APT攻撃とは?手口や事例・対策まで解説|サイバーセキュリティ.com

APT攻撃とは?手口や事例・対策まで解説



近年、企業や組織を狙った巧妙で執拗なサイバー攻撃であるAPT攻撃が増加しています。
APT攻撃は、高度な技術を持った攻撃者が、特定の標的から機密情報や知的財産を窃取することを目的とした長期間にわたる攻撃です。
従来のサイバー攻撃とは異なり、検知や防御が難しく、被害も大きくなりがちなAPT攻撃に対し、企業はセキュリティポリシーの整備、インシデント対応体制の構築、セキュリティベンダーとの連携など、多層的な対策を講じる必要があります。
本記事では、APT攻撃の特徴や手口、そして企業が取るべき対策について詳しく解説します。

APT攻撃とは何か

APT攻撃とは、Advanced Persistent Threats(高度で持続的な脅威)の略称で、特定の組織や個人を狙った長期間にわたる巧妙なサイバー攻撃のことを指します。
従来のサイバー攻撃とは異なり、APT攻撃は高度な技術を持った攻撃者によって行われ、明確な目的を持って執拗に繰り返されるのが特徴です。

APT攻撃の定義と特徴

APT攻撃は以下のような特徴を持っています。

  1. 特定の組織や個人を標的とする
  2. 長期間にわたって執拗に行われる
  3. 高度な技術を用いて巧妙に行われる
  4. 情報窃取や機密情報の漏洩を目的とする
  5. 初期侵入後も気づかれないように潜伏し、継続的に攻撃を行う

これらの特徴から、APT攻撃は一般的なサイバー攻撃よりも検知や防御が難しく、被害も大きくなりやすいと言えます。

一般的なサイバー攻撃との違い

APT攻撃と一般的なサイバー攻撃の主な違いは以下の通りです。

APT攻撃 一般的なサイバー攻撃
目的 特定の組織や個人から情報を窃取する 不特定多数を対象に金銭的利益を得る
攻撃期間 長期間(数ヶ月~数年) 短期間
攻撃手法 高度で巧妙な手法を用いる 既知の手法を用いることが多い
検知の難易度 高い 比較的低い

このように、APT攻撃は一般的なサイバー攻撃とは異なる特性を持っているため、従来のセキュリティ対策では防ぎきれない場合があります。

APT攻撃の目的と狙われる組織

APT攻撃の主な目的は、標的とする組織や個人から機密情報や知的財産を窃取することです。
攻撃者は、長期間かけて標的のネットワークに侵入し、重要な情報を少しずつ盗み出していきます。

APT攻撃の標的となりやすい組織は以下の通りです。

  • 政府機関や軍事関連組織
  • 大手企業(特に防衛、金融、エネルギー、製造業など)
  • 研究機関や大学
  • 重要インフラ事業者

これらの組織は、国家機密や先端技術、顧客情報など、攻撃者にとって価値の高い情報を多く保有しているため、APT攻撃の標的となりやすいのです。

組織がAPT攻撃の被害に遭った場合、機密情報の漏洩による信用失墜や、業務停止による経済的損失など、深刻な影響を受ける可能性があります。そのため、APT攻撃に対する適切な対策を講じることが重要です。

APT攻撃の手口と流れ

APT攻撃は、高度な技術を持った攻撃者が、特定の組織や個人を狙って長期間にわたって執拗に行うサイバー攻撃です。その手口は巧妙で複雑ですが、一般的には以下のような流れで行われます。

情報収集とターゲットの選定

APT攻撃の第一段階は、標的とする組織や個人に関する情報を入念に収集することから始まります。攻撃者は、公開情報や関係者の情報など、あらゆる手段を駆使して標的の弱点を探ります。
収集した情報を基に、攻撃に適したターゲットを選定し、侵入方法を綿密に計画します。

初期侵入と内部ネットワークへの潜伏

ターゲットが決まると、攻撃者は様々な手法を用いて標的のネットワークに侵入を試みます。代表的な手法としては、以下のようなものがあります。

  • 標的の関係者をかたるなりすましメールによるフィッシング攻撃
  • 脆弱性を突いたウェブサイトやソフトウェアからのマルウェア感染
  • 標的組織の関係者や取引先を経由した間接的な侵入

一度ネットワークに侵入できれば、攻撃者は足がかりとなる端末にマルウェアを潜伏させ、内部ネットワークへと侵入範囲を広げていきます。この際、ネットワーク管理者の権限を奪取するなど、より高い権限を獲得することで、検知を免れながら自由に行動できるようになります。

機密情報の窃取と外部への送信

内部ネットワークに潜伏したAPT攻撃者は、標的組織内の重要な情報を探索し、少しずつ窃取していきます。窃取された情報は、外部のサーバーに暗号化された状態で送信されるため、通常のセキュリティ監視では検知が難しいのが特徴です。
攻撃者は長期間にわたって情報窃取を継続し、標的組織に気づかれないように活動を続けます。

このように、APT攻撃は高度な技術と豊富なリソースを背景に、執拗かつ巧妙に行われるサイバー攻撃です。従来型のセキュリティ対策では防御が難しいため、組織はAPT攻撃に特化した多層的な対策を講じる必要があります。

APT攻撃の検知と対策

APT攻撃は巧妙に行われるため、従来型のセキュリティ対策では検知が難しく、被害も大きくなりがちです。そのため、組織はAPT攻撃に特化した多層的な対策を講じることが重要です。ここでは、APT攻撃の兆候と検知方法、技術的・人的対策、セキュリティ監視と脅威インテリジェンスについて解説します。

