Vidar(ヴィダー)は、情報窃取型マルウェアの一種で、感染したシステムから機密情報や個人情報を盗むことを目的としています。主にブラウザの保存データ、クレジットカード情報、電子メールの認証情報、仮想通貨ウォレット情報など、さまざまな形式のデータを収集し、攻撃者に送信します。また、Vidarは感染したデバイスのスクリーンショットやシステム構成情報も盗むため、感染者のオンライン活動やシステム状態を包括的に把握できるマルウェアです。
Vidarは「マルウェア・アズ・ア・サービス」(MaaS)としても知られ、暗号通貨取引や機密情報を狙うサイバー犯罪者たちが多様な攻撃活動に活用しています。
Vidarの特徴
Vidarの特徴は以下の通りです:
- 多様な情報収集機能:ブラウザ内のログイン情報、保存されたパスワード、クレジットカード情報、仮想通貨ウォレットなど、幅広い情報を収集します。
- スクリーンショット機能:システム上でのユーザー操作画面を記録し、視覚的にデータを取得できるため、攻撃者が感染者の動作を正確に把握できます。
- モジュール構造:必要な情報収集モジュールを設定することで、攻撃対象に応じた特定データのみを収集するなど柔軟な操作が可能です。
- 隠密性:Vidarは、アンチウイルスやセキュリティソフトの検出を回避する機能を持ち、感染の痕跡を隠蔽する能力があります。
Vidarの感染経路
Vidarは主に以下のような経路で感染を拡大します。
- フィッシングメール:Vidarは、信頼できる企業やサービスを装ったメールに添付され、リンククリックやファイルダウンロードによって感染します。
- ドライブバイダウンロード:感染者が悪意のあるウェブサイトを訪問した際、バックグラウンドで自動的にVidarがダウンロード・実行されます。
- クラック版ソフトウェアのダウンロード:無料配布サイトで提供される不正なソフトウェアやゲームのクラック版などにVidarが組み込まれ、インストール時に感染することがあります。
Vidarの動作
Vidarは感染後、以下のような手順で情報を窃取します。
- 初期調査:システム情報やIPアドレスなど、基本的なデバイス情報を収集し、リモートサーバーに送信します。
- データ収集:ブラウザやメールクライアント、仮想通貨ウォレットなどに保存されている機密情報を収集し、ファイルとして保存します。
- スクリーンショットの取得:被害者のデバイス上の操作画面を撮影し、収集した情報とともに攻撃者に送信します。
- 情報の送信:収集された情報は、攻撃者が指定したリモートサーバーにアップロードされます。
Vidarの被害
Vidarによる主な被害は以下の通りです。
- 機密情報の流出:ブラウザの保存情報や仮想通貨ウォレット情報が流出することで、IDの盗難や不正送金被害が発生します。
- 金銭的被害:クレジットカード情報の流出により、直接的な金銭被害や、オンライン口座の不正利用が発生します。
- プライバシー侵害:スクリーンショットを通じて被害者のオンライン活動が漏洩し、プライバシーが侵害されます。
Vidar対策方法
Vidarによる被害を防ぐためには、以下の対策が有効です。
- メールフィルタリングの強化:フィッシングメールに対するフィルタリングを強化し、怪しいメールや添付ファイルをブロックします。
- セキュリティソフトの導入:アンチウイルスやアンチマルウェアソフトを使用し、リアルタイムでのスキャンを行います。
- 正規ソフトウェアの利用:正規のソフトウェアを公式サイトからダウンロードし、クラック版や不正なソフトウェアを避けるようにします。
- ブラウザセキュリティの強化:ブラウザに保存されたパスワードやクレジットカード情報を管理し、不要な情報の保存を避けます。
- 多要素認証(MFA)の設定:重要なオンラインアカウントには多要素認証を設定し、パスワードの盗難リスクを軽減します。
まとめ
Vidarは、多様な情報窃取機能を備えたマルウェアであり、感染者のブラウザ情報や仮想通貨ウォレットなど、重要な機密情報を攻撃者に送信します。特に、金融や仮想通貨関連のデータ流出や金銭的被害の原因となり得るため、日常的なフィッシング対策やセキュリティソフトの導入が重要です。Vidarの被害を防ぐためには、メールやソフトウェアの取り扱いに注意を払い、オンラインのプライバシーとセキュリティを強化することが求められます。