「パスワードを全部同じにしているのは危ない」「でもパスワードを全部覚えられない」——こんな悩みを解決するのがパスワードマネージャーです。LastPassはそのなかで世界最大規模のユーザーを持つツールですが、2022年に大規模なデータ漏洩事件を起こしたことで注目を集めました。
LastPass(ラストパス)とは、複数のオンラインアカウントで使用するパスワードを安全に保存・管理するクラウドベースのパスワードマネージャーです。ゼロ知識アーキテクチャを採用し、保存データはユーザー側で暗号化されるためLastPassの運営会社自体もパスワードを見ることができません。
本記事では、LastPassの機能・使い方・料金プラン・2022年データ漏洩事件の内容と対策・他のパスワードマネージャーとの比較・FAQまで徹底解説します。
LastPassとは?

LastPass(ラストパス)とは、複数のWebサービス・アプリのパスワードを一元管理するクラウドベースのパスワードマネージャーです。「Last Password(最後に覚えるべきパスワード)」が名前の由来で、マスターパスワード1つだけ覚えれば、他のすべてのパスワードをLastPassが管理します。
LastPassの基本的な仕組み:ゼロ知識アーキテクチャ
LastPassは「ゼロ知識アーキテクチャ(Zero-Knowledge Architecture)」を採用しています。
- ローカル暗号化:パスワードデータはユーザーの端末上でAES-256ビット暗号化されてからクラウドに送信される
- LastPassも見られない:クラウドに保存されるのは暗号化済みのデータのみで、LastPassの従業員もパスワードの中身を見ることができない
- マスターパスワードが鍵:データを復号化できるのはユーザーが設定したマスターパスワードだけ
LastPassの主な機能
パスワードの保存と自動入力
ブラウザ拡張機能またはモバイルアプリをインストールすると、ログインページで保存済みのIDとパスワードを自動入力します。新しいアカウントを作成した際も、ログイン情報を自動で保存するか確認が表示されます。Chrome・Firefox・Safari・Edgeなど主要ブラウザに対応しています。
パスワードジェネレーター
安全で複雑なパスワードを自動生成します。文字数・大文字・小文字・数字・記号の組み合わせをカスタマイズして生成できます。「このサービスに複雑なパスワードを設定したいが思いつかない」という場面で活用できます。
セキュリティダッシュボード(パスワード監査)
保存しているパスワードの強度・重複使用・古いパスワード・情報漏洩に関わるリスクを分析してスコアで表示します。弱いパスワードや使い回しパスワードを一覧で確認し、更新を促します。
二要素認証(2FA)対応
マスターパスワードに加えて、認証アプリ(Google Authenticator・Duo等)・SMS・指紋認証・顔認証などの二要素認証を設定できます。マスターパスワードが漏洩しても2FAが有効であれば不正ログインを防げます。
安全な共有機能
パスワードを他のLastPassユーザーと安全に共有できます。「共有先のユーザーがパスワードの中身を見えないように設定して共有する」機能もあり、家族やビジネスチームでの運用に活用できます。
パスワード以外の情報も保存可能
クレジットカード情報・銀行口座情報・住所・安全なメモ・ソフトウェアライセンスキーなど、パスワード以外の機密情報も暗号化して保存できます。
LastPassの利用方法
- アカウントを作成する:LastPass公式サイト(lastpass.com)またはアプリからメールアドレスとマスターパスワードを設定して登録
- ブラウザ拡張機能またはアプリをインストールする:使用するブラウザ(Chrome・Firefox等)の拡張機能ストアからLastPassを追加する
- 既存パスワードをインポートする:ChromeやFirefoxなど既存ブラウザに保存しているパスワード、または他のパスワードマネージャーからCSVでインポート可能
- 自動入力を使い始める:ログインページを開くとLastPassアイコンが表示され、クリックするだけでIDとパスワードが自動入力される
- セキュリティダッシュボードで改善する:既存パスワードの強度を確認し、弱いパスワードや使い回しパスワードを順次変更する
マスターパスワードはLastPassが保存する全情報の鍵です。以下を守ってください。
- 12文字以上で大文字・小文字・数字・記号を混ぜた複雑なパスワードにする
- 他のサービスで使っているパスワードを使い回さない
- 忘れても自力で回復できないため、安全な場所に記録しておく
- 必ず二要素認証を有効にする
LastPassの料金プラン
以下は2026年7月時点の目安です。料金や機能は変更される可能性があるため、導入前に公式サイトで最新情報を確認してください。
| プラン | 料金(目安) | 主な機能 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 無料(Free) | 無料 | 基本的なパスワード管理・1種類のデバイスのみ(スマホ or PC) | スマホだけor PCだけで使う個人 |