APT攻撃の兆候と検知方法

APT攻撃の兆候を早期に発見するためには、以下のような点に注意が必要です。

  • ネットワーク上の不審な通信やファイルの転送
  • 通常とは異なる時間帯や場所からのアクセス
  • 権限の昇格や不正な設定変更
  • 未知のマルウェアや脆弱性を突いた攻撃の痕跡

これらの兆候を検知するためには、ネットワークやエンドポイントの可視化、ログの分析、異常検知システムの導入などが有効です。
また、セキュリティインシデントが発生した際には、フォレンジック調査を行い、攻撃の全容を明らかにすることが重要です。

技術的対策と人的対策の重要性

APT攻撃に対抗するためには、技術的対策と人的対策の両面からアプローチする必要があります。

技術的対策としては、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 脆弱性管理と最新のセキュリティパッチの適用
  • 多要素認証ゼロトラストアーキテクチャの導入
  • 重要データの暗号化と厳格なアクセス制御
  • セキュリティ監視ツールやSOCの整備

一方、人的対策としては、以下のような施策が重要です。

  • 従業員に対するセキュリティ教育と意識向上
  • フィッシングメールなどへの注意喚起
  • インシデント対応体制の整備と定期的な訓練
  • サプライチェーンのセキュリティ管理

技術と人材、両面での継続的な取り組みが、APT攻撃への効果的な対策につながります。

セキュリティ監視と継続的な脅威インテリジェンス

APT攻撃は長期間にわたって執拗に行われるため、継続的なセキュリティ監視が欠かせません。組織は、自組織のネットワークやエンドポイントを常時監視し、異常な動きをいち早く検知できる体制を整える必要があります。

加えて、外部の脅威インテリジェンスを活用することも重要です。
サイバー攻撃の手口は日々進化しているため、自組織だけでは対応が難しい場合があります。政府機関やセキュリティベンダー、業界団体などが提供する最新の脅威情報を収集し、自組織の対策に反映させることが求められます。

APT攻撃は巧妙で検知が難しい脅威ですが、適切な対策と継続的な監視、情報収集を行うことで、被害を最小限に抑えることが可能です。組織は、APT攻撃の脅威を正しく理解し、多層的なセキュリティ対策を講じる必要があるでしょう。

企業がAPT攻撃に備えるために

APT攻撃の脅威が高まる中、企業は自社の重要な情報資産を守るために、多層的なセキュリティ対策を講じる必要があります。ここでは、企業がAPT攻撃に備えるための具体的な方策について解説します。

セキュリティポリシーの整備と教育

APT攻撃への対策の第一歩は、セキュリティポリシーの整備と従業員教育です。
企業は、情報資産の取り扱いや、セキュリティインシデント発生時の対応手順などを明文化し、全従業員に周知徹底する必要があります。加えて、定期的なセキュリティ教育を実施し、従業員のセキュリティ意識を高めることが重要です。

セキュリティ教育では、以下のような内容を取り上げることが効果的です。

  • フィッシングメールの見分け方と対処法
  • 強固なパスワードの設定と管理方法
  • 未知のソフトウェアやUSBメモリの取り扱い注意点
  • 情報漏洩の防止とデータ取り扱いの注意点

全従業員がセキュリティの基本を理解し、日常業務の中で実践できるよう、継続的な教育が求められます。

インシデント対応体制の構築

APT攻撃によるセキュリティインシデントは、早期発見と迅速な対応が被害を最小限に抑えるカギとなります。そのため、企業はインシデント対応体制を整備し、定期的な訓練を行うことが重要です。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • インシデント対応チームの編成と役割分担の明確化
  • インシデント検知時の連絡体制と意思決定プロセスの確立
  • フォレンジック調査や被害分析のための技術的リソースの確保
  • 外部機関(警察、セキュリティベンダーなど)との連携体制の構築

インシデント対応体制を整えることで、APT攻撃による被害を早期に食い止め、事業への影響を最小限に抑えることが可能となります。

セキュリティベンダーとの連携

APT攻撃は高度な技術を用いて巧妙に行われるため、企業独自の対策だけでは限界があります。そこで、専門性の高いセキュリティベンダーとの連携が効果的な対策となります。

セキュリティベンダーは、最新の脅威情報や高度な分析技術を有しており、企業のセキュリティ対策を多角的にサポートします。例えば、以下のようなサービスを活用することができます。

  • 脅威インテリジェンスの提供と注意喚起
  • セキュリティ監視・ログ分析サービス
  • エンドポイントセキュリティ対策の導入支援
  • インシデント発生時の調査・分析サポート

セキュリティベンダーとの連携により、自社だけでは対応が難しい高度な脅威にも、迅速かつ的確に対処できるようになります。

APT攻撃は、企業の情報資産を脅かす重大な脅威ですが、適切な対策を講じることで、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。セキュリティポリシーの整備、インシデント対応体制の構築、セキュリティベンダーとの連携など、多面的なアプローチにより、APT攻撃に強い企業体質を築いていくことが求められます。

まとめ

APT攻撃は、特定の組織を狙った高度で執拗なサイバー攻撃であり、従来型の攻撃とは異なる特徴を持っています。
企業がAPT攻撃に備えるためには、セキュリティポリシーの整備と従業員教育、インシデント対応体制の構築、セキュリティベンダーとの連携など、多層的な対策が必要です。
最新の脅威情報を収集し、自社の対策に反映させることで、APT攻撃のリスクを最小限に抑えることができるでしょう。


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