AIや機械学習を利用したセキュリティサービスを提供しているウェブルート株式会社(東京都千代田区)はこのほど、「最も危険なマルウェア2020」を発表しました。
まず、同社が挙げたのは数十年前に登場して以来、増加傾向の「フィッシング」。2020年は新型コロナウイルス感染拡大という状況に便乗したマルウェア感染例が多く見られました。世界保健機関(WHO)「新型コロナウイルスに関するガイドライン」や「居住地周辺の新型コロナウイルスの新規感染例の最新リスト」などに見られる虚偽情報です。また、経済対策における補助金や給付金の偽申し込みフォームも多く見られました。
マルウェアで使用されるスパムメールのフィッシングルアーはほぼCOVID-19に基づいており、今後も注意が必要でしょう。
同社はランサムウェアやボットネットについても「新型コロナウイルスをきっかけに驚異が増している」と警鐘を鳴らしています。ランサムウェアは被害者のファイルを暗号化し、アクセス回復のための身代金を要求するもの。2020年にはランサムウェアグループがリークサイトを立ち上げ、被害者が支払いを拒否した際には機密データなどを晒す、オークションにかけるといったトレンドが浮上しました。
一方、ボットネットはユーザーがメールをクリックすると、その環境にウイルス感染経路を構築する仕組み。ランサムウェアと密接な繋がりがあります。特に「Emotet」は最も危険な脅威として、3年連続で活動を続けているボットネットです。ロックダウン中に、コロナ感染拡大をテーマとした新しいフィッシングキャンペーンを展開。日本国内でも大規模なばら撒き攻撃があり、被害が大きくなっています。
あなたのスマホも危険に晒されている!?
スマートフォンなどのモバイル端末は、コロナ感染拡大における便乗サイバー攻撃の格好の餌食です。コロナウイルス追跡アプリを装い、ユーザー補助機能を悪用して情報を盗むものもあります。
例えば2019年に登場した「Joker」は他のアプリを起動させ、クレジットカード情報やネットバンキングの証明書を盗もうとするシステムです。今年発見されたモバイルランサムウェア「CryCryptor」も脅威。新型コロナ追跡アプリへの偽装が確認されています。
ウェブルートのセキュリティアナリスト、タイラー・モフィット氏は「2020年は変化の年だが、サイバー犯罪者が従来と同じ手法で金銭的な“うまみ”を確保しようとしている動きは変わっていない」とし「パンデミックが原因で、オンラインユーザーにとっては気が散る要素が増えた。リモート環境における懐疑心が全体的に小さくなっており、このような脆弱性は攻撃者に機会を提供している。手遅れになる前に、人や機器、クラウドのサイバーレジリエンスを優先させることが重要」とコメントを寄せています。
スマートフォンから得る情報は、私たちにとって切り離せないものになっています。新型コロナウイルス関連の情報となると、さらに詳細を得ようとするでしょう。今一度、オンライン上でもウイルス感染が拡大していることを認識しなくてはなりません。