| プレミアム(Premium) | 年間約$36(約5,000円) | 無制限デバイス同期・2FA拡張・緊急アクセス・1GBストレージ | 複数デバイスで使う個人 |
| ファミリー(Families) | 年間約$48(約6,500円) | 最大6人・個別ダッシュボード・家族間共有フォルダ | 家族での共有利用 |
| チーム(Teams) | 1ユーザー月額約$4 | 最大50名・パスワード共有・管理者コンソール | 小規模チーム |
| ビジネス(Business) | 1ユーザー月額約$7 | 無制限ユーザー・SSO・ADとの統合・高度なレポート | 中〜大規模企業 |
2021年3月の仕様変更により、LastPassの無料プランは「スマートフォン(モバイル)」か「PC(コンピュータ)」のどちらか1種類のデバイスでしか使用できなくなりました。複数のデバイスで使いたい場合はプレミアムプランへのアップグレードが必要です。
LastPassに関連する被害・注意事例
事例:パスワード使い回しによるリスト型攻撃
パスワードマネージャーを使わず、複数サービスで同じパスワードを使い回していると、1つのサービスから漏えいしたID・パスワードが別サービスへの不正ログインに悪用される可能性があります。サイバーセキュリティ.comのパスワードリスト攻撃の記事でも、IDとパスワードの使い回しにより不正ログイン被害につながる危険性が説明されています。
LastPassのようなパスワードマネージャーを使えば、サービスごとに異なる複雑なパスワードを生成・保存できます。これにより、1つのサービスで認証情報が漏えいしても、他サービスへの被害拡大を防ぎやすくなります。ただし、マスターパスワードが弱いと保管庫全体のリスクになるため、長く推測されにくいマスターパスワードと二要素認証を必ず組み合わせることが重要です。
LastPassの2022年データ漏洩事件
LastPassを検討する上で知っておくべき重大な出来事があります。2022年に発生した大規模なデータ漏洩事件です。

事件の経緯
- 2022年8月:LastPassの開発環境にハッカーが侵入。ソースコードや技術情報が盗まれたと発表(この時点でユーザーデータへの影響はないとされた)
- 2022年11月〜12月:追加調査の結果、8月の侵入を踏み台として、暗号化済みのパスワード保管庫(ボルト)データを含むユーザーデータが盗み出されていたことが判明
- 漏洩した情報:平文のWebサイトURL、暗号化されたユーザー名・パスワード・セキュアメモ・フォーム入力データ、メールアドレス、請求先情報、電話番号など
LastPassの主張と現在の安全性評価
LastPassは「パスワードデータ自体はAES-256ビットで暗号化されており、マスターパスワードなしには復号化できない」と説明しています。ただし以下の懸念が指摘されています。
- URLは当時平文で含まれていた:2022年事件では、保存していたWebサイトURLが平文で含まれていたと公表されました。これにより、どのサービスを利用しているかを推測され、標的型フィッシングに悪用されるリスクが指摘されました。
- 弱いマスターパスワードのリスク:マスターパスワードが単純な場合、ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)で解読される可能性がある
- 古い暗号化設定の問題:古いアカウントでは、現在推奨されているより弱い暗号化設定(イテレーション回数が少ない)が使われていたことが判明
LastPass漏洩後にすべき対策
- マスターパスワードを変更する:特に2022年以前から使用しているユーザーは変更を強く推奨
- 影響を受けた可能性があるサービスのパスワードを変更する:特に重要度の高い金融・メール・SNSのパスワードを変更する
- 二要素認証を確認・強化する:2FAが未設定なら今すぐ設定する
- フィッシング詐欺に警戒する:URLが漏洩しているため、「LastPassをかたる偽メール」などに注意する
LastPassと他のパスワードマネージャーの比較
| 項目 | LastPass | 1Password | Bitwarden | Dashlane |
|---|---|---|---|---|
| 無料プラン | あり(デバイス1種類) | なし(30日試用のみ) | あり(無制限デバイス) | あり(制限あり) |
| 有料プラン(個人) | 年約$36 | 年約$36 | 年約$10 | 年約$33 |
| オープンソース | × | × | ✅(コードが公開) | × |
| セルフホスト | × | × | ✅(自前サーバー可) | × |
| 2022年データ漏洩 | あり(大規模) | なし | なし | なし |
| 日本語対応 | あり | あり | あり | あり |
| UIの使いやすさ | シンプル・直感的 | 洗練されたデザイン | 機能的・やや玄人向け | 機能豊富・やや複雑 |
どのパスワードマネージャーを選べばいい?
