ssdeep は、デジタルフォレンジックスやセキュリティ分野で用いられる、ファジーハッシュ(fuzzy hashing) と呼ばれる技術を用いたツールで、データの類似性を検出するために設計されています。通常のハッシュ関数(MD5やSHA-1など)は、ファイルの一部がわずかに変化するとハッシュ値が大きく変わる性質を持っていますが、ssdeepはファジーハッシュを生成することにより、似ているファイルや部分的に一致するファイルを検出することが可能です。
ssdeepは、セキュリティ研究者、マルウェアアナリスト、デジタルフォレンジックスの専門家などが、マルウェアの亜種を見つけたり、変更されたファイルを検出したりするために活用されています。
ssdeepの特徴
1. 部分的な変更に耐性がある
ssdeepは、ファイル全体が完全に一致しない場合でも、部分的な一致を検出することができます。これにより、類似のファイルや、元のファイルを一部変更した亜種を見つけることができます。この機能は、例えば、マルウェアがアップデートされたり、亜種が作成された場合に、それらの関係を把握するのに役立ちます。
2. ファジーハッシュの生成と比較
ssdeepは、各ファイルのファジーハッシュを生成し、そのハッシュ値を他のファイルと比較することができます。生成されたハッシュ値は通常のハッシュ関数と異なり、部分的な一致を評価するためのスコアを提供します。比較結果には類似度のスコアが表示され、このスコアが高いほどファイルが類似しているとみなされます。
3. テキストベースのハッシュ
ssdeepの出力結果はテキストベースのファジーハッシュであり、特定の長さの文字列で表現されます。このファジーハッシュを利用してファイルの類似性を評価することができます。
ssdeepの用途
- マルウェア解析: マルウェアの亜種を特定したり、異なるバージョンのマルウェアの類似性を調査する際に使用されます。
- デジタルフォレンジックス: 捜査の過程で、改ざんされたファイルや変更されたデータを検出するために利用されます。
- データ重複の検出: ファイルの重複や類似データの検出にも使用されます。
- 脅威インテリジェンス: マルウェアや脅威に関する情報を共有する際に、ファジーハッシュを用いて関連性を示すことができます。
例:ssdeepの使い方
ssdeepの基本的な使用方法は以下の通りです。
- ファイルのハッシュを生成する:
ssdeep -b samplefile.txt
これにより、ファイル
samplefile.txt
のファジーハッシュが生成されます。 - ファイル間の比較:
ssdeep -k samplefile1.txt samplefile2.txt
これにより、
samplefile1.txt
とsamplefile2.txt
の間の類似性がスコアとして表示されます。
ssdeepの制限
- 大きな違いには弱い: ssdeepは、ファイルが大きく変更された場合には、その違いを検出しにくくなる場合があります。つまり、細かい変更や類似性を検出するのには向いていますが、大規模な変化に対する感度は低い場合があります。
- 速度とスケーラビリティの問題: 非常に大規模なデータセットに対して処理を行う場合、比較には時間がかかることがあります。
- バイナリデータの扱い: テキストデータと比べて、バイナリデータでの有効性は異なる場合があります。
まとめ
ssdeepは、ファジーハッシュを用いてファイルの類似性を評価するための強力なツールであり、特にマルウェアの解析やデジタルフォレンジックスで重要な役割を果たしています。従来のハッシュ関数とは異なり、部分的な一致を検出できるため、変化したファイルや亜種を見つける際に有用です。しかし、完全な変更には対応しにくいという制限もあるため、適切な場面で活用することが求められます。