2030年には、IT人材が最大79万人不足すると経済産業省が試算しています。
このような背景から、インフラエンジニアを確保したい企業は、職種未経験だろうが、文系大学の卒業生だろうが、“やる気重視で採用して、後から育てれば良い”という方針で採用活動を進めているのが現状です。
問題は、人材を採用した後。
未経験・文系大学卒・資格なしのインフラエンジニアを採用した企業は、彼らをどのように教育すれば、一流のインフラエンジニアとして独り立ちさせられるのでしょうか。
企業が未経験・文系大学卒・資格なしインフラエンジニアを採用するワケ
- 社会人5年目・前職はアパレル業界の営業
- 4年制大学を今年卒業・大学の専攻は国文学
- 社会人2年目・前職は一応エンジニアだけれど、実績も資格もない
インフラエンジニアを採用したい企業から見れば、どう見ても即戦力ではなく、教育するとしても相当な時間とコストがかかることが容易に想像できるような人材たちです。
しかし、インフラエンジニアを募集する求人案内には、応募条件は”意欲のみ”という驚きの求人が数多く並んでいます。
「インフラエンジニアに”なれるかもしれない人”でも欲しい」企業の苦しい胸の内
インフラエンジニアを確保したい各企業は、なぜ意欲があるだけの人材を採用しなくてはいけないのでしょうか?
理由は、インフラエンジニアを含むIT人材の不足という深刻な問題があるためです。
経済産業省が発表した「IT 人材需給に関する調査」によると、2030年にはIT人材が最大79万人不足するとしています。
引用IT 人材需給に関する調査/経済産業省
日本のインフラエンジニア教育における問題点
日本国内の各業種の人材開発部門長や大学の情報学部教授などで構成される、「デジタル時代の人材政策に関する検討会」では、インフラエンジニアを含むIT人材の教育について、課題や解決策を論じています。
日本におけるIT人材教育については、次のように、教育の遅延やトライ&エラーできる場所がないことなどが課題として挙げられました。
日本は大学教育が遅れている
各企業が進めているDX(デジタルトランスフォーメーション)においても、インフラエンジニアは重要な役割を担いますが、個別性が高い分野であるため、そのスキルの習得にはケースメソッドによる学習が効果的といわれています。
一方、日本国内においては、大学教育の科目としてシステムサイエンスが存在するものの、DXに関する体系的な教育の場がないのが現状です。
さらに、システムサイエンス分野の大学教育においても日本は、遅れていることが課題として挙げられています。それは、教育用にモデルケースを作れる人材や、そもそも授業を受け持てる人材が少ないことが原因です。
また、“我が国でデジタル人材育成を本格化するためには、産業界だけでなく学校教育を含めた一貫した育成体系が必要である”として、学校教育と企業での教育が連携していないことも課題として挙げられています。
“今はない仕事”を行うスキルが獲得できない
実際の業務を通じて行う教育の場がOJT(On-the-Job Training)ですが、OJTで学べるのは、社内に”今ある”部署の”今ある”仕事に対する、やり方やスキルのみです。
デジタル時代の人材政策に関する検討会においても、“OJTによるリスキリングの場が不足している。企業の垣根を超えて実践できる場づくりが必要”との意見が出ました。
社内 に”今ない“仕事、”今できる人がいない“仕事を行うためには、新たなスキルを獲得する必要があります。ただ、未知のスキルは、リスクを承知でトライ&エラーを繰り返すことでしか身につけることができません。「リスキングの場が不足している」とは、リスクありきの教育の機会が欠如していることを意味しています。
民間企業の知見やコミュニティを教育に活用できていない
経済産業省とIPAは、IT技術者のスキルレベルを評価するための基準として「ITスキル標準(ITSS)」を整備したり、各種IT系国家試験などを実施しています。
ところが、デジタル時代の人材政策に関する検討会は、“ITスキル標準や国家試験による評価は自己完結的な評価となってしまうため、民間の先進的かつ優れたコミュニティとの連携を積極的に図っていくべきではないか”と指摘しています。
また、リソースの乏しい中・小規模の企業も含めて、企業や組織の外にある実践的な知識を身に着ける場やコミュニティを、積極的に活用すべきとしています。
現在のOJTでは実践の場が乏しい
現状でもOJT教育や研修システムがあるものの、新しく学んだ理論をトライ&エラーを繰り返しながら実践できるOJTの機会は限られていると指摘されています。また、デジタル時代の人材政策に関する検討会は、実践的なOJTの機会を増やすための仕組みが必要と結論付けています。
未経験インフラエンジニアを1から育成することのメリット
インフラエンジニアを含むIT人材の育成や教育には、多くの課題が残されていますが、政府による助成金を受けられるなど、1からエンジニアを育成する利点も見逃せません。
複数の人材をまとめて研修できる
職種未経験者の新卒を採用した場合、手を尽くしてインフラエンジニア経験者を中途採用した場合よりも、教育に時間がかかります。
一方、新卒社員の場合は、全員入社時期が同じであるため、一斉に研修を開始でき、教育が効率的に行えるメリットがあります。
また、新卒社員や未経験者は、他社の企業文化に染まっていないため、会社の一員としての企業理念教育が行いやすくなるメリットもあります。
人材開発支援助成金が利用できる
厚生労働省が管轄している「人材開発支援助成金」では、労働者のキャリア形成を促進することを目的に、企業に対し、職業訓練等の実施や、教育訓練休暇制度の適用、助成金の支給などを行っています。
人材開発支援助成金には全7コースありますが、主要なコースが次の4コースです。
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 教育訓練休暇付与コース
- 特別育成訓練コース
1コースの訓練時間数が10時間以上(Off-JT)であることなどの受給要件があるものの、年々、受給要件が緩和されつつあります。例えば、有期実習型訓練実施前に行うキャリアコンサルティングは、対面で行うことと規定されていましたが、テレビ電話等での実施も認められました。
人材開発支援助成金は、企業規模を問わず、中小企業も対象とした助成金制度となっているため、大企業以外でも未経験者を1から研修して一流エンジニアにまで育成できる足がかりとなりそうです。
参照SESエンジニアとは?仕事内容や必要なスキル、企業の選び方を解説 | Fairgrit
まとめ
未経験・文系大学卒・資格なしの人材であっても、企業は“インフラエンジニアになりたいという意欲”だけで採用していることが少なくないのが現状です。
そのような人材を採用した後、一人前のインフラエンジニアに育てられるかは、教育と研修の質にかかっています。
紹介したとおり、インフラエンジニアの教育において、現在の日本で不足している点は、学んだ理論を実践できる場所と機会です。
このような現状を鑑み、例えば、「BasisPoint Academy」のような優良な研修サービスでは、企業ごとに計画したオリジナルの研修カリキュラムで実践型研修を提供し、企業が抱える課題を解決しています。
また、「BasisPoint Academy」は、各種助成金の対象講座にも指定されているため、最大で受講料が90%も安くなることも各企業から支持されている理由のひとつです。
まずは問い合わせ、過去の研修実績などを含め、幅広く情報収集することをお勧めします。