- コスト重視・無料で始めたい:Bitwarden(無料で制限なし・オープンソースで透明性が高い)
- UI・使いやすさ重視:1Password(デザイン・機能バランスが最高水準)
- セキュリティ最優先・自前管理したい:Bitwarden(セルフホスト可能)
- すでにLastPassを使っている:マスターパスワードを強化・2FAを設定した上で引き続き使用可能
LastPassのメリットとデメリット
メリット
- 世界最大規模のユーザー基盤:利用者が多く、情報・サポートが豊富
- マルチプラットフォーム対応:Windows・macOS・Linux・iOS・Android、主要ブラウザすべて対応
- 使いやすいUI:シンプルで直感的なインターフェースで初心者でも導入しやすい
- 無料プランあり:1種類のデバイスなら無料で使用可能
- パスワード以外も管理できる:クレジットカード・安全なメモ・住所も保存可能
デメリット
- 2022年の大規模データ漏洩:競合他社と比べてセキュリティ実績に傷がある
- 無料プランの制限(2021年〜):1種類のデバイスのみという制限があり、使い勝手が大幅に低下
- クローズドソース:ソースコードが非公開のため、外部からの検証が難しい
- クラウド依存:サービス障害・サービス終了時にアクセスできなくなるリスク
- マスターパスワードを忘れると復旧不可:ゼロ知識のためLastPass側では復旧できない
よくある質問(FAQ)
Q. LastPassは2022年の漏洩後も使えますか?
利用は可能ですが、過去の漏洩事件を理解した上で慎重に運用する必要があります。特に、2022年以前からLastPassを使っている場合は、マスターパスワードを強力なものに変更し、二要素認証を有効化し、重要なアカウントのパスワードを順次変更することをおすすめします。不安が大きい場合は、1PasswordやBitwardenなど他のパスワードマネージャーへの移行も選択肢になります。
Q. LastPassは本当に安全ですか?
ゼロ知識アーキテクチャとAES-256暗号化という設計は堅牢です。ただし2022年の大規模漏洩により「設計は安全でも運用・インフラのセキュリティに問題があった」ことが判明しました。マスターパスワードを十分に複雑にし、二要素認証を有効にすることで安全性を高められます。
Q. LastPassの無料プランでできることは?
2021年3月以降、無料プランはスマートフォン(モバイル)またはPC(コンピュータ)のどちらか1種類のデバイスでしか使えません。基本的なパスワードの保存・自動入力・パスワードジェネレーターは無料で使えます。複数のデバイスで同期したい場合はプレミアムプラン(年間約$36)が必要です。
Q. LastPassのマスターパスワードを忘れたらどうなりますか?
LastPassはゼロ知識設計のため、LastPass社側ではマスターパスワードを知ることができず、パスワードの復旧はできません。事前に「ヒント」を設定しておくか、信頼できる緊急連絡先(Emergency Access)を設定しておくことで対応できます。重要なパスワードは別途安全な場所にバックアップしておくことを推奨します。
Q. LastPassからBitwardenへの乗り換えは簡単ですか?
比較的簡単です。LastPassの「設定」→「高度な設定」→「エクスポート」からパスワードをCSV形式でエクスポートし、Bitwardenの「インポート」から取り込むだけです。ただしエクスポートしたCSVファイルにはパスワードが平文で記載されるため、取り込み後はすぐに削除してください。
まとめ
LastPassはゼロ知識アーキテクチャとAES-256暗号化を採用したクラウドベースのパスワードマネージャーです。マスターパスワード1つで複数サービスのパスワードを管理・自動入力でき、パスワードジェネレーター・セキュリティダッシュボード・二要素認証・共有機能を備えています。
一方で2022年の大規模データ漏洩事件により、ユーザーの暗号化済みパスワードデータが盗まれる事態が発生しました。パスワードデータは暗号化されていますが、マスターパスワードが弱い場合はリスクがあります。現在LastPassを使用している場合は、マスターパスワードを強力なものに変更し、二要素認証を有効にすることが最優先です。
料金はプレミアムプランが年間約$36で、無料プランは1種類のデバイスのみ対応です。セキュリティとコストのバランスを重視するなら、オープンソースでセルフホストも可能なBitwarden、UIと機能の完成度を重視するなら1Passwordも有力な選択肢です。

























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LastPassは「非常に頑丈な金庫」のようなものです。自宅・職場・車・倉庫のすべての合鍵(パスワード)をこの金庫の中に入れます。金庫を開けるには「マスターパスワード」という1本の鍵だけが必要です。金庫の中身は暗号化されているため、LastPassの会社でさえ中を見ることができません。