TAXII(Trusted Automated eXchange of Indicator Information)は、サイバー脅威情報(CTI:Cyber Threat Intelligence)を自動的に共有・配信するための通信プロトコルで、脅威インテリジェンスの標準仕様であるSTIX(Structured Threat Information eXpression)と併せて活用されます。TAXIIは、さまざまな組織やツール間で、セキュリティに関する指標(IOC:Indicators of Compromise)や攻撃者の手口、脅威の動向などの情報を迅速かつ信頼性の高い形で交換するための枠組みです。
TAXIIプロトコルを通じて、サイバー脅威情報が標準化され、セキュリティベンダー、企業、政府機関間で効率よく情報共有が行われることで、脅威に対する対応や防御策が強化され、サイバー攻撃の迅速な検出と防止が実現します。
TAXIIの仕組みと特徴
TAXIIは、CTIの標準的な転送プロトコルとして設計されており、主に以下の要素から成り立っています:
- サーバーとクライアントのアーキテクチャ
TAXIIは、情報を提供する「TAXIIサーバー」と、情報を取得する「TAXIIクライアント」のモデルで構成されており、クライアントはサーバーから脅威情報を要求し、必要なデータを取得できます。サーバー側では、アクセス制御が行われ、権限のあるユーザーだけが適切な情報にアクセスできるようになっています。 - データ形式
TAXIIは、脅威情報を伝達する手段であり、情報の内容自体はSTIX形式で表現されます。STIXは脅威インテリジェンスを標準化された形式で表現する仕様で、TAXIIはそのSTIXデータを転送するための役割を果たします。 - チャネル(Channel)とコレクション(Collection)
TAXIIでは、情報の共有方法を「チャネル」と「コレクション」という単位で管理します。チャネルはリアルタイムの情報交換を目的とし、コレクションは過去のデータや保存された情報を取り扱うための単位です。 - プル型とプッシュ型のデータ共有
TAXIIは、情報の受信側からのリクエストに応じてデータを取得する「プル型」と、情報提供者が送信する「プッシュ型」のデータ共有に対応しています。これにより、受信者のニーズに合わせた効率的な情報のやり取りが可能です。 - アクセス制御と認証
脅威情報は機密性が高いため、TAXIIサーバーには認証機能やアクセス制御機能が備わっており、情報の取り扱いが厳重に管理されています。
TAXIIの主な機能
TAXIIの主な機能には、以下のようなものがあります:
- サイバー脅威情報の自動交換
TAXIIは、組織間でのサイバー脅威情報の自動交換を支援し、セキュリティインシデントへの迅速な対応を実現します。情報はSTIX形式で標準化されているため、異なるツールやプラットフォーム間でもスムーズに共有できます。 - リアルタイムの脅威情報共有
TAXIIチャネルを使用することで、発生している攻撃や新しい脅威に関するリアルタイムの情報交換が可能になります。これにより、攻撃の検知から対策までの時間を短縮し、組織全体の防御力を向上させます。 - 過去データの保存と検索
TAXIIコレクションを通じて過去の脅威データを蓄積し、必要に応じて検索することができます。これにより、攻撃の傾向分析や脅威の予測に役立ちます。 - 高い拡張性
TAXIIは、複数の情報提供元や取得元をサポートし、アクセス権を付与することで、柔軟に利用範囲を拡張できます。また、REST APIベースの設計であるため、幅広いシステムやアプリケーションとの統合が容易です。
TAXIIの活用シーン
TAXIIは、脅威インテリジェンスの迅速な共有が必要とされるさまざまな分野で活用されています:
- 企業内でのインシデント対応
TAXIIを通じて、外部の脅威情報を組織内のSOC(Security Operation Center)やSIEM(Security Information and Event Management)に取り入れ、リアルタイムでインシデント対応に活用します。 - 政府機関やセキュリティコミュニティでの情報共有
脅威インテリジェンスを迅速に共有することで、国家間や地域全体でのサイバー攻撃の早期発見と対策が可能になります。政府機関や民間のセキュリティコミュニティが連携し、重大な脅威情報を共同で防ぐ取り組みが行われています。 - セキュリティベンダー間の情報交換
セキュリティベンダーがTAXIIを利用して新たな攻撃パターンやマルウェア情報を交換し、製品やサービスの検出能力を向上させています。
TAXIIのメリット
TAXIIを使用することによって、以下のようなメリットが得られます:
- 標準化による相互運用性の向上:STIX形式と連携することで、異なる組織間やツール間でもシームレスに情報共有が可能です。
- インシデント対応の迅速化:最新の脅威情報をリアルタイムで取得し、すぐに対応できるため、サイバー攻撃に対する検知と防御の時間を短縮できます。
- 拡張性と柔軟性:REST APIベースであるため、さまざまなセキュリティツールやプラットフォームと統合が可能であり、組織のニーズに合わせて柔軟に利用できます。
TAXIIのデメリットと課題
一方で、TAXIIには以下のような課題も存在します:
- 導入・運用の複雑さ:TAXIIを活用するには、インフラの準備や情報管理のための専門知識が必要であり、適切な運用にはトレーニングや知識の習得が求められます。
- データ量の増加と管理負荷:大量の脅威情報を共有・受信するため、データの管理が複雑化する場合があります。適切なフィルタリングやデータ整理が必要です。
- プライバシーと機密性:脅威情報には、企業のシステム情報や攻撃パターンが含まれることがあり、プライバシーや機密性を保つために厳重な管理が必要です。
TAXIIのバージョンと進化
TAXIIは、TAXII 1.0、1.1、そして現在の主流であるTAXII 2.0以降のバージョンがあり、バージョンごとに機能や利便性が向上しています。特にTAXII 2.0以降はRESTful APIの採用により、導入や運用が簡単になり、さまざまな環境での採用が進んでいます。
まとめ
TAXII(Trusted Automated eXchange of Indicator Information)は、サイバー脅威情報を効率的かつ信頼性の高い方法で交換するためのプロトコルであり、セキュリティ業界における標準仕様の一つです。STIXと併せて利用されることで、脅威インテリジェンスの自動化と標準化が進み、インシデント対応やサイバー攻撃への防御力が向上します。TAXIIは、政府機関、セキュリティベンダー、企業などで広く利用され、迅速なインシデント対応と脅威の早期発見に貢献しています。ただし、データ管理やセキュリティの複雑さには注意が必要であり、適切な運用が求められます。