「デジタルエンゲル係数」でセキュリティ動向を紐解く。浮き彫りになった中小製造業の日米格差|サイバーセキュリティ.com

「デジタルエンゲル係数」でセキュリティ動向を紐解く。浮き彫りになった中小製造業の日米格差



高品質でセキュアなリモートアクセスツールを提供しているスプラッシュトップ株式会社(東京都千代田区:水野良昭代表取締役)と、ひとり情シスの育成支援などを展開する一般社団法人ひとり情シス協会は3月16日、日米「デジタルエンゲル係数」比較調査の共同記者発表をオンラインで開催しました。

同協会は2022年10月から2023年2月にかけて、従業員20から200人までの製造業を営む中堅中小企業を対象にIT運用コストの調査を実施。アメリカ企業153社、日本企業453社から集計したデータを元とし、販売管理費に占めるIT運用コストの割合を表す「デジタルエンゲル係数」を独自算出しています。イベント当日は、デジタルエンゲル係数を比較して見えたインターネットセキュリティに対する考え方の違いや、日米格差についての考察が発表されました。

日本はアメリカの3分の1

調査結果を見ると、日本企業一人当たりの年間デジタル投資は平均で93,710円。売上高14億円企業の販売管理費などを15.9%とし、その中からIT運用コストを抽出するとデジタルエンゲル係数は4.3%となります。一方、アメリカ企業は一人当たり年間で521,360円を投資。デジタルエンゲル係数は12.7%となり、日本はアメリカの3分の1ほどという結果になりました。

同協会の清水博氏はこの結果を受けて「デジタルエンゲル係数が4.3%では、価格上昇が続くIT機器やサブスクリプションなどの購入が難しくなる。また、日本企業におけるセキュリティ費は一人当たり2,650円。アメリカは日本の9.3倍となっており、セキュリティ事故が増加傾向にある日本の中堅中小企業はグローバル基準の要件を満たせず、無防備に近い状態ではないか」と警鐘を鳴らします。

その他、大きな差が見られたのは「外部サポートの活用」で日本とアメリカでは22倍もの差がありました。アメリカはITリソースやコンサルトの外部活用が一般化されおり、日本中小企業の多くは内製で対応していることが要因と言えそうです。「情シス人件費」は9.7倍差。日本中小企業にIT担当者が少なく、報酬の評価も低いという事実が浮き彫りになっています。

エモテット検出4万超、投資ゼロ35.2%

近年、日本で猛威を奮っているマルウェアがエモテットです。トレンドマイクロ「2022年第1四半期におけるEmotet検出台数(地域別)」によると、北米1,381件、ヨーロッパ・中東・アフリカ2,912件、アジア太平洋4,920件に対し、日本は42,529件と突出しています。

日米中小企業のセキュリティ投資を比較すると、アメリカはトータルITコストの10%から20%をセキュリティ対策に投資していることが分かります。しかし、日本は「必要性を感じていない」といった意見が多く、投資ゼロは35.2%にも上りました。

清水氏は「エモテットは特に製造業が狙われている。アメリカは四半期単位に社内でセキュリティトレーニングを開催し受講していない社員のアカウントはロックするなど、強制的な教育体制をしいている。日本の中小企業は、まずITセキュリティにかかるコストを販売管理費として捉えることが重要」と訴えました。

コストが制限される中でのリモートアクセス

一方、スプラッシュトップ株式会社はこのほど「企業・団体の無料リモートアクセスツールに関する実態調査」を実施。「現在所属する企業・団体は、今までテレワークのリモートアクセスに無料ツールを使用したことがありますか?」という質問に対し、57.7%が「使用したことがある」と回答しています。

新型コロナウイルス感染拡大を機にリモートワークをスタンダードとする企業も増えており、同調査によると無料ツール使用経験企業・団体のうち85%が現在も使用しているとのこと。しかし、無料ツールのセキュリティ面に対し「非常に不安」と回答したのは12.4%、「不安」と回答したのは41.9%となり、半数以上が不安を抱えているという結果になりました。

同社チャネルセールスマネージャーの中村夏希氏は「中小企業のほとんどが現在も無料のリモートアクセスツールを使用しているが、セキュリティ対策コストが制限されているため不安を抱えているのでは」と語ります。

近年、サイバー攻撃の対象となっている日本の製造業。今回の各調査で明らかになった課題を一つひとつ解決していくことが求められるでしょう。


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