今まで全くやったことのない人が、一人前の人材になるには難しいかも知れません。でも、半人前が二人揃えば、一人前にもなり得るでしょう?そうすれば人材不足も少しは解消するでしょう。

ITやセキュリティへの“理解”が必要

今必要なのは、皆が少しでも“ITやセキュリティを理解する”ことです。

そして、他人任せにせず、仕組みを少しでも理解して、不足人材の手を煩わさなければいけない案件を減らすこと。他人任せにしていては、ITに限らず、新しい分野が出てきたら、またそこで人材不足が発生します。キリがありません。

政府が描く明るい未来のために、絶対に必要なことは、“誰かにITやセキュリティのことを任せる”という考え方から離れ、“私たち一人ひとりが自覚してITやセキュリティのことを学ぶ姿勢”、これなのです。

最後に

超少子高齢化は様々な問題を誘引します。この状況に対抗するには、“ITを効率的に活用すること”という考えには皆が納得するでしょう。ただし、それは“他人事”であってはいけません。まずは、自分がITやセキュリティを知ることが大切です。

「官民データ活用推進基本計画」が成功するかどうか、日本の未来がどうなるかは、私たち一人ひとりの肩にかかっている。その意識が浸透したときに、日本のサイバーセキュリティも先進国となり、未来に展望が開けることでしょう。


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