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BlueNoroff

BlueNoroff は、北朝鮮に関連するサイバー犯罪グループ「Lazarus Group(ラザルスグループ)」の一派とされ、特に金融機関や暗号資産(仮想通貨)取引所を標的としたサイバー攻撃で知られています。BlueNoroffは、巧妙なフィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリングを通じて標的組織に侵入し、金銭的利益を得ることを目的としています。また、暗号資産関連のスタートアップ企業やフィンテック企業も狙われる傾向があり、彼らの攻撃は被害企業に大きな経済的損失をもたらします。

BlueNoroffは、マルウェアの使用やゼロデイ脆弱性の悪用など、非常に高度な攻撃手法を駆使し、対象に侵入してから情報収集を行い、資金を奪取するまで、複数の段階を踏んで攻撃を行うため、国際的にも警戒される存在です。

BlueNoroffの特徴

BlueNoroffは、以下のような特徴を持つサイバー犯罪グループです。

1. 金融関連の標的を狙う

BlueNoroffの主要な標的は、銀行、暗号資産取引所、フィンテック企業など、金銭的な利益が期待できる組織です。これらの組織から資金を直接盗むか、従業員の認証情報を窃取し、内部システムに侵入することで金銭的利益を得ることを目的としています。

2. フィッシング詐欺とソーシャルエンジニアリング

BlueNoroffは、標的の組織や従業員に対してフィッシングメールや偽のドキュメントを送りつけ、マルウェアをインストールさせる手法を用います。特に、採用活動や取引先とのやり取りに見せかけた内容で、ターゲットの注意を逸らし、悪意あるリンクや添付ファイルを開かせることが多いです。

3. マルウェアとバックドアの使用

BlueNoroffは、リモートアクセスツール(RAT)やバックドア型のマルウェアを活用し、感染後にシステムを遠隔操作できる状態を作り出します。これにより、攻撃者はネットワーク内で自由に動き回り、機密情報や認証情報を収集します。特に、金融取引や暗号資産ウォレットに関するデータを集中的に狙います。

4. 多段階攻撃と持続的な活動

BlueNoroffは、初期侵入から情報収集、そして最終的な資金奪取まで、複数の段階を経て攻撃を行います。各段階では、ネットワーク内での権限昇格、横展開を行い、最終的に標的の資産や情報にアクセスできるようにしてから、金銭的な攻撃に移行します。また、感染したシステムで長期間潜伏し、機会をうかがいながら攻撃を進める「持続的標的型攻撃(APT)」も特徴です。

5. 仮想通貨ウォレットや金融取引システムへの攻撃

BlueNoroffは、特に暗号資産ウォレットや金融取引システムを標的にするため、ウォレット管理ツールや取引システムの脆弱性を突くケースが増えています。攻撃が成功すると、標的の資産を攻撃者が指定したウォレットに転送するなど、直接的な金銭的損失が発生します。

BlueNoroffの攻撃手法

BlueNoroffによる攻撃は、以下のような手法で実行されます。

  1. フィッシングメールでの初期侵入
    BlueNoroffは、特定の業務に関連するフィッシングメールを標的に送り、リンクをクリックさせたり、添付ファイルを開かせたりして、マルウェアをインストールさせます。これには、採用通知や契約書に見せかけた偽のドキュメントが使用されることが多いです。
  2. マルウェアの展開とバックドアの作成
    初期感染が成功すると、BlueNoroffは標的のシステムにリモートアクセス型マルウェアを展開し、バックドアを作成します。このバックドアを通じて攻撃者がネットワークにアクセスし、システムの操作やデータ収集を行います。
  3. 権限昇格と横展開
    BlueNoroffは、管理者権限を取得してネットワーク内を横展開し、他のデバイスやサーバーへのアクセスを試みます。これにより、ネットワーク内でさらに多くの情報を収集できるようになります。
  4. 金融取引データやウォレット情報の収集
    権限昇格に成功すると、BlueNoroffは金融取引データや暗号資産ウォレット情報の収集を行います。ここで、認証情報やトランザクションデータなど、資金を移動するために必要な情報を盗み出します。
  5. 資金の不正送金とウォレット操作
    必要な情報が収集されると、BlueNoroffは標的の金融資産を自身のウォレットに送金するなど、直接的な金銭的損害を与える行為に移ります。また、従業員のアカウントや取引プラットフォームを通じて偽の取引を行うなど、痕跡を残さないように注意を払って攻撃を進行させます。

BlueNoroffによる被害とリスク

BlueNoroffによる攻撃が成功すると、以下のような被害やリスクが発生する可能性があります。

  1. 多額の金銭的損失
    銀行や取引所が攻撃された場合、攻撃者は直接的に金銭を盗み出すため、企業や顧客は多額の金銭的損害を被ります。特に暗号資産は匿名性が高く、取引の追跡が困難なため、資金の回収が難しいです。
  2. 顧客データや取引情報の漏洩
    攻撃者が金融機関のネットワークに侵入すると、顧客の取引データや個人情報が流出する可能性があります。これにより、顧客からの信頼が損なわれるだけでなく、法的な問題にも発展することがあります。
  3. 企業の信頼性とブランド価値の低下
    金融機関がBlueNoroffによる攻撃で被害を受けると、顧客や取引先からの信頼が大きく損なわれます。これにより、顧客離れが加速し、企業のブランド価値も低下するリスクが高まります。
  4. サイバー保険への影響
    金融機関が被害を受けると、サイバー保険の保険料が上昇し、将来的な契約条件にも影響が出る可能性があります。また、損害賠償をサイバー保険でまかなう場合、保険会社との交渉も必要です。

BlueNoroffへの対策

BlueNoroffのような高度な攻撃グループに対抗するためには、以下の対策が有効です。

  1. フィッシング対策の強化と従業員教育
    フィッシングメールや不審なリンクに対するセキュリティ教育を従業員に実施し、不審なメールに警戒する意識を高めることが重要です。また、メールフィルタリングツールを導入して、悪意あるメールをブロックすることも有効です。
  2. 多要素認証の導入
    銀行や暗号資産取引プラットフォームにおいては、従業員と顧客のアカウントに多要素認証(MFA)を導入することで、不正アクセスを防ぎます。
  3. エンドポイントセキュリティの強化
    EDR(Endpoint Detection and Response)やアンチウイルスソフトを利用して、マルウェアの検出と削除を強化します。特に、リモートアクセスツールやバックドアの早期検出が可能なセキュリティソリューションを導入することが推奨されます。
  4. 定期的なシステム監査と権限管理
    ネットワーク内の権限管理を定期的に監査し、不必要な管理者権限の削除やアクセス制限を行います。これにより、権限エスカレーションのリスクを軽減できます。
  5. システムのログ管理と監視
    システムのログを継続的に監視し、異常な動きが発見された場合に即座に対応できる体制を整えます。これにより、早期の段階で攻撃の兆候を把握し、迅速な対応が可能になります。

まとめ

BlueNoroffは、金融機関や暗号資産関連企業を標的としたサイバー犯罪グループで、巧妙なフィッシング攻撃やマルウェアを駆使して、標的の資産を直接盗み出すことを目的としています。特に、フィンテック企業やスタートアップ企業が狙われやすく、被害を受けると多額の金銭的損害とともに、企業の信頼性やブランド価値が失われるリスクがあります。

BlueNoroffの攻撃から守るためには、フィッシング対策の強化、多要素認証、エンドポイントのセキュリティ強化、定期的なシステム監査など、多層的なセキュリティ対策が不可欠です。


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